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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
® 商標登録:第5607007号 ® 商標登録:第5987758号
照明制御装置及び照明システム 特許第6034967号 など
ゲートウェイ 意匠登録:第1506282号 など
権利者:株式会社遠藤照明 

業界に先駆けて製品化した、
無線で操作する照明システム
「SmartLEDZ」。
知財面の徹底的なサポートにより、
会社の主力事業にまで
成長しました。

1台のタブレットを操作するだけで、屋内のすべての照明を調整できる「Smart LEDZ SYSTEM」。明るく照らすだけでないこの商品は、効率の良い照明計画はもちろん、店舗における顧客誘導や空間演出にまで踏み込んだ画期的なシステムです。今回は、「Smart LEDZ SYSTEM」の開発の経緯とともに、知的財産の出願に関するエピソード、さらには今後の知財戦略などを伺いました。

開発の背景

突然のLEDへの方向転換

大阪ショールーム4階
取材担当者
ショールームではさまざまな照明器具を拝見させていただき、ありがとうございました。今回お話を伺う「Smart LEDZ SYSTEM」や、陳列された商品の色をより良く見せる照明「美彩色シリーズ」をはじめ、様々なコンセプトの照明を手がけられていることが印象的でした。
大阪ショールーム4階
遠藤照明
ありがとうございます。当社は、「人」と「光」の新しい関係を作っていく、というコンセプトに則り、単なる照明器具ではなく、空間を演出し、マネジメントまでできる照明器具を提供しています。
取材担当者
では、創業時のことから教えていただけますでしょうか。
遠藤照明
1967年に、現在の会長が設立した照明器具メーカーが始まりです。当初から家庭用ではなく、店舗や船舶向けの照明器具をつくっていました。
取材担当者
なぜ家庭用の照明器具は手がけられなかったのでしょう。
遠藤照明
当時すでに国内の大手メーカーが家庭用の白熱電球や蛍光灯をつくられていたので、そこは避けてニッチな市場を選んだと聞いています。今も当社は法人向けに限った営業を続けています。
取材担当者
さらに現在は、LED照明に特化されていますよね。
遠藤照明
はい。2009年に、遠藤照明全体が従来の光源からLED照明にシフトしました。
取材担当者
それは時間をかけて、徐々にシフトしていかれたのですか。
遠藤照明
いえ、決めた日からスパッとでした。もう他の光源の開発は完全にストップさせて、LED照明に注力しなさいとの当時の社長(現会長)からの指示だったので(笑)。
取材担当者
すごい決断でしたね。戸惑いはありませんでしたか。
遠藤照明
少なからずありましたね。その日まで毎日考えていた光源のことを、すべて忘れるわけですから。当社ではそれまでも一応、カタログが100ページあったら1ページ分くらいの割合でLEDを手がけてはいたのですが、そこからのスタートは大きな変革でした。
取材担当者
思い切った方向転換に踏み切ったきっかけを教えてください。
遠藤照明
LEDという新たな光源がこれから間違いなく伸びるという予測が当然、前提でした。その上で、まず試作品をつくり、大手外食チェーンに使っていただいたのです。今と比べてまだ光りの色の質は低かったし、価格も高かったのですが、その際にいただいた評価を総合的に判断し、今後メイン商材として扱っていけると判断しました。
取材担当者
貴社のLED照明へのシフトチェンジは、業界的には早い方だったのでしょうか。
遠藤照明
最も早かったと思います。「LEDZ(レッズ・ワン)」というブランド名で、約30ページのLED照明専門カタログを出したのが業界で最初でしたから。
取材担当者
突然のLED照明への切り替え、そして商品化にはさまざまなご苦労がありましたよね。
遠藤照明
実は、LED照明を開発して売り出すだけではなく、他の一般的な光源と同じ価格帯にまで下げて提供することもミッションとして与えられていました。そして、そのために必要な調査研究を1年以内に終えるようにと。
取材担当者
それは大変ですね。
遠藤照明
はい、本当に大変でした(笑)。でも、従来光源の開発を止めていたので、会社を存続させるには短期間でつくらざるを得ない状況でした。
取材担当者
ある意味「追いつめられた状況」が、良い意味でのプレッシャーになっていたのですね。
遠藤照明
そうですね。おかげで、結果的には1年かからずに、他の光源と同じ価格でLED照明を提供できるようになりました。当社の特色として、企画-開発間、開発-営業間等の部署をまたいだ人と人の交流がとても活発で風通しがよいというのがあり、これが強みとなったのだと思います。

「Smart LEDZ SYSTEM」の知的財産について

関係者全員で洗い出した知的財産の可能性

広範囲に設置された複数の照明を一元管理
タブレットから無線で一つひとつの照明を細かく制御もできる
取材担当者
貴社が今、最も注力されている「Smart LEDZ SYSTEM(スマート・レッズシステム)」について教えてください。
遠藤照明
当社では「照明空間マネジメントシステム」と謳っています。建物内に設置された複数の照明を、部屋や階が違っても同時に制御できる商品です。もちろん違う建物でも一元管理ができます。
取材担当者
照明1台ごとの制御もできると伺いました。
遠藤照明
例えば、工場内で稼働しているラインだけを照らしたり、オフィスに外光が入る時間帯は明るいフロアだけ照明を落としたり、あるいは店舗内でアピールしたい商品をしっかり照らして消費者を誘導したりすることが可能です。
取材担当者
業種や業態に合わせた効率の良い照明設計が可能になる訳ですね。どのような方法で制御するのでしょうか。
遠藤照明
1台のタブレットで、すべてまかなうことができます。
取材担当者
タブレットの操作だけで、そこまで照明の調整が可能になると、店舗やオフィス管理の担当者にはメリットが大きいですね。
遠藤照明
さらにすべて無線なので、既存の照明器具と取り替える際に制御用の配線を設置する必要がありません。
   
   
   
取り替えに必要な機器は主に3種類
取材担当者
開発はいつ頃からスタートしたのでしょうか。
遠藤照明
2012年です。商品化にこぎつけ、初めてお客様の施設に設置したのが2013年。第一号は、大阪の大手ドラッグストアでした。
取材担当者
その時には、すでにいくつかの特許や商標などを出願されていたのでしょうか。
遠藤照明
最終的には出願しましたが、「Smart LEDZ SYSTEM」の開発担当者は知財経験が浅いメンバーが多かったこともあり、リリース前に知的財産になり得る箇所を見つけて出願する流れをイメージしていませんでした。
取材担当者
開発担当者として、早く完成させ、早くリリースすることに集中されていたのですね。
遠藤照明
ですから知的財産部の者が「それではダメだよ」と、完成前に出願することの重要性を伝え、出願できそうな新しい技術はないかと一緒に動き出したのです。
取材担当者
具体的には、どのような方法で知的財産の可能性を探されたのでしょうか。
遠藤照明
まずは定期的に知的財産部と開発部の間で行っているヒアリングの場に、「Smart LEDZ SYSTEM」の中で出願できそうな箇所を一覧にして持ってきてもらいました。その後、開発担当者全員と、提携している弁理士の先生にもお越しいただき、全員で洗い出しと選択を行いました。
取材担当者
一挙に全員が集まって取捨選択し、出願項目の決定までを一気に行ったのですね。


遠藤照明
丸一日くらいかかった大変な作業でしたが、リリース前に1日でも早く、色々な項目で出願したかったのでそうした方法をとりました。
取材担当者
開発担当者の方々も、知的財産に関する経験が深まったのではないでしょうか。
遠藤照明
開発担当者のひとりは「これが知的財産として出願できるんですね」と、新鮮な驚きを隠せずにいましたね。「客観的な指摘や話を聞いて、初めて知的財産の重要性が理解できました」とも語っていました。特に「Smart LEDZ SYSTEM」は、コンピュータによる制御システムや無線システム、あるいはタブレットといった、当社にとって未知の分野の機構が多く組み込まれていたので、全員で知的財産になり得る箇所を洗い出した作業は非常に有意義だったと思います。
取材担当者
ちなみに、貴社の出願はこれまで意匠がメインでしたが、ここ数年は特許が増えている印象です。これもLEDへのシフトチェンジの影響でしょうか。
遠藤照明
おっしゃる通りです。元々、私たちは電球や蛍光灯を仕入れた後、自社の照明器具部品とアッセンブリして販売していました。しかし今では、LEDのパッケージ(LEDとして機能する最小単位の部品)を仕入れた後、社内でモジュール化(パッケージを配列し制御回路を搭載したユニット)するようになったのです。
取材担当者
つまり、LEDランプ自体をつくるようになったということですか。
遠藤照明
そうです。そしてLED照明の多くの技術要素はモジュール化する段階で必要になってくるのです。例えば、LEDパッケージは数ミリ程度の小さなチップで、それが複数並んで光源になる訳ですが、LED照明の光は決してつぶつぶには見えませんよね?そういった部分にさまざまな技術が使われているのです。
取材担当者
LED自体は公知の物ですから、その中で特許性を見出すとなると、そういった部分になってくるのですね。
遠藤照明
他にも、LED照明は放熱機構や電源が加わるため軽くする必要があるのですが、そういった部分でも技術者は苦労しています。そのような部分にも気を配り、アンテナを張っていれば知的財産のアイデアの源はまだまだあると考えています。

社内外との連携体制

連携の良さがスピーディな出願の推進力に

取材担当者
新商品の開発と併行して行われた出願の準備は、スピードが重要だったと思います。部署間や弁理士との連携はいかがでしたか?
遠藤照明
本当に時間がない中、知的財産部に開発部、そして弁理士の先生も本当に良く対応してくださいました。おかげで、大規模な商品の出願も短時間でできました。
取材担当者
その一番の要因を教えてください。
遠藤照明
ひと言でいえば、チームワークの良さだと思います。当社は割とコンパクトな会社で、部署間の連携がうまくいっているんですね。その風通しの良さが、短時間で複雑な作業を擁するミッションにおいて、大きな推進力になったことは間違いありません。
取材担当者
社内の部署間だけでなく、ご依頼されている弁理士とも良好な関係ができていた訳ですね。
遠藤照明
イレギュラーな形での打合せにも応じていただき、助かりました。
取材担当者
元々、特許や商標などの出願に関して社内で決まった手順などはあったのでしょうか。
遠藤照明
普段は、雑談の延長のような形で開発部の方から問合せがあったり、逆に知的財産部の者が開発部の面白い話を耳にして「もっと教えてよ」とヒアリングしたり、あるいは合同の会議の中で自然とそういう話題になったり…つまり決まったフローは実はまだ定まっていないのです。
取材担当者
では今後、体制を整備されていくお考えですか。
遠藤照明
そうですね。この先も風通しの良さだけで乗り切れるとは思いませんので、連携強化につながる体制をしっかり整えたいと思っています。
取材担当者
では、特許出願への意欲や意識向上をサポートするような社内制度はありますか。
遠藤照明
2016年に、発明報奨制度ができました。出願登録に対して報奨金が支払われます。
取材担当者
制度ができたきっかけを教えてください。
遠藤照明
「いるよね」とはずっと言っていたのですが、2015年に職務発明制度の法改正があったことを機に具体的に整えられました。やはり、知的財産に関わる社員のモチベーションは大いに上がりましたね。それから、知的財産に関する研修もスタートさせています。
取材担当者
それは全社員に向けた研修ですか。
遠藤照明
いえ、今はまだ開発部のメンバーに限った研修です。いずれは、全社的なレベルの研修にしたいと思っているので、こちらもこれから本格的に整えていきたいと考えています。
海外での知的財産戦略について

アジアでは意匠や商標が中心

取材担当者
貴社は海外にも拠点が複数があり、積極的に海外進出をされています。海外における知的財産の考え方をお聞かせください。
遠藤照明
海外では意匠や商標を重視しています。一番の問題は言葉の壁で、英語や中国語ならわかりますが、さすがにタイ語などは公報を読んでいてもわからないことが多くて(笑)。
取材担当者
それで見た目でわかりやすい意匠や商標に重心を置かれたのですね。出願している地域は、やはりアジアが多いのでしょうか。
遠藤照明
はい。東南アジアはこれからも建物が増えていく地域なので、LED照明の販売とともに、意匠や商標を中心とした出願を考えています。
取材担当者
そうなると、現地の代理人とのやり取りも頻繁になることが予想されますが、その辺りを現在の弁理士と具体的に相談されていますか。
遠藤照明
海外についても現在の弁理士の先生にすべてお任せしています。
取材担当者
それは助かりますね。では海外で知的財産をどう展開していくか、弁理士の腕の見せ所ですね。既に何か計画を進められているのですか。
遠藤照明
いえ、海外での知的財産に関しては、これから本腰を入れてという感じです。計画というより悩みの種は、海外での知的財産活動に関する料金の高さですね。何とかならないものかと(笑)。これは弁理士の先生に相談しても仕方のない部分ですが。
取材担当者
おっしゃる通り、外国の料金は私どもも何ともできないところです(笑)。しかし、だからといって海外で何も権利がないと、先に権利行使されてしまったり、逆に真似をされても武器が何もありません。
遠藤照明
それは避けたいところですね。
取材担当者
ですので、権利をとるべき箇所と避けるべき箇所をしっかり議論していただくことが肝心かと思います。もしその際、分からないことなどがあれば、我々弁理士をお呼びいただき、活用していただければと思います。
遠藤照明
そうですね。これからも何かと力を貸していただければと思います。
取材担当者
本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

株式会社遠藤照明
1967年、大阪市城東区で創業。以来、法人向け照明器具メーカーとして、さまざまな照明器具を自社ブランドとして発表し続けてきました。そしてLED照明の黎明期には、真っ先に「LEDZ」ブランドを立ち上げ、LED照明分野に着手。『「人」と「光」の新しい関係を作っていく』という理念のもと、人を幸せにする光にチャレンジし続けている企業です。


2018年6月11日掲載