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平成17年7月12日 大阪地裁 平成16(ワ)5130号
- 著作権侵害差止等請求事件 -

事件名
:初動負荷・終動負荷事件
キーワード
:複製権,氏名表示権/周知商品・営業表示
関連条文
:著作権法2条1項1号,21条,18条以下/不正競争防止法2条1項1号
主文
:請求棄却


1.事案の概要
著名なスポーツトレーナーであるAやそのトレーニング方法を取り入れらスポーツジムを経営する原告会社が、トレーニング方法に関する「初動負荷」及び「終 動負荷」などのAが創作した表現につき,①著作権を有すること,②それが商品等表示に該当すること(不競法2①1)などを根拠に、ゴルフの週刊誌等を発行 する被告出版社及びスポーツトレーナーであるBが、雑誌上にそれらの表現を原告の氏名を表示せずに掲載し又は解説をしたことに対して、雑誌の販売差止・廃 棄、謝罪文の掲載、及び損害賠償を求めたが,①については著作物とはいえないとして,②については被告らの使用態様は商品等表示の使用に該当しないことを 理由にいずれも棄却された事案(なお,他の争点として,③債務不履行,④不法行為があるが,紹介するほどのものではないので省略した。)


2.裁判所の判断
(1) 争点① 「初動負荷」・「終動負荷」は著作物かにつき。
「初動負荷」につき,ある抽象的な理論や方法を端的に表現する名称として,それを漢字四文字の熟語で構成することは,日本語において常用される表現方法で あり,運動の動作の開始時において負荷を与えた後に,その負荷を適切に漸減するという運動・トレーニング方法の名称を考えるに当たり,「運動の動作の開始 時において」「負荷を与える」という代表的な要素を抽出して,「初動負荷」と名付けることは,「広辞苑」(第五版)において「初動」とは「初期段階の行 動」の意味であるとされていることもふまえると,ありふれた表現にすぎず,創作性を有する著作物と認めることはできない。
「終動負荷」につき,確かに「終動」という言葉は一般の日本語にはなく(前掲「広辞苑」にも見られない。),Aの創作した造語であると認められるが,新旧 二つの理論や方法に名称を付与する際に,両者の名称が対になるようにするのは日本語として常用される表現方法であることからすると,新規な運動・トレーニ ング方法を「初動負荷」と名付ける一方で,従来の運動・トレーニング方法を「終動負荷」と名付けることも,やはりありふれた表現にすぎず,創作性を有する 著作物と認めることはできない。

(2) 争点② 被告会社記事の「初動負荷トレーニング」という表現は,商品等表示の使用に当たるか。
記事内での各使用例を見れば,本件記事において,「初動負荷(トレーニング)」という表現は,簡単に定義された運動方法を呼称する概念用語として使用され ているものと認められ,被告らの商品ないし営業について,その出所表示として使用されているものでない。


3.執筆者のコメント
「初動負荷」,「終動負荷」とは,Aが開発した従来のトレーニング理論を覆す画期的なトレーニング方法を表現するものとしてAが創作した表現であるが,判 示のように著作物性を認めるのは困難と思われる。本件紛争において原告らが本来達成しようとしているものは,Aが新規に開発したトレーニング方法の独占的 利益の確保と思われるところ,トレーニング方法自体の特許取得は困難で,商標と不正競争防止法(周知商品・営業表示)による保護が考えられるが,本件では 後者につき被告らの使用形態が商品や営業の出所表示として使用されていないとして棄却された。しかし,トレーナーのBについては,Bの営業の出所表示とし て使用していると考える余地もあったのではないかと思われる。


(執筆者 釜田  佳孝 )


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