HOME > 関西会について > 研究活動 > 大阪地裁判決要約 > 平成17年7月21日 大阪地裁  平成16年(ワ)10514号

平成17年7月21日 大阪地裁  平成16年(ワ)10514号
- 職務発明の対価等請求事件 -

事件名
:ガスコンセント事件
キーワード
:超過実施分,企業の貢献度,実施化のリスク,受益期間
関連条文
:特許法35条III,IV,同65条I,実用新案法11条III
主文
:被告は,原告に対し,199万0601円を支払え。その余の請求を棄却する。訴訟費用の100分の1を被告の負担とする。


1.事案の概要
本件はガス器具部品のメーカー(被告)の従業員(原告)が,在職中にした「ガスコンセント(ガス栓体)」についての発明1件,考案3件の特許・登録を受け る権利を被告に承継したことに対する対価の未支払分,1億8000万円の支払いを請求した事案である。裁判所は,発明完成に至るまでの経緯,被告の貢献度 (2/3),実施料率(2%),被告が負うべきリスク負担(95%)などに基づき,被告に対し,原告請求額のほぼ1/100に相当する約199万円の支払 いを命じた。


2.争点
(1)本件特許権及び実用新案権により被告が受けるべき利益の額(独占による超過分)
(2)被告が貢献した程度(原告と被告の配分)
(3)被告が原告に対して支払うべき相当な対価の額


3.判示事項
(1)
(i)実施品の販売額のうち,特許(実用新案登録)を受ける権利を得たために売り上げることができた部分(職務発明などの通常実施権に基づく実施を超える 部分(以下,「超過実施部分」という。)に,相当な実施料率を乗じて得られるべき実施料を算出し,これをもって,「特許などを受ける権利を得たことによる 得られるべき利益」と考える。ただし特許権等の共有者に対して販売するときは,実施料は支払わないか,支払うにしても低額である。
(ii)対象となる時期は,出願公開後は補償金請求権が生ずるから,出願公開時から存続期間の満了時までと解するべき。売り上げに寄与する部分は製品全体でなく,特許権の対象である主要部分のみ。他社に支払っているライセンス料は考慮すべきでない。
(iii)結局,ガスコンセントの売り上げによる利益約66億6000万円の30%が寄与した部分で,実施料がその2%であるから,特許権を得たことによ る被告の利益は約3996万円と算定される。実用新案権3は,ガスコンセントの取り外し機構に関する部分であること,8社の共有であることから,38万円 と算定される。

(2)
(i)発明が,ブレーンストーミングで出たアイデアや社内のアイデア募集により集まったアイデアに基づくものであるにしても,原告による実験やアイデアの取捨選択により,実現可能な技術としてまとめ上げられたものである。
(ii)使用者等が事業化するに当たって様々なリスクを負担していること,従業者等が譲渡をせずに利益を得ようとしても,ライセンス先の発見が困難なこと や事業の失敗のリスクがあることを考慮し,対価の額は被告が受けるべき利益の5%とするのが相当である。本件考案3については,考案者が複数であることも 考慮すべきである。

(3)被告が原告に対して支払うべき対価の額は,本件発明について,約3996万円の5%の約199万円と算定される。本件考案3については,38万円の1/2(考案者2人)の5%である9580円と算定される。



4.執筆者のコメント
対価の額を、企業が受ける利益の5%としたのは,妥当である。裁判所はその根拠として,ライセンス先の発見の困難性や事業化のリスクを考慮したことを挙げ ている。しかし実際には代替技術の有無や,発明部門以外の従業員とのバランスなどの多くの要因を考慮し,さらに日亜化学工業(株)の特許権持分確認等請求 事件(平成13年(ワ)17772号東京地裁)の控訴審での和解金額なども考慮したと思われる。


(執筆者 秋山  重夫 )


« 戻る