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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
室温〜低温焼成型銀ナノ粒子インク 特許:第6329703号など
銀ナノ粒子接合材 特許:第6220966号など
FlowMetal® 商標:第5348855号
権利者:バンドー化学株式会社 

技術部門、知財部門、弁理士の
三者が密に協力しあうことで、
競合他社が多い中、
「FlowMetal®」関連の
特許登録率は95%以上を
誇っています。

1906年の創業以来、ゴム・プラスチック製品メーカーのパイオニアとして歩み続けてきたバンドー化学。近年はコア事業で培ってきた加工技術にナノ粒子生成技術を複合させた「FlowMetal®(フローメタル)」の事業展開を本格化し、エレクトロニクス分野を中心に注目を集めています。今回は神戸・ポートアイランドにある本社を訪ね、「FlowMetal®」の開発秘話、さらには知的財産にまつわる取り組みについてお話しをお伺いしました。

「室温〜低温焼成型銀ナノ粒子インク FlowMetal®」の開発背景

導電性を持つインクジェット用インクの技術開発に挑む

取材担当者
創業以来、ベルトコンベアや自動車、オートバイ、印刷機部品などに使用される産業用ベルトを手がけられてきた御社ですが、近年は電子資材にも事業領域を拡大されていますね。
バンドー化学
はい。「FlowMetal®」が、まさにその分野を担う製品のひとつです。
取材担当者
「FlowMetal®」とはどのような製品なのでしょうか。技術開発のきっかけも含めて、詳しくお聞かせください。
バンドー化学
もともとのきっかけはお客様からの要求です。インクジェット方式のプリンタに用いるタンクに入れて噴出し、パターン化した電気配線が描ける、そんな導電性を持ったインクを作ってほしいとの依頼がありました。このインクを使用すれば、インクジェットプリンタで紙に印刷するような感覚で、高性能なプリント基板を作ることができます。
取材担当者
依頼があったのはいつごろのことですか。
バンドー化学
20年ほど前になります。ちょうど新規事業にも積極的に取り組んでいく方針が打ち出されていた時期でしたので、技術部門で挑戦してみようということになりました。
取材担当者
導電性を得るための材料などは、お客様から指定されていたのですか。
バンドー化学
まったく制約はなかったです。技術開発のポイントは、簡単にいえばインクジェットで吹き付けたインクを、低温で処理して導電性を持たせることです。しかし、どのような材料を用いればいいのかまったくわからず、ゼロからのスタートでした。ヒントを得ようにも、インターネットがそれほど普及していなかった時代ですし、今のようにナノテクノロジーという用語があまり一般化していなくて、参考となる文献がほとんどない状況でしたから苦労しました。
取材担当者
情報収集はどのようにされたのですか。
バンドー化学
大学の研究所を訪ねたり、数少ない文献や書籍を集めたりすることからはじめました。後にノーベル賞を受賞される白川英樹博士が導電性ポリマーの研究をされていたことを知り、参考になればとそのような導電性ポリマー材料も試してみたことがありました。しかし、私どもが求めている導電性の値を出すことはできなかったです。
取材担当者
研究開発のターニングポイントとなった出来事は、どのようなことだったのでしょう。
バンドー化学
材料として銀ナノ粒子に着目したことで光が見えてきましたが、それからもトライ&エラーのくり返しでした。しかし、研究の途中で私どもがゴム材料や樹脂材料に用いている分散技術が、銀ナノ粒子の低温焼成においてもキーになることに気付いたんです。共通する技術がわかってからは開発スピードが加速しました。

取材担当者
技術開発にはどれくらいかかりましたか。
バンドー化学
最初の「FlowMetal® 」製品をリリースするまでに、約8年間を要しました。
取材担当者
 使用者にとってのメリットをお聞かせください。
バンドー化学
大きな特長としては、加熱の必要がなく、室温~低温で乾燥させるだけで導電性パターンを作成できることです。耐熱性の低い基板にも適応できるため、基材の種類・形状を広げることが可能となりました。用途としてはインクジェットだけでなく、ディスペンサー、グラビアオフセット印刷など各種印刷方式に運用することができます。現在は、タッチパネル用の透明導電膜などにも用途を広げようとしています。

「銀ナノ粒子接合材 FlowMetal®」の開発背景

室温〜低温焼成型銀ナノ粒子インクの技術を応用して接合材を開発

取材担当者
その後、銀ナノ粒子生成技術を応用し、さらなる技術開発を進められてきたそうですね。
バンドー化学
銀ナノ粒子インクの銀が、電極を構成する金属にも、LEDやパワーデバイスに用いられる半導体素子にも接合することがわかりました。そこから研究を進め、半導体素子に接合できる銀ナノ粒子接合材の技術開発に成功しました。  
取材担当者
こちらも開発の背景に、お客様の声があったのですか。
バンドー化学
はい。一例を挙げるとLED素子を基板上に接合するために、従来使われてきた金すずはんだよりも融点の低い接合材を必要とされていました。私どもが技術開発した銀ナノ粒子接合材の場合、150~250℃の低温加熱で半導体素子を基板上に接合することが可能です。銀に由来する高い熱伝導率に加え、焼成後は融点が上がり再融解しない特長も持ちます。さらにLED素子を接合した場合、3,000サイクルのヒートサイクル試験後も発光強度の低下がないことが実証されています。また、窒素雰囲気下において、ベア銅へ無加圧接合が可能なタイプもあります。  
  
FlowMetal®接合材
取材担当者
技術開発にあたってご苦労された点は?
バンドー化学
接合材ですからくっつかないと意味がありません。銀と基板の材料を、いかに相互拡散させて接合強度を高めるかというところが技術的に難しかったです。
取材担当者
こちらは技術開発にどれくらいの期間を要しましたか。
バンドー化学
2018年に「銀ナノ粒子接合材 FlowMetal®」としてリリースするまで、約5年かかりました。今後は、LED市場、パワーデバイス市場、光半導体市場などに適用する製品として、さらに技術開発を進めていく方針です。
 

知的財産戦略と弁理士の役割

積極的に知的財産を創造・権利化するという企業風土がある

取材担当者
技術志向の会社として、知的財産についてはどのようなお考えをお持ちですか。
バンドー化学
知的財産に関しては、現在2本の柱で活動しています。一つめはビジネスに貢献する知的財産を、知財部門が技術部門とともに作り上げて守っていくこと。二つめは他社特許のウォッチングです。他社の特許権を侵害する可能性が出てきた場合は、知財部門と技術部門、さらには弁理士にも入っていただいて徹底的に対応しています。そういった取り組みを日々着実に行っています。
取材担当者
特許出願の方針をお聞かせください。
バンドー化学
技術者が多大な時間と労力をかけて技術開発したものなのだから、特許出願に繋げようというのが弊社の基本的なスタンスです。重要分野における製品については、技術部門と相談しながら分割出願を行い、多面的にカバーするような特許取得を目指しています。また、市場の大きな国には弊社の武器として特許を持つという方針で、海外出願にも力を注いでいます。
取材担当者
「FlowMetal®」に関連する技術についても、知的財産戦略を積極的に進められているそうですね。
バンドー化学
この技術分野は、日本だけでなく外国にも競合他社が非常に多く、国内外ともに出願件数は相当数にのぼります。このような状況であるにも関わらず、弊社の「FlowMetal®」に関連する特許出願の登録率は95%を超えています。
取材担当者
競合他社がしのぎを削る中、高い登録率を誇る要因はどこにあるのでしょうか。
2013年度から5年間実施した中期計画において出願件数目標を
大幅に増やしたことで、年間3件から年間6件ペースへ
(2017年新規国内5件、2018年も新規国内8件)

バンドー化学
知財部門から他社特許一覧を発信し、技術者はその他社特許を確認した上で開発を行っています。また、技術者と知財担当者、さらには弁理士を交えて従来技術との比較を検討し、入念に話し合いを行った上で出願をしているため、出願特許の登録率が高くなっているものと考えられます。
取材担当者
商標についてはどのようなお考えをお持ちですか。
バンドー化学
「FlowMetal®」は商標権も取得しております。私どもはBtoBの業界ですので、商標は必要ないのではという考え方もあるとは思います。しかし、マーケティングの武器として愛称で呼んでいただこうという狙いから、商標権の取得にも積極的に取り組んでいます。
取材担当者
これまでに知的財産権が侵害された事例はありますか。
バンドー化学
つい最近のことですが、中東で模倣品が出回っていました。
取材担当者
そのような情報はどのようにして入手されるのですか。
バンドー化学
弊社の特長的な活動のひとつとして、海外の拠点に赴任する際、個別に知的財産教育を行っております。特に模倣品に関しては見つけ次第すぐに情報を提供するように周知徹底しており、素早く対応できる体制を整えています。
取材担当者
会社全体として知的財産に関する意識を高くお持ちのようですね。
バンドー化学
弊社はもともと、技術者である阪東直三郎が開発した伝動ベルト「阪東式木綿調帯」の特許取得をきっかけに発展してきた会社です。このような経緯により、創業当時から知的財産への意識が高く、その精神は今日まで続いていると思います。 例えば、自社の国内外の登録特許の権利維持または放棄について、毎年、技術部門が1件ずつ判断を下しています。こうすることで、部署長レベルが自部門の権利を完璧に把握しています。他社ではなかなかない環境ではないでしょうか。このように技術部門と知財部門、さらには弁理士がタッグを組んで、真にビジネスに役立つ知的財産を創造・権利化するという企業風土が醸成されており、弊社の強みに繋がっていると考えています。
取材担当者
今後、弁理士にはどのようなことを望まれますか。
バンドー化学
弁理士の方には私どもに足りない知見を活かして、いつも適切に補完していただいております。特に若手の知財部員は一緒に仕事をさせていただく中で刺激を受け、スキルアップに繋がっています。今、私どもで不十分だと感じているのは、戦略的なブランディングです。弁理士の方にはこれまで以上に事業に踏み込んでいただき、弊社とともにブランド戦略を企画立案していただければと思います。
取材担当者
我々日本弁理士会には、いろんな専門分野に長けた会員がおります。ブランド戦略に関してもぜひ弁理士と協力し、企画立案をしていただければと思います。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。


バンドー化学株式会社
1906年、阪東直三郎氏発明の日本初の伝動ベルト「阪東式木綿調帯」事業化のため、阪東式調帯合資会社として神戸の地に創業。その後、ゴム・プラスチックの加工技術をもとに成長を遂げ、自動車のエアコンやポンプなどを動かす補機駆動ベルト、プリンタ・コピー機に使用される伝動ベルト・ローラー・ブレードなどでトップクラスのシェアを有しています。また、新規事業にも積極的に参入し、金属ナノ粒子をはじめとするナノテクノロジー分野にも活躍の場を広げています。


2019年9月9日掲載