ちざい げんき きんき 事例紹介
知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
大阪工業大学 大学院 知的財産研究科(知的財産専門職大学院)
これからの関西、
そして日本の発展の
キーマンとなる、
知的財産実務の専門家を
養成しています。

さまざまな事業において知的財産を最大限に活用し、成長に繋げられている元気な関西の企業・団体を紹介するこのコーナー。 今回は視点を変えて、知的財産を適切に保護・活用する専門家の養成を通じて、関西、 さらにはわが国の産業・ビジネスの発展に貢献されている大阪工業大学 大学院 知的財産研究科をクローズアップ。 教授をはじめ、院生、留学生、修了生の方々に、教育の特色やそれぞれの将来目標など、さまざまなお話しをお伺いしました。
「知的財産専門職大学院」の取り組み
院生の将来像にあわせて学べる、多彩なカリキュラム

- 取材担当者
- 大阪工業大学 大学院 知的財産研究科は西日本で唯一の「知的財産専門職大学院」として知られていますが、開設の背景をお聞かせいただけますか。
- 大学院
- きっかけとなったのは、2002年の知的財産立国宣言と2003年の「知的財産基本法」の施行です。 国の施策を受けて、知的財産分野に携わる高度専門家を養成するために、日本初の知的財産学部の創設(2003年4月)につづき、「知的財産専門職大学院」を2005年4月に開設いたしました。
- 取材担当者
- 知的財産分野の業務は、必ずしも法律に関することだけではありません。具体的にはどのような人材の養成を目指されていますか。
- 大学院
- ご承知の通り、知的財産分野の業務は多岐にわたります。一人の専門家が全ての分野に精通することは困難ですので、組織的な分業体制によって運営されているのが現状だと思います。
- 取材担当者
- そうですね。
- 大学院
- そのため、知的財産に関わる人材といっても、いろんなバリエーションがあります。 そこで私どもでは産業界のニーズに応え、知的財産法を中心とした法律的素養を身につける「基幹法領域」、 イノベーションを支援するための実践的な知的財産のスキルを習得する「イノベーション支援領域」、 知的財産に基づく国際的な視野を養う「グローバル領域」、 知的財産をビジネスに活用するセンスを培う「ビジネス領域」の4領域を中心にカリキュラムを構成しています。 授業科目数はおよそ60科目にも及びます。


- 取材担当者
- その60科目の中から院生の将来像にあわせて、各自が履修プログラムを作り上げることができるわけですね。
- 大学院
- はい。院生各自の現状と将来像に応じた履修を行い、産業界で活躍できる人材に育つように支援しています。 私たちは“人材は財産である”という考えから“人財”と呼んでいるのですが、 具体的には「イノベーション支援知財人財」「グローバル知財人財」「知財マネジメント人財」 「知財オールラウンド人財」の4つの人財像を想定しています。
- 取材担当者
- 多彩な科目を指導される教授陣も、個性豊かな方々が揃っているとお聞きしています。
- 大学院
- 産官学から豊富なキャリアをもつ多数の実務家教員を招いています。 院生に入学の動機を尋ねると、各界で実績を残す著名な実務家教員が多いからという声がよく返ってきます。
- 取材担当者
- インターンシップも活発に行われているんですよね。
- 大学院
- 企業や特許事務所に院生を派遣して仕事を体験させていただき、知的財産の実務能力の向上を図っています。 台湾の大学と提携して海外留学インターンシップも行っているんですよ。


- 取材担当者
- 院生の中には弁理士の国家資格をめざす方もいらっしゃいますよね。
- 大学院
- 「弁理士試験支援プロジェクト」として、さまざまな対策講座を設けているだけでなく、 受験料や合格報奨金など経済面に関しても手厚く支援しています。
学びの環境
社会人でも仕事と勉学を無理なく両立できるように配慮
- 取材担当者
- こちらの大学院では、主にどのような方が学ばれていますか。
- 大学院
- 入学生は社会人学生、留学生、学内進学者などの一般学生、以上3つの層から構成されています。 この内、社会人学生が入学者総数の約3割を占めています。
- 取材担当者
- 本日は社会人学生として入学・修了されたおふたりにお越しいただいていますが、仕事との両立は大変ではなかったですか。
- 修了生(弁護士)
- 私は神戸で弁護士業をしていまして、社会人として本学に進学しました。 特許や商標、著作権などの相談が多く、現場の知識を吸収する必要性を感じたからです。


- 当然、業務を終えてから通学することになるわけですが、本学には大阪市旭区の大宮キャンパスのほか、 サテライトキャンパスが梅田にあるので通いやすかったですね。平日の夜は梅田で1~2科目受講し、 土曜日は大宮キャンパスで朝から5科目受講していました。
- 修了生(情報通信系企業勤務)
- 私は情報通信系の企業で営業を担当していますが、知的財産に関する知識の必要性を感じて本学で学びました。 先生によっては「コミュニケーションレポート」という独自システムを用いて、Web上でレポートを提出することができたので、 大学院まで足を運ぶ必要がなくて便利でしたね。
- 大学院
- 多忙な社会人の方が仕事と勉学を両立できるように、正規の2年分の授業料で、 3年または4年かけて修了可能な「長期履修制度」も用意しています。 また、仕事の見通しの関係で春期に入学できなかった方のために、「秋期入学制度」も設置しました。 秋期入学は留学生の方にも利用していただいています。


- 取材担当者
- おふたりとも大学院での学びを、どのように仕事に活かしていこうとお考えですか。
- 修了生(情報通信系企業勤務)
- 講義において、通信分野の多くの局面で「技術標準」が重要な位置づけとされており、 この「技術標準」には知的財産が関与することを知りました。 これらの学びを通じて、今後は知的財産のコンサルティングに関われる人材として会社に貢献していきたいですね。
- 修了生(弁護士)
- 本学には特許庁の元審査官の方が教授を務めておられ、講義の中で審査基準の運用方法などを教えていただきました、 実際の審査官がどのように考えているのかを知ることができて大変有意義でした。 私たちの弁護士事務所でも知的財産に関わる案件は増加傾向にあります。 本学で学んだ知識をフルに活かして、弁護士として適切なアドバイスを送っていきたいと思っています。
- 取材担当者
- 弁理士会でも審判実務などの研修は行っていますが、元審査官の方から直接話しを聞ける機会はなかなかないので、羨ましい環境だと思います。 我々が長い時間をかけてコツコツと積み上げていくものを、効率よく学べるのはこちらの大学院ならではの魅力ですね。
海外交流と地域貢献
知的財産を通じた社会貢献活動を積極的に展開
- 取材担当者
- こちらの大学院の特長のひとつである、海外交流についてもお聞かせいただけますか。
- 大学院
- 院生が大学から支援を受けて海外留学に赴くだけでなく、主に中南米からJICAの研究生を招いて交流を深めています。 私ども教員が研究を指導する一方、院生にもアシスタントについてもらっています。
- 院生
- 私も国際交流リサーチアシスタントを務めさせていただきました。 研究のサポートだけでなく、休日には日本文化の体験のために奈良・京都の案内なども行っています。 海外研究生との交流を通じて気づくことがとても多く、国際的な価値観を身につけるいい機会になっています。
- 取材担当者
- 入学者には留学生も多いようですが、アジアの方が中心ですか。
- 大学院
- そうですね。今は中国、台湾、韓国からの留学生が大部分を占めています。 現地で知的財産の実務をされていた方が、日本の知的財産法制を学びたいというケースが多いです。 現在、ホームページでは日本語、英語のほか、中国語、台湾語での表記も進めており、海外での入学試験の実施も考えています。


- 留学生
- 私は中国から留学生として入学し、この春に修了しました。 中国でIT関係の仕事をしていましたが、日本企業との取引が多くなってきたため、 本格的に日本の知的財産を学ぼうと思ったことがきっかけでした。 アジアにおいて、日本企業は知的財産管理がとても進んでいます。 私は理系出身なので法律についての知識を持ちあわせていなかったため、すべてが勉強になりました。
- 取材担当者
- 院生の方、留学生の方、おふたりの将来の目標をお聞かせいただけますか。
- 留学生
- 大学院を修了後、日本の特許事務所に勤務しています。 先日、北京に行って中国の弁理士試験を受けまして、今は結果待ちです(その後、合格)。 今後は日本の弁理士試験にも挑戦したいと思っています。 将来は知的財産に関する日中のかけ橋になりたいです。
- 院生
- おかげさまで繊維メーカーから就職内定をいただき、知的財産に関わる部署に配属していただける予定です。 知的財産の力で日本製品を世界に広めていくのが私の夢ですね。
- 大学院
- 各企業ともに即戦力となり得る人材を求めています。 知的財産の高度なスキルをもつ院生の就職状況は大変良好で、 いわゆる大手といわれる企業や法律事務所に勤め、 多くの修了生が現場の第一線で活躍しています。

- 取材担当者
- 関西に位置する「知的財産専門職大学院」として、今後の地域発展への関わりなどについてお考えをお聞かせください。

- 大学院
- 関西は日本の産業界を担う一大拠点であり、大企業はいうに及ばず中小ベンチャー企業も数多くあります。 産業発展のため、特許、商標をはじめとする知的財産の価値に対する認識が高い地域といえます。 そこで私たちは知的財産の高度な知識をもつ専門家を養成するだけでなく、 今後の関西の発展に向けた社会貢献活動にも大きな力をそそいでいます。 大阪府工業協会との共同主催による「知的財産研究会」、近畿経済産業局特許室との連携による「近畿知財塾」などがその一例です。
- 取材担当者
- 私ども日本弁理士会 近畿支部も、いろいろな活動で協力できればと思います。
- 大学院
- ありがとうございます。日本弁理士会の継続研修の機関にも認定いただいています。 工学部のほうでは環境工学科があり、 私どもが知的財産の支援をしながら大阪工業大学が生み出した発明の特許出願をめざすということにも取り組んでいます。 今後も関西のいろんな団体と協力しあい、 まさに日本弁理士会 近畿支部の「ちざい げんき きんき」というテーマに沿うような活動を継続して展開していきたいと考えています。
- 取材担当者
- 本日はお忙しい中、ありがとうございました。
大阪工業大学 大学院 知的財産研究科(知的財産専門職大学院)
知的財産の創造と活用に向けたわが国の施策を受けて、2005年4月に開設。
現在までに大学の知的財産学部とあわせて1,300人を超える人材を社会に輩出しています。
2016年秋には大阪の梅田茶屋町に学園・大阪工業大学 梅田キャンパス(地上22階・地下2階、高さ125m)が竣工予定。
ここに「知的財産専門職大学院」も新たな拠点を構えます。

大宮キャンパス

梅田キャンパス外観(イメージ図)