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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
[加湿]ストリーマ空気清浄機 特許:第3775421号ほか 商標登録:第5407659号ほか 意匠登録:第1458669号ほか
権利者:ダイキン工業株式会社 

試行錯誤の末に誕生した
ストリーマ空気清浄機は、
構造からデザインまで
さまざまな知的財産権で
守られています。

平成22年、空調事業において売上高世界一に輝いたダイキン工業。 この好調な業績をエアコンとともにリードしているのが、空気中のニオイや有害物質を分解・除去する空気清浄機です。 今、この空気清浄機に使われている「ストリーマ技術」が各種メディアを中心に注目を集めていると聞き、大阪市内にあるダイキン工業の本社をお訪ねしました。

※富士経済「グローバル家電市場総調査2013~2014」調べ(2010~2012年、家庭用・業務用空調の売上高)

ストリーマ空気清浄機の開発背景

“ストリーマ技術”実用化の影に3年の苦労があった

取材担当者
先日、家電量販店を訪ねたところ、ダイキン工業の「ストリーマ空気清浄機」が展示されていました。 私は花粉症に悩まされていることもあり、とても気になったのですが、特長をお聞かせいただけますか。
ダイキン工業
私どもの空気清浄機は「ダブル方式」といって、大きく2つの技術を搭載しています。 ひとつがプラズマ放電によってイオンを放出し、空気中のカビ菌やアレルギー物質などを分解する“アクティブプラズマイオン技術”。 もうひとつが有害物質を吸い込んでフィルターで捕えた後、その有害物質を酸化分解する“ストリーマ技術”です。
取材担当者
製品名にもなっているストリーマは、御社独自の技術としてマスコミなどで注目されていますね。
ダイキン工業
ありがとうございます。“ストリーマ技術”には、プラズマ放電の一種であるストリーマ放電を用いています。 例えば花粉などは固い殻で覆われているため、まず表面を第1次分解した後、殻の中の有害タンパク質の芯まで分解しないと人体に影響が出ます。 この第2次分解まで進むのは、私どもの“ストリーマ技術”だけです。

取材担当者
パンフレットを見ると、花粉をはじめ、カビ、ダニ、インフルエンザウイルス、PM2.5なども分解・除去できると書かれていますが、 もともとこの“ストリーマ技術”を開発するきっかけは何だったのでしょうか。
ダイキン工業
今から15年程前になりますが、国内でシックハウス症候群が大きな社会問題となりました。 これは建材、家具などから発生するホルムアルデヒドやVOCが原因なのですが、 空気清浄機でこれらの有害物質を吸い込むとフィルターがすぐに汚れてしまうのですね。 特に夏場は温度が上昇することで、溜め込んだ有害物質を再放出してしまう場合があります。
取材担当者
せっかくの空気清浄機が、ホルムアルデヒドの発生源になってしまうのですね。

ダイキン工業
そうなのです。それでフィルターに付いた有害物質を分解するために光触媒を用いていたのですが、 もっと分解力のあるものがないかということになり、日頃からお世話になっている大分大学を訪ねました。 そこで教授からご紹介を受けたのが、ストリーマ放電だったわけです。
取材担当者
ストリーマ放電というのは、確か学説名として耳にしたことがあります。
ダイキン工業
よくご存知ですね。実はストリーマ放電そのものは、静電気に関する古い教科書にも掲載されているものです。 それがなぜ製品技術として実用化されなかったかというと、ストリーマ放電を安定的に発生させることができなかったからなのです。
取材担当者
その日から開発の苦労のはじまり、というわけですね。
ダイキン工業
はい(笑)。研究を続けていくうちにストリーマ放電を安定発生させる条件を見つけ出すことができたのですが、そこで最初の課題にぶつかりました。 放電の際に50dBを超える騒音が発生するのです。 ちょうどエアコンの室外機の前にいるほどの煩さで、これでは使えないと社内のいろんな人から言われました。
取材担当者
そんなに大きな音が発生したのですね。
ダイキン工業
かなり煩かったですね。音の周波数を調整することでようやく騒音を解決したと安心したら、次は耐久性の問題が起きました。 ストリーマ放電では、電極の先端に電子が高速で叩き込まれるのですけど、これによって電極の先端がすぐにすり減ってしまって…。 すると、電極の間隔が変わり、ストリーマ放電を安定して発生できなくなってしまうのです。
取材担当者
電極の先端に硬度の高いものを用いるとコストがかかってしまいますし、どのように対応されたのですか。
ダイキン工業
放電したい方向に対して垂直に向けていた電極を、発想の転換で横向きにしてみたのです。 こうすることで電極がすり減っても間隔を維持でき、 さらに電荷を下向きに誘導するスタビライザを設けることでストリーマ放電を安定発生できることに気付きました。 結局、開発に取り組んでから製品化まで、3年の歳月がかかりました。
知的財産への取り組み

特許事務所の弁理士さんも、“社内チームの一員”

取材担当者
「ストリーマ空気清浄機」に関しては、数々の知的財産権を取得されているとお聞きしています。
ダイキン工業
はい。まず電極についての特許権としては、ストリーマ放電を発生させる「放電装置」やフィルタ等も含めた「空気清浄ユニット」などに関して取得しています。 先ほどストリーマ放電を安定発生させるためにスタビライザを設けたと言いましたが、そちらも私どもの特許技術です。
取材担当者
製品構造については、どのような特許技術がありますか。

ダイキン工業
製品構造については、ストリーマ放電により生み出した活性種をいかに効果的にフィルターに供給するのかという点も含めた「空気処理装置」、 さらに「加湿機」の部分も特許権を得ています。 現在、ほとんどの空気清浄機は加湿機能を備えているのですが、 その加湿水と加湿フィルターに対してもストリーマ放電で除菌を行うというところが、私どもの特許技術です。 ほかにも、いろいろと細やかに特許権を取得しています。
取材担当者
商標権についてもお聞かせいただけますか。
ダイキン工業
「ストリーマ」「STREAMER」「ストリーマ空清」「光速ストリーマ」などについて、商標権を取得しています。 それとストリーマ放電をデザイン化したマークを作成していますが、このマークも商標登録を行っています。 これまではマークだけ、文字だけというように使われていたこともあったのですが、 現在ではマークと英語の「STREAMER」という名称をセットにして展開するようにし、ブランドの浸透を図っているところです。

取材担当者
御社の空気清浄機はフォルムに丸みを持たせたタイプがあるなど、デザイン的にも洗練されていますね。
ダイキン工業
お部屋で使う空気清浄機はインテリアの一部でもありますから、デザイン性も重要です。 広いリビングでの使用を想定したタイプと、寝室・子ども部屋を想定したコンパクトタイプではデザインを変えています。 これらのデザインについては、意匠権を取得しています。
取材担当者
色もホワイトだけではないのですね。
ダイキン工業
“白物家電”と呼ばれる分野ですからホワイトが定番なのですが、高級感を演出するためにブラウン系をご用意したほか、 コンパクトタイプではブルー系、ピンク系も揃えるなど色にもかなりこだわっています。

取材担当者
知的財産の出願は、御社の知財センターで行われているのですか。
ダイキン工業
国内の商標と意匠の出願手続きは、すべて私どもです。 特許につきましては、特許事務所の弁理士さんにお世話になっております。 その際、単に弁理士さんに手続きを依頼するというのではなく、私ども知財部員と同じようにひとつの技術に対して向き合っていただき、 どのようなかたちで特許の出願を行っていけばいいのかという戦略を一緒に考えていただいています。
取材担当者
外部の弁理士も、いわば“社内チームの一員”なんですね。
ダイキン工業
はい。そのように日頃から深く関わっていただいております。
弁理士に対する今後の期待

海外での知財戦略について、広くアドバイスがほしい

取材担当者
知的財産の権利化にあたり、どのようなところに苦労をされましたか。
ダイキン工業
昔から静電気の教科書にも載っているストリーマ放電と、ダイキン工業が出願する“ストリーマ技術”との違いが、 文書を読んだだけではわかりにくいという点を特許庁の審査官から指摘されました。
取材担当者
どのように対処されたのですか。
ダイキン工業
その時は審査官との面接を要請し、弁理士さんと一緒に特許庁へ赴きました。 審査官に対し、弁理士さんが資料を元に一つひとつ説明をしてくださると、すんなりと理解していただけまして、 おかげで特許権を取得することができました。

取材担当者
今後、弁理士にはどのようなことを期待されますか。
ダイキン工業
空気清浄機に関して、海外展開を進めています。 現状では中国、ヨーロッパとアメリカを中心に特許権・商標権・意匠権を取得していますが、 今後どの国に対してどのように知的財産権を取得していくのかが大きな課題です。
取材担当者
中国などは模倣品も懸念されますよね。
ダイキン工業
はい。模倣対策として、中国での意匠出願も積極的に行っていますが、中国では意匠に関しては無審査ですから、どこまで権利が有効かという問題もあります。 新興国にも空気清浄機の市場が広がって行くと見ていますが、知的財産権制度の整備が十分でない国も多くあります。 そこで弁理士さんには、海外での知的財産権について、権利行使まで見据えて情報を収集していただき、 アドバイスをいただけたらと思っています。
取材担当者
わかりました。海外での知的財産権についても、弁理士ならではの視点から御社に合ったコンサルティングができると思います。今後ともよろしくお願いいたします。

(注記)「ストリーマ」、「STREAMER」、「ストリーマ空清」、「光速ストリーマ」、「アクティブプラズマイオン」及び「 」はダイキン工業株式会社の登録商標です。





ダイキン工業株式会社
大正13年、合資会社 大阪金属工業所として創業。 昭和9年 大阪金属工業株式会社に改組・設立し、昭和38年から現社名に。日本で初めてエアコンを開発して以来、 長年培ってきた技術によって世界中のあらゆる空調ニーズに対応。 また、空調分野だけでなく、フッ素化学においても世界屈指のシェアを誇っています。


2014年6月2日掲載