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平成21年1月29日判決 知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10176号
- 審決取消請求事件 -

審判番号
:不服2003-14784号
発明の名称
:ゲーム情報供給装置
結論
:審決を取り消す。
関連条文
:29条2項
進歩性判断の分類
:A(引用発明の認定誤り)


1.本件発明
[本件発明の請求項1]
コンピュータを用いたゲーム情報供給装置であって、
クイズ形式の広告情報を記憶する記憶手段と、
ネットワークを介して端末装置からのアクセスを受信すると、前記記憶手段からクイズ形式の広告情報を読み出して前記端末装置に送信し表示させる表示手段と、
前記端末装置から前記広告情報を含むクイズの回答情報をネットワークを介して受信する受信手段と、
前記回答情報を受信すると、電子データであるゲーム的メリットをネットワークを介して前記端末装置に送信する送信手段とを有し、
前記ゲーム的メリットは、エサ、アイテム、ポイント、キャラクター、サウンド又はストーリーを含むゲーム情報供給装置。

[本件特許明細書の図面]
【図36】





2.審決
審判では、本件発明は、国際公開第99/60501号パンフレットおよび周知技術に基づいて進歩性がないとして拒絶された。
[引用刊行物の図10]




電子チップ発光ゲームサーバ装置1003は、ゲーム、クイズ、アンケート等のフォームデータをユーザクライアント装置1011へ送る。
ユーザが回答を行うと、サーバ側において電子チップの記録内容(チップ発行数、チップ残高等)が更新される。
電子チップ消費サーバ装置1006は、電子チップの記録内容を一定期間毎に取得する。
(電子チップを消費する際、)電子チップ情報(チップ残高、交換レート等)が埋め込まれたHTMLデータが電子チップ消費サーバ装置1006からユーザクライアント装置1011へ送られる。

(1)
相違点
審決では、端末(クライアント)側に送信される情報が、ゲーム的メリットであるか、電子チップであるかと言う点で相違していると判断している。
『電子データであるメリットが,本願発明においては,エサ,アイテム,ポイント,キャラクター,サウンド又はストーリーを含むゲーム的メリットであり,ゲーム内で利用できるものであるのに対して,引用発明では,ゲームに利用できるものの,具体的内容が不明であり,ゲーム内で利用できるものであるか否か不明な点。』
(2)
相違点に関する判断
相違点に関して、審決では、国際公開第01/046794号パンフレットおよび特開2000-37559号公報を周知例として、ネットワークを介して取得されたメリット(ゲーム関連データ)をゲーム内で使用することは周知であるとして、相違点に対して進歩性を認めていない。
『端末装置の操作者が,インターネット等のネットワークを介して,ゲームに勝ったり,商品を買ったり,ゲームデータ配信装置又は広告にアクセスすると,ポイント,エンハンスメントまたはゲーム関連データを入手でき,入手して蓄積されたポイント,エンハンスメントまたはゲーム関連データは,インターネット等のネットワーク方式を介して,ゲーム内で使用することは周知な技術にすぎない(以下,「周知技術」という。)。』


3.主張
(1)
原告の主張
引用発明では、電子チップの管理をサーバ上で行っており、電子チップをクライアント装置101に送信していない。
(2)
被告の反論
ユーザには電子チップ情報(チップ残高,有効期限,交換レート等)が供給され、電子チップ数の演算がクライアント装置で行われるので、実質的には、クライアント装置に対して電子チップを送信して供給している。


4.裁判所の判断
判決では、引用発明では電子チップの情報自体は送信されない、と認定し、審決は引用発明の認定を誤ったと判断している。 『(カ) 以上によれば,引用発明において電子チップが発行された場合には,前記(ア)の請求項1に「前記ユーザに,そのユーザが保有する電子チップに関する情報を,電子チップ情報として供給し」と記載されているように,ユーザの端末装置に対して送信されるのは,チップ残高,有効期限,交換レート等の電子チップに関する情報であって,電子データである電子チップそれ自体はユーザの端末装置に送信されることはないものと認められ,引用例にはこれに反する記載はもちろん,電子チップそれ自体が送信されることを示唆する記載は存在しない。
『しかしながら,上記ア及びイに認定説示したところによれば,本願発明は,ゲーム的メリットをネットワークを介して端末装置に送信するものであるのに対し,引用発明は,電子チップを端末装置に送信するものではないから,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通するかについても争いのあるところであるが,仮にこれが認められるとしても,引用発明が「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有するとした審決の認定は誤りというべきである。

また、判決は、被告の主張に関しては、「機能が同じでも、具体的な構成が異なるので、両者の構成を同一視することはできない。」として否定している。

『しかしながら,引用発明において,ユーザがクライアント装置を使用してその保有する電子チップに関する情報を確認できたり,電子チップを使用できたりしたとしても,そのような機能を実現するための具体的構成は複数存在するのであって,引用発明と本願発明とでは同じ機能を実現するための具体的な構成が異なるのであるから,単に実現される機能が同一であるという理由から,両者の具体的な構成を同一視することはできないというべきである。

判決では、上記認定の誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるとして、審決を取り消した。

『(ウ) 以上のとおり,審決は,引用発明を誤認したため,本願発明と引用発明との一致点についての認定を誤り,その結果,相違点を看過したものであるから,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。』


5.コメント他

判決で認定された「電子チップ自体」と「電子チップ情報」との違いは、電子チップの量を表現する形式(「送信したチップ数」で伝えるのか、「チップ残高」で伝えるのか)の差にすぎないと思われる。この程度の違いは、設計事項と判断されても良いのではないかと考える。
仮に、引用例には「電子チップ自体を送信すること」が記載されていないとしても、周知例として挙げられた文献にはゲーム的メリット自体を送信することが記載されている。判決では、引用発明の誤認が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるとして周知例について検討されていないが、引用例と周知例との組み合わせた場合の進歩性の有無については検討すべきでないか。
なお、本件出願については、再度の拒絶審決(17条の2、29条)があり、再度係争中。


(執筆者 小沢 昌弘 )


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