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平成17年10月24日 大阪地裁 平成17年(ワ)第4204号
- 特許権侵害差止等請求事件 -

事件名
:厚平形瓦事件
キーワード
:特許権、包袋禁反言
関連条文
:特許法70条、100条、102条
主文
:原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。


1.事案の概要
本件は、「係止耐風厚平形瓦」に関する特許権を有する原告が、被告物品である防災平板瓦は原告の有する同特許権に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張して、被告に対し、被告物品の製造・販売の差止を求めるとともに、損害賠償を請求した事案である。


2.争点及び判決の要旨
被告物品は、本件発明の構成要件A~Eのうち、要件B,C,Dの要件を満たすか否か、特に、構成要件Bの「差込受部の頭部側端に…係止受部を形成」する要件を満たすか否か、である。


3.判決要旨
本事件においては、構成要件Bの「差込受部の頭部側端に…係止受部を形成」する場合の差込受部が設けられる「頭部側端」の解釈が問題となった。この「頭部側端」の解釈として、下記の2つが可能である。
a:差込受部頭部端部分の側端の意味。この場合、係止受部は、頭部方・側方・上方の3方向に開放されることとなる。
b:差込受部の頭部端を含む頭部側よりの部分の側端の意味。この場合、係止受部は、側方・上方の2方向に開放されていれば足りることとなる。
この「頭部側端」がこのa,bのいずれの意味であるかについては、特許請求の範囲に記載された文言のみでは明確でない。このため、明細書全文、及び本件特許の審査過程において提出された意見書を参酌して当該技術的意義が検討された。
この意見書において、本件特許の作用効果として、係止突起は、「尻部側から頭部側方向への差し込みのみならず横方向からの差し込みが可能となる」と主張し た。ところで、本件明細書[0010]の記載から、「係止受部2cは尻切欠部8内係止突起3c下方に装入される」ものであるから、上記の意見書で述べられ た作用効果の1つである、係止突起の「尻部側から頭部側方向への差し込み」を可能とするためには、係止受部の頭部側が開放されていることが必要であり、ま た、もう1つの作用効果である、係止突起の「横方向からの差し込み」を可能とするためには、係止受部の側方が開放されていることが必要である。このため、 上記意見書の記載は、係止受部の位置が前記aの態様のものであることを前提に、それと係止突起の構成を組み合わせることによって奏する作用効果を本件発明 の作用効果として主張したものである。
したがって、本件発明の構成要件Bの係止受部が「差込受部の頭部側端」に形成されていることの意味は、係止受部が差し込み受部の頭部端部分の側端に形成され、頭部方・側方・上方の3方向に開放されていると解するのが相当である。
そうすると、被告物品の係止受部は、側方・上方の2方向に開放されたものであり、本件発明の構成要件Bの「差込受部の頭部側端に…係止受部を形成」する要件を満たしていない。すなわち、被告物品は、本件発明の技術的範囲に属さない。


4.執筆者のコメント
本事件は、本件発明と被告物品との構成の作用効果の同一性を検討するにあたり、本件明細書に記載された作用効果だけでなく、意見書に記載された作用効果も 必須の作用効果として検討されたものである。意見書での作用効果の記載が包袋禁反言の対象となった事例である。


(執筆者 北川  政徳 )


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