HOME > 関西会について > 事例紹介 > ㈱モリタ製作所 総合歯科診療装置スペースライン
ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
ソアリック 特許第4429570号、第4951293号、意匠第1408337号
3DX マルチイメージマイクロCT 特許第3919048号
ツインパワータービン 特許第3208345号、第3672781号、第5011365号、第4879164号
デンタポート 特許第2873722号、第2873725号、第3264607号
アーウィンアドベールEvo 特許第3813760号、第4022514号、第5059074号
権利者:株式会社モリタ製作所 

営業戦略・技術戦略・知財戦略、
3つをバランスよく連携させ、
事業を進めることが大切。
〝強い知財〟は
現場のモチベーションも高めます。

来年で創業100周年。長きに渡り、京都の地から優れた歯科医療機器を世界へ発信し続ける、業界のリーディングカンパニー・モリタ製作所。 技術管理部の方々に、創業当時の商材など貴重な展示物満載の歴史館や、最新機器が並ぶショールームを案内していただきながら、それぞれの製品が持つ機能やそれに伴う特許の内容、また知的財産権に対する取り組みなどについて伺いました。

総合歯科診療装置「スペースラインシリーズ」について

「“先生にも患者様にもやさしい治療”をめざして」
1964年誕生・世界初の水平位診療治療ユニット、現在も進化中!

取材担当者
かかりつけの歯科医院で、御社の診療ユニットにいつもお世話になっております(笑)。 まず、その「スペースライン」についてお聞きします。世界初の水平位での治療を可能にした総合歯科診療装置とのことですが、開発のきっかけをお聞かせください。
モリタ製作所
1962年に、アメリカ人歯科医師のDr.Beachから「診療ユニットについての画期的なアイデアがある」というお話をいただきました。 当時の歯科医は立ったまま、椅子に腰掛けた患者さんの口腔内をのぞき込む姿勢で治療していたため、背骨が斜めに歪んでしまい“後ろ姿で歯科医とわかる”と言われたそうです。 一方、患者も椅子に腰掛け身体を硬くしてじっと耐える、不安定な姿勢でした。 Dr.Beachは「歯科医師は姿勢良く患者さんに対して正確な作業が出来るように座って診療するべきで、患者も楽な姿勢で受診できるようにするべき。」という発想から、歯科医師の胸の前に患者さんの口腔位置を持ってくる水平位診療の必要性を説いたのです。

取材担当者
人間工学に基づいた設計ですね。
モリタ製作所
そうです。まだそんな言葉はまったく一般的ではなかった時代ですが(笑)。 患者さんに仰向けに寝てもらい、歯科医師はチェアに座って診療するスタイルを実現したのが「スペースライン」です。 また、切削ハンドピースなどの器具が患者さんの視界に入らないよう配慮し、治療に対する恐怖心を軽減する工夫も盛り込まれていました。

取材担当者
初代スペースラインの発売が1964年。 以後、機能もデザインも進化し続け、一見するとおしゃれなインテリアのようです。 御社の開発についてのこだわりをお聞かせください。

モリタ製作所
先生方は当然、高機能で使いやすい製品を望まれますが、同時に先生方は、デザインに関する意識がとても高くていらっしゃいます。
弊社は、機能、品質、コスト、デザインのどれをとっても、先生方に満足いただける一流品をめざした開発を進めていて、2012年には「ソアリック」が、デザイン界のオスカーとも言われるドイツの「IFデザイン賞」で金賞、日本の「グッドデザイン賞」でも金賞を受賞しました。 また弊社はトップの方針により、じっくりと時間をかけ、息の長い研究ができることも特長です。 チェアユニット以外に、例えばレーザ治療装置などは、10年単位の大変長期にわたる研究の成果が結実したものです。
知的財産への取り組み

基本特許を取得し、
将来に活きる“強い知財”づくりをめざす

取材担当者
開発に何年もかけてしまうと、自社の出願が引例となって権利取得が難しくなったり、世の中に出たときには基本特許がなくなったり、ということもあるかと思うのですが、そこはどうハンドリングされているのでしょうか?
モリタ製作所
出願は、遅ければ他社に先を越されるし、早くすれば製品化する頃には期間満了により消滅してしまうため、タイミングが難しい。 モノができても医療機器として承認を得るには治験の評価が必要だったりとなかなか時期が読めませんが、技術管理部と開発部とが相談し、市場の動向なども考慮して決定します。 ただ、オリジナリティのある技術を他社に先がけて開発できているため、ライセンス活用ができる点は我々の強みだと思っています。
取材担当者
「スペースライン」も数々の特許を取得されていますね。
モリタ製作所
はい。例えば、患者さんが座る診療台の背板上方とヘッドレスト側方の空間に器具類を配置することを技術的ポイントとした特許や、背板の中へ器具類の引き出し・引き込みを自在にする滑車機構の特許などを取得しています。 また、特許だけでなく、各製品の意匠・商標なども各国で取得しています。

取材担当者
知財の活用としては、どういったことをされていらっしゃいますか?
モリタ製作所
海外からの模倣品の排除では、視覚的にわかりやすい意匠や商標に、多数の特許を組み合わせて使います。 また海外での訴訟は高額となるため、輸出比率が高い製品については、重要特許をまとめて管理し、自衛を図っています。 海外、特に欧米ではライセンス契約時の交渉材料として確保する意味合いが強いですね。
取材担当者
他社にライセンス提供されている特許技術にはどんなものがありますか?
モリタ製作所
例えば、画像診断に使う「3DX マルチイメージマイクロCT」や高解像度のX線3D撮影装置「ベラビューエポックス 3Df」のレントゲン装置に関わるものでは、世界規模の大手メーカーに、かなりの基本特許を使っていただいています。 また、「根管長測定器ROOT ZX」の高精度の根管長測定に関する特許は、アメリカで高いシェアを獲得するのに貢献しました。 「モリタといえば、根管長測定器 ROOT ZX」と言ってくださる先生もおられます。また、発展途上国などからの模倣品が出回っているため、「強い特許」を申請し、弁理士さんにもご指導いただきながら対応しています。

取材担当者
特許によって有利な立場で事業が進められるというのは、高い技術力の証しですね。 基本的な技術であればあるほど、汎用性も高くいろいろな業界にも適用できると思うのですが、権利範囲は大きく広げていかれる方針でしょうか?
モリタ製作所
医療関係を抑えることは絶対です。 そして、売れるのならば他業界にもと思いますが(笑)、そうなると当然、さまざまな情報提供や異議申立などを受けることになると思うので、内容によりますね。
今後の事業展開について

高品質の「Kyoto」ブランド製品で
世界への発信力をさらに強化!

取材担当者
歯科医療機器メーカーのリーディングカンパニーとしては、東京で事業展開をされた方が効率化が図れるのでは?と思ったりもするのですが、京都におられるメリットや強みなどがございましたらお聞かせください。
モリタ製作所
全国の先生方とお付き合いする上で地理的な不都合は感じません。 弊社の製品は、先生方から「京都製だな」と言われますし、Japanより Kyotoのほうが世界的にも知名度が高い気がします。 また、京都は創業の地であり、「MORITA=Kyoto」こそブランド戦略上弊社が大切にしているポリシーとなっています。
取材担当者
Kyotoがブランドとして確立されているのですね?
モリタ製作所
京都には、歴史と伝統を重んじながら、新しいことにも挑戦していくという風土があります。 モリタ創業の地でもあり、ユニークな世界的企業もいくつかありますね。 また弊社は、京都2か所と上海に工場があり、さらにグループ企業であるモリタ東京製作所が埼玉にあり、メンテナンス会社が京都にあります。 さらにまた、グループ企業である(株)モリタが販売会社として大学の中にも売店を置くなど、広いネットワークがありますので、京都にいてもまったく問題ありません。むしろ目は国内でなく、海外に向いています。 既設のロサンゼルス、フランクフルトに続き、シンガポールにも営業所を開設しています。

取材担当者
国内はもちろん、海外からも現場のニーズを吸い上げられるのはすばらしいですね。そして、大学内に売店ですか!?
モリタ製作所
はい、総合商社の(株)モリタが大学内にデンタルショップを出していて、専門書籍から歯ブラシまで、歯科大の学生さんに必要なものを揃えています。 ここでは、日々先生方や学生の皆さんに密着する形で、営業・サポート・情報収集を行っています。
取材担当者
高い技術力が、大学への出店も可能にするのですね。
モリタ製作所
ありがとうございます。技術力、イコール知的財産権と言えますが、それを会社が持っているというのは強みであり、誇れることですし、どこの部署で働くにせよ、仕事をする上でのモチベーションアップにもつながると思います。

取材担当者
知財の確保は、社員の方々の士気にも影響するのですね。 将来を見据えた知的戦略については、御社内でのご検討のほか、外部からの情報提供として弁理士がお力になれる場面はありますでしょうか?
モリタ製作所
海外の知財制度の動きを、タイムリーに発信いただければと思います。 新製品の開発では、海外企業との連携もあるので、しっかりとした契約の取り決めにはさまざまな情報が必要です。 また、営業戦略、技術戦略、知財戦略、この3つが連携しないと事業化はうまくいきません。 今後の技術動向を見極めるのは難しく、弁理士の先生方とも相談しながら進めていければと思います。
取材担当者
日本の弁理士も、今後ますます海外の知財情報について熟知していく必要があると感じております。 今後とも研鑽いたしますので、積極的にご相談いただければと思います。本日はありがとうございました。

株式会社モリタ製作所
1916年創業。歯科用、耳鼻咽喉科用、産婦人科用、小動物用医療機器を開発・製造し、世界に向けて発信するグローバルカンパニーです。 先端技術と人間中心のデザイン・コンセプトを追求し、機能性だけでなく、患者さんの快適性や医師とのコミュニケーションを配慮した「人にやさしい診療空間」を創造しています。