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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
城 崎 温 泉® (地域団体商標)  商標登録:第5037791号 権利者:城崎温泉旅館協同組合

地域一体で育てた
「城崎温泉」ブランドを、
こ れ か ら も
守り続けるために
商標登録しました。

大溪川と柳並木、石造りの太鼓橋を中心に、多数の旅館・土産物屋・飲食店が軒を連ねる城崎温泉。 情緒あふれる町並みと品格あるブランドイメージは、地域が力を合わせて守り続けてきた賜物です。 そんな「城崎温泉」が、平成18年、地域団体商標に登録されました。 今回は登録を推進した城崎温泉旅館共同組合理事長・田中秀樹様に、その経緯と登録後の効果などについてお話を伺いました。

城崎温泉旅館共同組合理事長 田中秀樹様

城崎温泉の特長

「外湯めぐり」を通じて、温泉街全体でお客様をおもてなし

取材担当者
はじめに城崎温泉の特色を教えていただけますか?
田中理事長
城崎は他の温泉地と異なり「外湯」を中心に発展して参りました。 当地を訪れたお客様は旅館で浴衣に着替えた後、温泉街へ出て、趣向の異なる7つの湯を思い思いに巡ります。 またその合間に風情ある街並みを散策し、お食事やお土産選びを楽しみ、遊戯に興じられます。 温泉街全体でお客様をおもてなしする、それが最大の特色です。
取材担当者
昔から外湯が主体だったのですか?
田中理事長
はい。当温泉街は元来小さな旅館が集まっており、他所様のように大きな内風呂を持てない処も多かったのです。 そこで旅館は宿泊施設に徹し、温泉は外湯、食事やお土産は専門店、という具合に分散させた「外湯めぐり」というスタイルをとることで、 お客様に喜んでいただきつつ、温泉街の各施設もきちんと収益をあげられるようなかたちを作り上げていったのです。
取材担当者
なるほど、一歩間違えば不利になりかねない条件を魅力に変えたわけですね。 優れた逆転の発想が城崎温泉の発展の秘密なのだということが分かりました。
商標登録の理由と経緯

市町村合併を契機に「ブランド」への危機感が浮上

取材担当者
平成18年に「城崎温泉」を地域団体商標に登録されました。その理由はなんだったのでしょうか。
田中理事長
平成17年、当温泉街のある旧城崎町は、豊岡市ほか4町と合併しました。 その前年、合併協議の中で、市の名称を「城崎市にする」という案が持ち上がったのです。 実現すれば、4,300人ほどの住民で守ってきた「城崎」のイメージが、一挙に1市5町に及ぶことになります。 そうなれば新市内に作られた当温泉地と関わりのない新興の温泉施設が「城崎温泉」を名乗るでしょう。 最終的に、市名は城崎市ではなく豊岡市に落ち着きましたが、このときに生まれた危機感から、城崎温泉ブランドを守らなければ、という機運が高まりました。
取材担当者
なるほど。城崎温泉ブランドへの危機感がきっかけとなり、地域団体商標登録へつながったのですね。 ところで地域団体商標のことはどこでお知りになったのでしょうか。

田中理事長
城崎温泉ブランドを守るためにどうすればいいか、我々だけではなく、観光協会さんや商工会さんなども交えてオール城崎で話し合いを重ねました。 商標登録にも話は及びましたが、何ぶんにも我々は商標について不慣れです。そこで関係団体を通じて弁理士さんをご紹介いただきました。 地域団体商標という制度を知ったのも、弁理士さんへの相談の中でだったと記憶しています。
取材担当者
地域団体商標は、地域ブランド育成支援を目的に平成18年4月から施行された新しい制度で、 これまで登録が難しかった地域名と商品名を組み合わせた商標をスピーディーに登録できることが特長です。 この新制度を早速活用されたわけですね。
田中理事長
そうですね。商標化については「城崎温泉」のほかに「外湯巡り」なども挙りましたが、関係者や弁理士さんと話を詰める中で、 「城崎温泉」を地域団体商標として登録するのが一番よいだろう、という結論になりました。

取材担当者
登録に関して苦労はありましたか?例えば地域団体商標の審査では、 周知性(商品やサービスが需要者に認識されているか)を証明する必要がありますが、そのあたりはどうだったのでしょう。
田中理事長
幸いにも城崎温泉には先人が積み重ねてきたブランド力と知名度があり、周知性を証明する資料には事欠きませんでした。 苦労と言えば大量の資料をコピーする手間くらいでしょうか(笑)申請手続きは弁理士さんにすべてお任せしましたし、 トラブルもなくスムーズに進み、準備から登録まで一年以内で完了できました。

●地域団体商標登録
地域団体商標とは地名と商品(サービス)名とを組み合わせた商標のこと。 従来は商標登録が難しかったが地域ブランドの育成に資することを目的に、より早い段階で登録を受けられるよう商標法の改正が行われ、 平成18年4月1日から地域団体商標登録制度としてスタートしました。

商標登録の効果

ブランドを守る「予防線」として、見えない効果を発揮

取材担当者
地域団体商標登録したことで、どんな効果がありましたか。
田中理事長
目に見える効果ではありませんが、当地と関わりがなく、イメージもそぐわない他のエリアの施設に「城崎温泉」を使わせない、 使っても法的に排除出来る、という予防線としての意義は大きいと思っています。また外から当温泉街に参入する企業さんに対し、 城崎温泉ブランドのイメージを守っていただくことにも役立ちました。
取材担当者
もう少し詳しく教えていただけますか?

田中理事長
城崎温泉は共存共栄をモットーに、各施設や地域住民が城崎全体の発展を願い、助け合いながら営業しています。 近年、外部の企業さんが当温泉地で温泉施設を営業したいと打診してくるケースが増えていますが、当地で営業をされる以上、 ブランド維持のためにも、共存共栄のモットーと、城崎温泉にふさわしいイメージやルールを守っていただかなければなりません。 それが無理なら「城崎温泉」を冠して営業はできませんよ、ということを、明確に主張可能になったということですね。
取材担当者
今実際に外部から参入した施設はあるのですか?
田中理事長
ございます。東京の企業さんが経営する温泉施設ですが、交渉の際、私たちで作成した「城崎ルール」を先方にお渡しし、 参入の条件とさせていただきました。我々の間には温泉や旅館業を営む中で自然に出来上がった暗黙のルールがあるのですが、 この機会に初めて文書化したのです。東京の企業さんは快く承諾してくださり、今もこのルールに則って営業してくださっています。 また我々や地域の方々も、明文化によって改めて城崎ブランドとは何か、ということを再認識できたと思います。

取材担当者
なるほど。これも地域団体商標登録によるブランド意識向上の現れといえるかもしれませんね。今後商標を積極的に活用しようというプランはありますか?
田中理事長
商標登録に合わせて城崎全体でロゴマークを作ったのですが、このロゴをもう少し普及させたいですね。 商標については、登録してから現在まで、特に大きなトラブルもなかったので、 潜在的にブランドを守ってくれているという効果はあると思いますが、積極的な活用となると…。
取材担当者
城崎温泉さんの場合はもともとブランドへの意識が高く、 確固たるブランドイメージを構築されていますから“いかにブランドを守るか”という点に商標登録の意義があるのですね。 観光協会さんや商工会さんなどとも密に連携されているということですので、今後はブランドPRの話し合いの中で、商標の積極的な活用も俎上に挙げてはいかがでしょうか。 商標活用のアドバイスに関しても、我々弁理士はお役に立てると思います。ぜひ弁理士の活用も、ご検討ください。 本日は貴重なお話、ありがとうございました。

●城崎温泉
1400年の歴史を誇る関西屈指の名湯。古くは志賀直哉や有島武郎らが訪れた文豪の湯として、今日では古き良き情緒を残す温泉地として名を馳せています。

城崎ならではの外湯めぐり、ゆかたの貸し出し、ご当地キャラクター(城崎泉隊温泉ジャー)など独自の施策を地域一体で展開。毎年多くの観光客で賑わいます。


2013年4月26日掲載