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平成17年5月24日 大阪地裁 平成15(ワ)7411号
- 不正競争行為差止等請求事件 -

事件名
:営業情報流用事件
キーワード
:営業秘密
関連条文
:不正競争防止法2条1項4~9号 2条4項 3条 4 民法709条 719条
主文
:原告の請求をいずれも棄却する。


1.事案の概要
本件は、工業用刃物の販売を業とする原告が、原告の営業秘密である取引先の名称、取引商品の寸法・材質・売値・仕入れ値等の営業情報を被告らが不正競争防 止法2条1項4号ないし9号に該当する行為をもって取得し、使用していると主張して、同法3条1項に基づき被告らが原告の顧客に対して上記営業秘密を使用 して営業活動を行うことの差止めと、同条2項に基づき上記営業秘密を記載した記録媒体の廃棄を求めるとともに、同法4条に基づき損害賠償を請求し、予備的 に、被告らには、原告の営業情報の不正取得、原告のノウハウの利用、退職・引抜き、被告らの虚偽事実告知や、原告への発注を被告会社へ受注させたり、原告 に対する報告義務を懈怠するなどしたところ、これらの行為は原告に対する不法行為を構成すると主張して、民法709条、719条に基づき損害賠償を請求し ている事案である。


2.争点
本件営業情報は、不正競争防止法2条4項の「営業秘密」に該当するか。
被告らの不正競争行為及び原告において培ってきたノウハウを利用した行為、被告らの原告からの退職行為、引抜き のような被告会社への勧誘行為、被告らの虚偽事実の告知、原告への発注を被告会社へ受注させたり、原告に対する報告義務を懈怠する、これらの行為は、民法 709条の不法行為、719条の共同不法行為を構成するか。


3.判決要旨
まず、本件営業情報が秘密として管理されているか否かについて検討すると、証拠、証言、弁論の全趣旨から、本件営業情報は、秘密として管理していたという ことができないので、「営業秘密」に該当しない。そうすると、その余の営業秘密の要件(有用性及び非公知性)を検討するまでもなく、原告の不正競争防止法 に基づく差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。
つぎに、以下の行為が、民法709条の不法行為(民法719条の共同不法行為)を構成するかについて検討すると、①本件営業情報が秘密として管理されてい るものではなく、有用性自体は否定できないとしてもその程度は必ずしも高くなく、原告が主張する被告らの不法行為が民法709条の不法行為を構成すると解 することはできない。②原告が主張する「ノウハウ」は、通常当然に従業員に対し注意・指導するような事項にすぎず、法的保護の対象となるような「ノウハ ウ」ということは到底できない。③被告らの原告からの退職行為は労働契約上の義務を怠ったとの特段の事情は認められず、不法行為を構成しない。④引抜きの ような被告会社への勧誘行為は、雇用契約上の誠実義務に違反し、社会的相当性を著しく逸脱した引抜き行為であるとは言えず、原告の主張は理由がない。⑤被 告らの虚偽事実の告知、原告への発注を被告会社へ受注させたり、原告に対する報告義務の懈怠などの行為については、原告の主張事実を認めるに足る証拠がな く、原告の主張は理由がない。



4.執筆者のコメント
不正競争防止法で保護される「営業秘密」であるには、たとえば、営業情報の場合、営業情報を相当絞って有用性を確保し、秘密管理を徹底するために業務体制を厳重にし、営業情報が公知でないことを常に検証する必要があると思う。


(執筆者 大和田隆太郎 )


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