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平成19年1月30日 大阪地裁 平成17年(ワ)第10324号
- 著作権侵害差止等請求事件 -

事件名
:著作権侵害差止等請求事件
キーワード
:侵害の停止又は予防に必要な措置
関連条文
:著作権法22条、38条1項、112条2項
主文
:1 被告は、和歌山市所在の「A」において、別添楽曲リスト記載の音楽著作物を、「ピアノリクエスト・ピアノ弾き語り・ピアノBGM」における演奏、入場料を徴収する「ライブ」における演奏について、次の方法により営業のため使用してはならない。
(1) 楽器奏者によるピアノ、ウッドベース、ドラムセット、パーカッション、ギター、ベース等の楽器演奏をさせる方法
(2) 歌手をして歌唱させる方法
2 被告は、前項の「A」から、ピアノを撤去せよ。
3 被告は、第1項の「A」に「ピアノリクエスト・ピアノ弾き語り・ピアノBGM」における演奏、入場料を徴収する「ライブ」における演奏においては、ピアノその他の楽器類を搬入してはならない。
  (以下略)


1.事案の概要
本件は、被告がその経営する店舗において歌手・楽器演奏者及び客をして歌唱と楽器演奏により原告が著作権を管理する音楽著作物の演奏をさせ不特定多数の客 に聴かせているとして、原告が被告に対し著作権(演奏権)侵害を理由として、演奏の差止め、演奏に利用される楽器及び音響装置の本件店舗からの撤去と搬入 禁止並びに不法行為に基づく損害賠償請求等を求めた事案である。
なお、本件では本訴に先立ち仮処分決定がなされたものの、本案判決によって解決するまで本件店舗において管理著作物の演奏をしないとの意思が客観的に担保される措置が講じられているとの理由で保全抗告審で取り消されたという経緯がある。


2.争点及び判決の要旨
(1)争点
多岐にわたるが本稿では2点のみ取り上げる。
[1] 被告は本件店舗で演奏される管理著作物の利用主体か。
[2] 差止めの必要性(主文第2項及び第3項関係)
(2)判決要旨
[1] (ア)ピアノ演奏は、被告が企画し、本件店舗で食事をする客に聴かせることを目的としており、「音楽を楽しめる レストラン」としての雰囲気作りの一環として行なわれているから、ピアノ演奏の主体は被告というべきである。鑑賞料を徴収していないとしてもピアノ演奏を 利用して利益を上げていることには変わりはない。(イ)本件店舗が主催するライブ演奏も同様である。(ウ)演奏者等が主催するライブについては、被告がラ イブ主催者に対して原告からの管理著作物の利用許諾を得たか否かを確認もせずに本件店舗で原告からの管理著作物の利用許諾を得ないままライブを行うことを 黙認して著作権侵害行為をする場を提供することは、いわば、ライブ主催者による著作権侵害行為を利用して自らの営業上の利益を得ることを図るものであるか ら、著作権法の規律の観点からは、ライブ主催者である演奏者等と共同して管理著作物の著作権を侵害する行為に該当するというべきである。(エ)貸切営業に おける演奏については、そもそも演奏するか否かについて招待客等の自由に委ねられているものであり、貸切営業における招待客や参加者が行う演奏行為は、被 告によって管理されていると認めることはできず、管理著作物の利用主体は本件店舗の経営者たる被告であると認めることはできない。
[2] (2項について)ピアノは、本来、管理著作物以外の楽曲の演奏の用にも供し得るものではあるが、現実の使用態様 が主として管理著作物の無断演奏に供されるもので、その状態が今後も継続するおそれがある場合に、原告がその撤去を求めることは、本件店舗における被告に よる演奏権の侵害を停止又は予防するために必要な行為に該当する(著作権法112条2項)。他方、原告が撤去を求めるその他の楽器は、専ら著作権侵害の行 為に供された機械又は器具であるとまでは認めることができない。貸切営業にも使用され得る音響装置の撤去まで命じる必要はないというべきである。(3項に ついて)被告は、自ら本件店舗においては管理著作物は演奏しないという方針を明らかにした後も、管理著作物の演奏を継続してきたものである。このような経 緯に照らせば、被告が判決により管理著作物の使用を差し止められても、これに従わず、また、ピアノを撤去されても、ピアノその他の楽器を搬入して、管理著 作物の使用を継続するおそれが高いものといわざるを得ず、搬入禁止を求める部分は理由がある。


3.執筆者のコメント
争点[1]については、飲食店舗等で客にカラオケを使わせる場合に店舗を歌唱の主体とした判例(最判昭和63年3月15日)や、カラオケ装置のリース業者 も店舗と共同不法行為責任を負うとした判例(最判平成13年3月2日)や著作権法112条1項の差止請求の相手方にあたるとした裁判例(大阪地判平成15 年2月13日)の線に沿うものと言える。
争点[2]については、客観的には著作権侵害以外の用途に供することができるピアノの撤去や搬入禁止を「侵害の停止又は予防に必要な措置」にあたるとした 点で注目される。過去にも飲食店でカラオケ装置やピアノ等の撤去を認めた裁判例(高松地判平成3年1月29日)がある。


(執筆者 鎌田  邦彦 )


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