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平成18年1月23日 大阪地裁 平成17年(ワ)3057号
- 実用新案権侵害差止等請求事件 -

事件名
:足場部材のロックピン事件
キーワード
:進歩性、技術分野の関連性、阻害要因
関連条文
:実用新案法 3条2項
主文
:原告の請求を棄却する。


1.事案の概要
実用新案権に基づく、被告による輸入、製造、販売等する製品、製造用金型等の廃棄及び損害賠償の請求に対し、登録実用新案は進歩性を充足せず、無効理由が存在すると認定された事件である。


2.争点及び判決の要旨
(1)争点
進歩性の充足性の有無である。登録実用新案(本件考案)と刊行物1(引用考案1)との相違点について、刊行物2(引用考案2)、刊行物3(引用考案3)を適用すれば、本件考案にきわめて容易に想到し得たといえるか否か。
(2)本件考案
パイプ状足場部材の先端のほぞ部に他の足場部材の根元を嵌め込んで接続するときの、ほぞ部及び根元部の側面に形成された貫通孔に差し込んで、抜け止め作用 をするロックピンであって、特徴は「弾性的に貫通孔から突出され、抜け止め作用をするピン部材の先端部」が、(A)「足場部材嵌め込み方向に向いた部分に 形成され、足場部材を嵌め込むとき、ピン部材を後退させる縦斜面」と、(B)「足場部材の周方向を向いた部分に形成され、ほぞ部に嵌めた足場部材を捻った とき、ピン部材を後退させる横斜面」とを有する点にある。
(3)引用考案1~3の内容
引用考案1は本件考案と同一技術分野に係り、ピン部材(楔片)としての爪に構成要件(A)が採用される一方、抜きに関しては嵌め込み方向への滑りカムの動 きを利用して爪を没入させる構造が採用されている。引用考案2は写真三脚の伸縮装置に係り、上脚(外管)と下脚(内管)とが元々嵌め込まれた構造であり、 楔片に伸縮操作のための構成要件(B)に相当する小斜面を有する。引用考案3は写真機用三脚に係り、楔片として半円形突子を有する。
(4)判示事項
[1] 引用考案1と引用考案2(同様に引用考案3)とは内管と外管という2つの管状部材を接続する際の固定に関する技術で一致しているから技術分野に関連性があ り、技術分野に関連性がある以上、同様の課題を解決する技術手段を適用することはきわめて容易になし得たというべきである。
[2] 引用考案2(同様に引用考案3)が、連結と分離を予定しない伸縮機構の技術であるとしても、内管と外管とを最終的に分離するか否かによって固定手段の構造 に差異を生じるものではないから、引用考案1と引用考案2(同様に引用考案3)との組み合わせの阻害要因にはならない。
[3] 本件考案の作用効果は、引用考案1に引用考案2(同様に引用考案3)を適用することによって、当業者が予測できる範囲内のことと認められる。


3.執筆者のコメント
主引用文献と他の引用文献との組み合わせ関しては、技術的観点から技術分野の関連性を検討し、関連性がある場合には、同様の課題解決手段の適用はきわめて 容易であるとするものであり、「物品の…」との考案においても、産業分野乃至は商品分類の異同は無関係である。なお、事後的ではあるが、引用考案1と引用 考案2(または3)との「分離の有無」における相違点について、構成上の差異及びその技術的意味まで含めて主張できれば結論は異なった可能性もある。


(執筆者  )


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