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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
小型製紙装置「レコティオ® 特許:第5253004号 ほか 商標登録:第5342198号
デジタル印刷機「デュープリンター」 意匠登録:第1342900号
断裁機「カッタークリーサ」 特許:第4976750号
権利者:デュプロ精工株式会社 

知的財産として価値のある
優れた発明が生まれるように
開発部門をしっかり
サポートしています。

国内9カ所、海外7カ所に拠点を持ちビジネスを展開しているデュプログループ。その一員として、高品質なデジタル印刷機や周辺機器の開発・製造を行っているのが和歌山に本社を置くデュプロ精工です。今回は「お客様に驚きを提供する製品」をモットーに、独創的な製品を生み出し続ける同社を訪れ、世界初となる小型製紙装置「レコティオ」の開発秘話や知財への取り組みを取材しました。

製品と開発体制

印刷の後工程の技術で独創性を発揮

取材担当者
印刷機と聞くと工場で書籍などを印刷している大きな機械を連想するのですが、御社の主力商品であるデジタル印刷機は大変コンパクトですね。
デュプロ精工
はい。主にオフィスや学校、官公庁などで使われています。
取材担当者
外観はコピー機に似ていますが、違いはどこにあるのでしょうか。
デュプロ精工
皆さんは昔の「ガリ版印刷」をご存知でしょうか。
取材担当者
確か薄い紙に鉄筆でガリガリ削るように文字などを書いてから刷る機械ですよね。子供の頃に学校の職員室で見たことがあります。
デュプロ精工
原紙(版)に鉄筆で孔を空け、孔からインクを通して印刷するので孔版印刷とも呼ばれます。当社の印刷機も原理は孔版印刷ですが、この工程をデジタル化したため現在はデジタル印刷機と呼ばれています。
取材担当者
コピー機とは仕組みが異なるのですね。性能の面ではどうでしょうか。
デュプロ精工
「版」から複製を作る方式なので、コピー機よりも処理が速くなります。例えば一般的なコピー機が1分間に20枚だとすると、同じ時間で100枚以上刷れるのです。短時間で大量のプリントを印刷しないといけない教育機関や、直前まで掲載内容が決まらないお店のチラシ印刷などに重宝されています。

取材担当者
印刷機のほかには、どのような製品を作っているのですか。
デュプロ精工
代表的なものを挙げると、印刷後に紙をカットする断裁機、文書資料を本の体裁にする製本機、一回の紙の通しで印刷・裁断・折り加工を一気に行えるカッタークリーサなどです。
取材担当者
カッタークリーサというのはどんな用途に使われるのでしょうか。
デュプロ精工
印刷したものを一枚ずつ切ったり折ったりできるので、グリーティングカードや名刺作りになどに適しています。また「バースデーカードを5枚だけ作りたい」といった少部数にも対応できます。当社は昔から紙を一枚一枚ピッキングする技術やそれらを加工する技術を磨いてきました。印刷機だけでは他社さんとの差別化が難しいので、印刷の後工程で独自の製品を開発しオリジナリティーを出していったのです。
取材担当者
独創的な製品を生み出すために、どのような開発体制をとられていますか。
デュプロ精工
開発スタッフを大きく3つに分けています。1つ目はお客様の潜在ニーズを読み取り、製品に落とし込む部隊。2つ目はお客様の要望を漏らさず反映したオーダーメイド製品を作る部隊。そして3つ目は、これまでになかった全く新しい製品を生み出し、新規事業につなげる部隊です。

「レコティオ」が誕生するまで

再生紙工場の設備をオフィスに置ける大きさに

取材担当者
御社は世界ではじめてトナー除去装置を搭載した小型の製紙装置「レコティオ」を開発し、大きな注目を集めましたね。
デュプロ精工
レコティオは3番目の部隊から生まれました。使用済みのコピー用紙を溶かし、トナーを取り除いて再び紙にするまでを1台で可能にした製品で、社内に設置すれば、紙のリサイクルを自社だけで完結できます。当社ではこのレコティオを核にして、環境事業という新しい事業も立ち上げました。
取材担当者
レコティオを開発した経緯を教えていただけますか。
デュプロ精工
印刷は紙を大量に消費しますよね。印刷機のメーカーとして、私たちの頭の片隅には「資源を無駄にしているのではないか」という負い目がずっとありました。
取材担当者
近年は森林資源の保護などもとりざたされています。
デュプロ精工
そうなんです。お客様も環境に配慮するようになり、紙の分別処理や再生紙の使用が珍しくなくなりました。それならいっそのこと再生紙工場の設備をダウンサイジングし、自社で再生紙を作れるようにすればお客様も喜んでくださるし、紙の消費を抑えることで私たちも資源の保護に貢献できるのではないか。このような発想から、開発に着手することになったのです。
取材担当者
工場で使う設備を小さくするには相当な苦労があったのではないですか。
デュプロ精工
ゼロから紙を作る場合、まず木材をパルプ(繊維)に加工します。ここではどうしても大きな設備が必要ですが、再生紙の場合木材をパルプにする必要はないのでこの工程は省けることが分りました。また、また再生紙作りで最も重要なインクを抜く工程も、工場では巨大なプールのような設備で行いますが、原理的にはお鍋くらいのサイズでも可能なのです。他の工程も小型化できる目処が立ち、2002年、予備テストに着手しました。
取材担当者
その後、工業高等専門学校と共同開発することになったとか。
デュプロ精工
はい。和歌山の銀行さんが産学官連携の斡旋をしてまして、この装置のお話をしたところ、和歌山高専さんが興味を持ってくれました。
取材担当者
共同開発になったことでメリットはありましたか。
デュプロ精工
再生紙作りではインクの除去に界面活性剤などの薬品が欠かせません。私どもは工学の知識や技術はありますが化学については不慣れなので、高専の先生にその方面のフォローをしていただけ、大変助かりました。また当初開発費は自社で負担していたのですが、産学官連携ということで補助金が交付されました。そして2011年、ようやく完成させることができたのです。
取材担当者
市場の反応はいかがでしたか。
デュプロ精工
発売したのがリーマンショック後だったので、いきなりたくさん売れるとは考えていませんでした。風向きが変わったのは景気が少し上向いてきたことと、近年は機密保持対策としても注目されたことです。
取材担当者
我々弁理士の事務所でも、機密保持のため、書類は専用の業者さんに処分をお願いしています。
デュプロ精工
シュレッダーで細かくしても、記号が残ることはありますよね。外部委託の場合も人目に触れる可能性はあります。レコティオは書類を外部の目にさらすことなく、繊維にまで分解しますので、より確実な機密保持が可能になるのです。

知的財産について

知財部門が開発部門をしっかりサポート

取材担当者
レコティオは90件以上の特許で保護されているとお聞きしています。
デュプロ精工
小型製紙装置は前例のない製品です。先発メーカーとして、押えられる技術はできる限り知的財産権を取得し、囲い込んでおきたいと考えました。
取材担当者
昔から特許取得に積極的だったのでしょうか。
デュプロ精工
実は1998年ごろ、ある企業間の知財紛争に巻き込まれました。その時、当社に特許がなかったため、非常に不利な条件で和解せざるを得なかったのです。その時の苦い経験を教訓に、特許をはじめとする知的財産権の取得に力を注ぐようになりました。
取材担当者
取得の主な目的は侵害の防止ですか。
デュプロ精工
私どもの業界では、お互いに特許技術を確認し合っているので侵害はほとんどありません。ただ、特許を持っていることで他社が製品開発の際にその技術を回避せざるを得ず、コストが余分にかかったり、性能を落とさざるを得なくなる、ということは起こります。相手を牽制し優位なポジションに立つために、特許をしっかり押えておきたいのです。
取材担当者
なるほど。御社は製品開発部門の中に「知的財産室」を設けていますが、それはどのような理由からでしょうか。
デュプロ精工
開発部門がよいアイデアを出せるようサポートするためです。知的財産室のスタッフは、積極的に開発現場を訪れ、意見を聞いたりアドバイスを行ったりします。会議室ではなかなか意見がでてこないものですから。
取材担当者
どんなアドバイスをしているのでしょうか。
デュプロ精工
例えば開発スタッフが「この程度なら特許にしなくてもいいだろう」と考えていても、私どもから見ると非常に価値のある技術だった、ということがままあります。そういう技術を見つけたら、「これはぜひ権利化するべきだ」と助言します。
取材担当者
知的財産の見地から技術の価値を見極めるわけですね。
デュプロ精工
発明の届出書作成もフォローしています。一般には課題や解決手段など、非常に長い記載が必要とされますが、開発現場は忙しくなるとそこまで手がまわりません。そこで、設計者や開発者には要点だけ書いてもらいあとは知財のスタッフがインタビュー形式で詳細を引き出します。
取材担当者
開発担当の方の負担はずいぶん減りますね。
デュプロ精工
「届出書を2~3行書いたら特許ができあがる」などと言われます(笑)骨は折れるのですが、これも知財担当の重要な仕事だと考えて取り組んでいます。

取材担当者
御社は知財教育にも力を入れています。その目的はなんでしょうか。
デュプロ精工
設計者や開発担当者の意識付けです。自分の発想をやみくもに製品に落とし込むのではなく、特許侵害しない技術かどうか、そして縄張りがつくれる…独占排他権を行使できる技術かどうか、常に意識できるようになって欲しいのです。
取材担当者
具体的にはどのような教育体制をとっているのでしょうか。
デュプロ精工
社内研修に加えて、外部の研修制度を利用しています。例えば設計部門のスタッフには、知的財産協会が実施している特許研修を受講してもらいます。6日ほどかけて行う密度の濃い研修です。品質保証部門のスタッフにも研修を受けてもらいますが、こちらは発明協会のセミナーや、特許庁の1日コースなど、もう少し軽めのものを選んでいます。
取材担当者
部門に応じて内容を振り分けているのですね。研修後もフォローはされていますか。
デュプロ精工
本人の自己申告と、確認テストを実施しています。それから、特許に関する重要情報をファイルにして、定期的に開発担当者に回覧します。
取材担当者
特許回覧ですね。開発担当の方が忙しいと、なかなか見てもらえないのではないですか。
デュプロ精工
閲覧した際、ファイル自体ではなく社内ネットワーク上の共有シートに目を通した日を記入してもらうようにしています。これだと知的財産室が閲覧の状況を常に把握できるため、回覧が遅れているようなら「早く回してください」とプッシュできるんです。
取材担当者
開発の方の知財意識を高めるために、様々な角度からサポートしているということがよく分りました。社外の弁理士とはどのようにおつきあいしていますか。
デュプロ精工
社内でも明細書を作成しておりますが、すべての明細書を社内で書くのは現実的ではありません。短期間に多くの出願をしなければならない場合、社外の弁理士さんにお願いしています。但し、出願期限が目前に迫っているときには社内で対応する方が、融通が利くこともあります。また分野によっては社内より社外の弁理士さんにお願いしたほうがよい、というケースもありますし、海外出願の場合は初めから海外に強い社外の弁理士さんに依頼しています。
取材担当者
状況や発明の内容によってうまく使い分けておられるのですね。
デュプロ精工
出願以外でも、知的財産権の抵触について、知財担当者の間で合議をしても結論がでない場合は社外の弁理士さんに抵触鑑定をお願いしています。発明推進協会の公開技報や先使用権のために公証役場を活用することもあります。
取材担当者
ありがとうございます。最後にお聞きしたいのですが、御社から第二のレコティオになるような製品は近々発売されそうでしょうか。
デュプロ精工
企業秘密なので今は申し上げられません(笑)ただ、画期的な製品へのチャレンジには取組んでいます。正直に言えば、空振りも多いです。しかし、100回空振りしてもあきらめない企業こそが、これまでにない製品を生み出せるのではないでしょうか。私どもは、そのように考えています。


デュプロ精工株式会社
1973年、デュプリケーター(複写式の印刷機)のメーカーとして創業。社員の大半がものづくりに携わり、印刷機にとどまらず、紙にまつわるトータルソリューションを実現する製品を多数開発しています。またその製品は国内だけでなく海外でも高く評価され、グループ企業を通じてアジア、アメリカ、ヨーロッパへ販路を拡大しています。


2018年3月5日掲載