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平成17年12月15日 大阪地裁 平成16年(ワ)第6262号
- 意匠権侵害差止等請求事件 -

事件名
:化粧用パフ事件
キーワード
:複製権,氏名表示権/周知商品・営業表示
関連条文
:意匠法2条1項、23条、37条1項、39条2項、民事訴訟法224条1項・3項
主文
:1. 被告は、別紙イ号物件目録記載の物件を製造し、販売してはならない。
2. 被告は、原告に対し、360万円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(以下省略)


1.事案の概要
本件は、化粧用パフの(部分)意匠権者である原告が、被告の製造販売する別紙イ号物件目録記載の物件(ゲルマニウムシリコンブラシ)の本体部分の意匠(イ 号意匠)が本件登録意匠に類似し、その製造販売は本件意匠権を侵害すると主張して、被告に対し、意匠法37条1項に基づきイ号物件の製造販売の差止めを求 めるとともに、意匠権侵害の不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。物品の類否、意匠の類否、無効理由の存否及び損害賠償額が争点となった。本稿で は物品の類否と損害賠償額のうち部分意匠に係る論点を取り上げる。


2.争点及び判決の要旨
(1)物品の類否の判断基準
本件登録意匠に係る物品は「化粧用パフ」であるところ、イ号物件はクレンジングとマッサージの用途を有する商品名「ゲルマニウムシリコンブラシ」であり、物品の類否が争点となった。
裁判所は、物品の類否の判断基準について、「意匠とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感 を起こさせるものをいい(意匠法2条1項)、物品と一体をなすものであって、物品が異なれば意匠も異なることになるから、登録意匠と『類似する意匠』(同 法23条)というためには、その意匠に係る物品が同一又は類似することを要する。そして、意匠の類否は、一般需要者を基準とし、登録意匠と類似の美観を生 じさせ、両意匠に混同を生じさせるおそれがあるか否かによって決すべきものであることにかんがみると、意匠に係る物品の類否も、一般需要者を基準とし、両 物品が同一又は類似の用途、機能を有すると解される結果、両物品間に混同を生じさせるおそれがあるか否かという観点からこれを決すべきものと解される」と 判示した。
そして、分類番号を同じくする別意匠の物品の説明欄の記載やインターネット上の商品ないし洗顔方法の紹介等を根拠に、「需要者(洗顔に少しでも関心を有す る主として女性)において、『パフ』は、おしろいやファンデーション等を顔面等の皮膚に塗布するという本来的用途・機能のほか、洗顔用品としての用途・機 能を有するものと認識されているということができ、イ号物件とその用途・機能が類似するものというべきである」と判断した。
(2)部分意匠と損害賠償額
本件登録意匠は物品の部分をもって意匠登録された部分意匠であり、これと類似するイ号意匠はイ号物件の一部を構成するものにすぎないので、寄与度が問題となった。
裁判所は、「本件意匠権侵害により原告が被った損害と推定される被告が受けた利益の額とは、イ号物件のうちイ号意匠に係る部分の製造販売により被告が受け た利益の額ということになるところ、その額は、同部分のイ号物件全体に占める価格の割合等を基準に、イ号物件全体の利益に対する同部分の寄与度を考慮して 決めるべきである。」として、イ号物件が2つの部分からなりイ号意匠がその一つに係るものであること等から寄与率を50%と判断した。


3.執筆者のコメント
一般に、意匠は物品を一体となすものであり、登録意匠と類似する意匠というためには意匠にかかる物品が同一又は類似することを要し、物品の同一・類似につ いては、用途と機能が同一である場合が同一、用途は同一であるが機能が異なる場合が類似である、と解されている。本裁判例は、物品の類否の判断基準につい て、「一般需要者を基準とし、両物品が同一又は類似の用途、機能を有すると解される結果、両物品間に混同を生じさせるおそれがあるか否かという観点からこ れを決すべきもの」と判示した。(なお、本裁判例は物品の用途と機能を厳密には区別していない。)
物品の類否が争点となった裁判例は多くない。また、部分意匠匠侵害の損害賠償額を認定した例はこれまでなかったと思われる。これらの点で本裁判例は実務上参考になろう。


(執筆者 鎌田  邦彦 )


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