HOME > 事例紹介 > タイガー魔法瓶株式会社  会社ロゴマーク・MJX-A482・JPG-S100
ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
会社ロゴマーク 商標登録:第0389283
MJX-A482(和柄ボトル) 商標登録:6131459他 意匠登録:1594039他 特許登録:出願中
JPG-S100(土鍋圧力IH炊飯ジャー) 商標登録:6164944他 特許登録:出願中
権利者:タイガー魔法瓶株式会社 

「世界中に幸せな団らんを広める。」というビジョンを掲げ
成熟商品が会社の柱であるからこそ
世に出そうとしている商品に
新しい部分があれば、必ず
複数の知的財産に絡めて
多面的に保護しています。

トラのマークでおなじみのタイガー魔法瓶。1923(大正12)年の創業以来、魔法瓶やIH炊飯ジャーを始め、数多くの家庭用電化製品の製造・販売を行なってきた同社では、世に出す商品に「新しい部分」があれば、必ず何らかの知財で保護する方針をとっている。最新の商品を具体例にあげながら、知財に対する考えなどをお話いただきました。

創業者が考案したロゴマーク

時代に合わせて変化してきたトラのロゴマーク

取材担当者
早速ですが、貴社ではロゴマークを商標登録されていると伺いました。まずは、有名なトラのロゴマークについてお聞かせください。
タイガー
当社のロゴマークは現在のもので6代目になります。初代のロゴは創業者、菊池武範によって、社名とともに考案されました。(当初の社名は菊池製作所)
タイガー本社に展示されている
第1号商品「携帯用水筒」
取材担当者
初代のロゴは現在のロゴと比べると、トラが随分リアルで、力強い表情をしていますね。
タイガー
これにはもちろん狙いがありました。1923年に当社の第1号商品「携帯用水筒」が発売されたのですが、当時、魔法瓶は高価だったため輸出に重点を置いていました。
取材担当者
主に、どの辺りの地域に輸出されていたのですか。
タイガー
菊池武範が目をつけたのは、水事情のよくない東南アジアです。そのため、ロゴマークには東南アジアで神格化されているトラを採用したのです。また、当時の魔法瓶は割れやすい素材のガラス製で脆いイメージを持たれていたことから、「強さ」をアピールするためにもトラは最適だったようです。
取材担当者
それで社名もロゴもタイガーになったわけですね。ロゴマークの商標は、創業時から登録されていたのでしょうか。
タイガー
登録されていました。その後も改定を重ね、現在のロゴマークに至っています。
取材担当者
まだ知的財産に関する知識や意識が、今ほど高くない時代だったと思いますが、当時から知財意識を持たれていたのですね。
タイガー
模倣する会社はあまりなかったようですが、それでも商標登録によってブランドを保護するという意識は持っていたようです。
取材担当者
その頃は、どなたが知財関係を担当されていたのでしょうか。
タイガー
菊池武範です。創業当初は、とにかく人手が足りなかったので、創業者自身がなんでもやっていたと聞いています。特に広報的な業務にはこだわっていたそうで、2代目ロゴマークの制作時には、トラのヒゲの本数や角度まで画家さんに注文したそうです。
取材担当者
それは相当なこだわりですね。そのトラのロゴマークですが、1961年につくられた3代目以降は、タッチが変わりイラスト調になりましたね。
2代目のロゴマーク

タイガー
この頃になると、広告の中心が次第にテレビCMに移行していき、リアルなトラはあまりフィットしなくなっていきました。そのため、もっと簡略化して認識性を高め、宣伝効果を高める狙いがありました。
取材担当者
1983年に発表された5代目のロゴマークのトラは、現在の我々にもなじみのあるデザインですね。
タイガー
1983年は創立60周年ということで、CI(コーポレート・アイデンティティ)を確立することになり、ロゴマークも一新しました。その結果、非常に可愛らしいトラになり、創業者がこだわっていたヒゲが1本もなくなりました(笑)。
取材担当者
その辺、タイガーさん的に問題はなかったのでしょうか。
タイガー
この頃には、当社製品のコアターゲットが主婦を中心とした女性であることが明確になっており、その層に受け入れられるには、可愛らしいデザインの方が効果が高いというマーケティング結果も出ていましたので、反対などはありませんでした。そして、その5代目のロゴから赤い部分を取りのぞいたマークが6代目になります。実は、5代目の時期から、赤い部分があるロゴはPR用に、無いものは製品用にと、併用していましたが、やはり2種類ロゴがあると紛らわしいということで統一され、2014年に現在のロゴマークになりました。

和柄ボトル(MJX-A482)の知的財産について

手探りで始めた「絵柄」の意匠登録

取材担当者
では、具体的な商品の知的財産について、お聞きしたいと思います。まずは、和柄ボトルの開発経緯から教えてください。
タイガー
スタートは5年ほど前からです。当時すでにカラフルなステンレスボトルが出回っていて、この先さらに需要が増えると予測したことが始まりです。
取材担当者
オフィスやコーヒーショップなどで、マイボトルを持った人を見かけるようになった頃かもしれませんね。

タイガー
そうした傾向を受け、ボトルはどんどんパーソナルなアイテムになり、いわばファッションのように好みで選ばれ始めると考えました。そして、ちょうどその頃、ボトルの曲面にも凹凸が再現できる技術があることを知り、立体感のある見た目と、手触りも楽しめる新しいデザインに挑戦することになりました。
取材担当者
機能性の次の段階として、特殊なデザインでの差別化を図ったわけですね。その中で、なぜ和柄にされたのでしょうか。
タイガー
曲面に凹凸を施す加工は、通常のカラーボトルより工程が増えるためコストがかかり、当然価格も上がります。そこでターゲットを富裕層の方々、具体的には中国など海外からの訪日客に絞ったのです。
取材担当者
5年前はインバウンド景気で盛り上がっていた頃で、「爆買い」という言葉も広がっていた時期ですね。
タイガー
そういった方々に、お土産品や贈答品として買っていただくには、やはり日本古来のデザインが受け入れられると考えました。当時、鉄瓶などの日本の伝統工芸品が、海外で人気だったことも判断材料になりました。

取材担当者
発売後の反響はいかがですか。
タイガー
発売直後から予想以上にご購入いただいております。
取材担当者
売れ行きが良いのは日本人と外国の方、どちらでしょうか。
タイガー
やはり外国の方です。免税店や訪日客に人気の家電量販店などでよく売れています。日本人向けには百貨店などで販売しています。
取材担当者
では、知財について教えてください。まず商標として、文字商標を登録されていますね。
タイガー
2017年12月に発売した、第1弾の3種類のデザイン名「KIMONO」「KIRIKO」「TATAMI」を登録しました。それぞれ、漢字一文字の下にローマ字を記載する二段表記です。ただ、登録は最初の3つのみで、第2弾(2018年)の3種類と、第3弾(2019年)の5種類の新デザインは商標登録していません。
取材担当者
それはなぜでしょうか。
タイガー
和柄ボトルは限定1万本の限定生産商品なので、世に出回っている分しかありません。ですので、模倣対策として商標登録をしても実質的にはほぼ1年間でその役割を終えることになります。また、新デザインを出すたびに商標登録することは、費用対効果的に難しいと判断し、2年目以降はデザイン名の商標化を避けました。
取材担当者
意匠登録は全種類されていますね。
タイガー
意匠としては第1弾(2017年)と第2弾(2018年)に出した6つのデザインすべて権利化しています。第3弾(2019年)の最新デザインは出願中です。

取材担当者
意匠登録までの経緯やご苦労について教えてください。
タイガー
これまで当社では形状の意匠登録はありましたが、絵柄での登録経験がありませんでした。ですから、このデザインで出願できるのかできないのか、そもそも、する必要があるのかないのか、そこから手探りで始めました。
取材担当者
話し合いはどういった体制で行われていましたか。
タイガー
主に、デザインチームと知財チームが連携して進めました。その結果、絵柄の細部まで権利化すると、例えば花の絵柄なら、花びらの大きさや枚数まで決める必要が出てくるため、そこは妥協して絵柄全体を権利化する方向に決めました。
取材担当者
その際、弁理士には相談されましたか。
  
タイガー
もちろんです。会議にご参加いただき、絵柄のどこまで保護するべきかなど、細かい部分までアドバイスしていただきました。
取材担当者
権利化したことで、どんなメリットがありましたか。
タイガー
模倣の抑止として一定の効果を発揮していると思います。実際、今のところ模倣品の報告はありません。また、特許はまだ登録前ですが、曲面への特殊な加工方法も権利化することで、さらに商品の保護を強化していきたいと考えています。

土鍋圧力IH炊飯ジャー(JPG-S100)の知的財産について

少量のご飯を美味しく炊くための炊飯ジャー

取材担当者
では、炊飯ジャーの知財についてお聞きしたいと思います。
タイガー
こちらの土鍋圧力IH炊飯ジャーが、現在弊社のフラッグシップモデルで、登録済みの商標と出願中の特許、商標があります。
取材担当者
まずは、商標についてお聞かせください。

タイガー
このモデルは通常5.5合炊きですが、釜の中に「中ぶた」を入れ、炊飯する空間を変えることで、1合という少量でもおいしく炊けるモードを搭載しています。その機能に「一合料亭炊き」と名付け、文字商標として登録しました。また、泡でお米を包む当社独自の炊き方にも「土鍋ご泡火(ほうび)炊き」と名付け、同じく文字商標として登録しています。
取材担当者
「一合料亭炊き」も「土鍋ご泡火炊き」も、特徴がわかりやすいネーミングですね。それらは、どのように決められたのでしょうか。
タイガー
まず商品企画チームからいくつか候補があがり、知財チームとともに打ち合わせを重ねて決定しました。最初の会議では「香り炊き」という名称があがっていましたが、それでは少し抽象的過ぎるという意見があり、最終的に投票で「一合料亭炊き」に決まりました。
取材担当者
決定の際、気をつけられていたことはありますか。
タイガー
これは「土鍋ご泡火炊き」を決める時も同様でしたが、競合他社にも近い機能を持つ商品があり、それぞれ特徴がわかりやすく名称化されています。ですから、そこは意識的に避けました。商標的に問題がなくても、イメージ的に似ていると真似をしているように捉えられてしまいますから。
取材担当者
では、特許はどの辺りを保護しているのでしょうか。
タイガー
まだ出願中ですが、中ぶたを含む構造部分や一合にちょうど良い火力の調節機能などを権利化したいと考えています。
取材担当者
「一合料亭炊き」は、どんな背景から誕生した機能なのでしょうか。
タイガー
近年は、核家族や高齢のご家庭が増えてきたことで、少量のご飯を美味しく食べられる炊飯ジャーが求められつつあります。そして、当社の理念は「世界中に幸せな団らんを広める。」です。そこで、普段は一合のご飯を美味しく炊くことができ、大勢が集まった時には、中ぶたを使用しないで5.5合をしっかり炊ける機種を開発しようとなり、本機が誕生しました。

知的財産に対する考え

すべての商品を複数の知財で保護

取材担当者
ここまでロゴマーク、和柄ボトル、炊飯ジャーの知財に関してお聞きしてきましたが、貴社の知的財産に関する基本的なスタンスを教えてください。
タイガー
まず当社では、新しく世に出す商品に従来と変わった点がある場合は、必ず特徴づけをして、何らかの知財権で保護しています。大きくは特許、意匠、商標の3つの可能性を探りながら、それらをミックスさせ、どこかで網がかかるようにしています。
取材担当者
ということは、コンスタントに知財権の出願をされているのでしょうか。
タイガー
それが理想なのですが、当社が扱う製品の多くが成熟製品であることなどから、ここ数年、出願数が減少傾向です。
取材担当者
では、今後は知財権を増やして行きたい考えでしょうか。
タイガー
もちろんです。有効な知財に絞って出願を集中させ、コスト効果を含め全体的な出願を減らしていこうという今の流れがありますが、一つの権利が幅広い効果を持つ業界ではないので、細かい知財を一つひとつ拾っていくことに意味があると考えています。
取材担当者
すべての商品で知財を登録していくとなると、知財担当の方は大変ですね。貴社内では、どのような体制で知財を見つけ出し、出願されているのでしょうか。
タイガー
設計や開発、商品企画などの部署には、「特許推進委員」という役割を設けており、各部署1〜2名、合計で10数名の社員が委員に選ばれています。各委員から商品が持つ知財のタネを提出してもらい、知財チームが一緒に検討するという仕組みです。また逆に、そこで話し合った内容を委員によって各部署にフィードバックしてもらうことで、他の社員への知財に対する意識づけも図っています。
取材担当者
各部署における知財担当であるとともに、知財チームとの橋渡し的な役割を担っているわけですね。
タイガー
そうしたやり取りを通して、日常的に知財に関する情報や意識を確認し合ったり、アップデートしたりしています。また、年に数回は、推進委員全員と知財チームでミーティングを開き、全体の意識統一も図っています。
取材担当者
特許推進委員には、どんな方が選ばれるのでしょうか。
タイガー
ある程度の知財知識がある社員に担当してもらっているので、必然的に一定以上の社歴と経験のある社員になりますね。
取材担当者
推進委員の方々に対して、知財チームの皆さんから指導やアドバイスなどをされることはあるのでしょうか。
タイガー
着眼点を大切にしようということは、よく話しています。例えば、ある商品の一部が斜めに傾いてた時、単なるデザインなのか、機能に関わってくるのか。それを見極め、特許につなげる意識を持ってもらうよう伝えています。意外と設計者自身、気づいていないケースがありますから、そこを乗り越える発想を持ってほしいと思っています。
取材担当者
社内に奨励制度などは設けられていますか。
タイガー
出願時やライセンスを取得した際などに、報奨金が出されます。また、昇進にも、個々の知財活動が反映されています。
取材担当者
では最後に、弁理士に期待されていることを教えてください。
タイガー
第4次産業革命といわれ始めて5年ほどが経ちますが、当社でも各製品の「IoT化」など、最新技術を積極的に取り込んでいきたいと考えています。その際、当然必要になってくるのが新しい考え方にリンクした知財知識です。そうした最先端の知識と会社の財産となる知財権の利活用を、弁理士の先生方と一緒にアップデートしていけたらと考えております。

タイガー魔法瓶株式会社
1923(大正12)年の創業以来、「世界中に幸せな団らんを広める。」というビジョンのもと、真空断熱保温技術を用いた魔法瓶や土鍋IH圧力炊飯ジャーなど、数々の「温もりのある製品」を開発・販売し、食卓における「新たな常識」をつくりつづけている。海外の営業・生産拠点は中国、台湾、香港、ベトナム、インド、アメリカに展開中で、独創性と信頼性を兼ね備えた商品を日本のみならず、世界中に届けている。


2020年3月17日掲載