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平成17年10月11日 大阪地裁 平成16(ワ)3265号
- 特許権侵害差止等請求事件 -

事件名
:ラムネ用ペットボトル事件
キーワード
:特許権、製造方法の発明、包袋禁反言
関連条文
:特許法70条、100条
主文
:原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。


1.事案の概要
本件は、「炭酸飲料用ボトルの製造方法」に関する特許権を有する原告が、被告の用いる炭酸飲料用ボトルの製造方法は原告の有する同特許権に係る特許発明の 技術的範囲に属すると主張して、被告に対し、同方法による被告製品の製造・販売の差止等を求めるとともに、損害賠償を請求した事案である。


2.争点及び判決の要旨
本件発明は、主に「ラムネ」と称される飲料用のPET(俗称:ペット)樹脂製のボトル(俗称:ペットボトル)の製造方法であり、A乃至Eの構成要件に分説 される。主な争点は、被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか否か、詳細には、被告方法が本件発明の構成要件C(1次ブロー工程)及びD(2次ブロー工 程)を充足するか否か、である。


3.判決要旨
本事件では、本件発明の構成要件C及びDの技術的意義は特許請求の範囲に記載された文言だけでは理解できず、明細書全文、及び先の本件特許の無効審判で提出された答弁書を参酌して当該技術的意義が検討された
無効審判事件答弁書では、書証(甲第1号証~甲第5号証)の記載事項と相違する点として、「延伸ロッド並びに1次及び2次ブロー工程との関連において移動金型を前進させる」旨が明確に主張されており、本件発明はこの主張事項に限定されて特許が成立したものと解される。
この主張事項と明細書全文から、構成要件Cにおける「各移動金型を後退させた状態」とは、ボトルの狭窄部を成形するための各移動金型がパリソンよりも外側 に離隔され、両者が互いに干渉することを回避する状態となっていることを意味し、構成要件Dにおける「各移動金型を前進させた状態」とは、ボトルの狭窄部 を成形するための各移動金型が所定寸法どおりの狭窄部を得るために前進端まで到達した状態を意味するものと解するのが相当である、と判断。
従って、構成要件Cは、1次ブローが各移動金型とパリソンとの干渉が生じない状態で行われ、これによってパリソンが狭窄部を成形する金型によって押しつぶ されることを防止する効果を有するものであり、構成要件Dは、1次ブロー工程の終了後に各移動金型が所定寸法どおりの狭窄部を得るために前進端まで到達 し、その状態下で2次ブローが行われて所定寸法の狭窄部が成形されることを意味するものであると解され、このような理解からすると、各移動金型が前進端に 到達することは1次ブロー工程中にあってはならず、各移動金型の前進端への到達は1次ブロー工程の終了後であって、2次ブロー工程の開始前でなければなら ないと解するのが相当。
そうすると、本件発明では、ボトルの狭窄部は2次ブロー工程によって成形されるものであり、1次ブロー工程の段階では成形されないものと解されるから、1 次ブロー工程の完了前に各移動金型が前進を完了した場合には、構成要件C及びDを満足しないことになる。これに対し、被告方法は、1次ブロー工程の完了前 に各移動金型の前進が完了するものであり、このことからすると、被告方法は、本件発明の構成要件C及びDを充足しない。即ち、被告方法は本件発明の技術的 範囲に属しない。


4.執筆者のコメント
本事件は、詳細な説明参酌の原則、及び包袋禁反言の法理に則り、被告方法が本件発明の構成要件C及びDを充足するか否かが判断された事件である。延伸ロッ ドの前進並びに1次及び2次ブロー工程との関連において移動金型を前進させることで狭窄部を成形する発明に限定された以上、1次ブロー工程時に狭窄部が成 形される被告方法が本件発明の技術的範囲に属しないとした判断は妥当である。


(執筆者 華山浩伸 )


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