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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
『ブルーレット®』『熱さまシート® 商標登録:(ブルーレット)第5026160号ほか (熱さまシート)第3201859号ほか
権利者:小林製薬株式会社 

“あったらいいな”
をカタチにする
当社の製品戦略には
分りやすく覚えやすい
ネーミングが
必要不可欠です。

水洗トイレ用芳香洗浄剤の先駆け「ブルーレット」や額に貼り付けるアイデアで大ヒットしている「熱さまシート」など、 画期的な製品を開発し続ける小林製薬。主婦のハートをがっちり掴む秘密は、かゆいところに手が届く利便性と、 1度聞いたら忘れないネーミングにありそうです。今回は、小林製薬・知的財産グループの皆さんに、 ユニークな製品やネーミングが生まれる舞台裏を、知財への取組も交えてお聞きしました。

製品開発へのこだわり

これまでにない製品で新しい市場を創造

取材担当者
小林製薬さんといえば、コマーシャルなどでおなじみの「“あったらいいな”をカタチにする」というフレーズが大変印象的です。 この言葉に込められた想いを、詳しくお話いただけますか。
小林製薬
当社はお客様の潜在的なニーズをいち早く発見し、製品化することに力を注いでいます。 その姿勢を分りやすく表現したのが「“あったらいいな”をカタチにする」というフレーズなのです。 潜在ニーズというのは、お客様自身もまだはっきり気付いていない利便性や快適性です。 それを他社に先駆けて見つけ出し、いままで市場になかった製品に落とし込むわけですから簡単ではありません。 全社員が一丸となって、それこそ脳が汗をかくくらい考え抜いてアイデアを出します。
取材担当者
開発担当者ではない方もアイデアを出すのですか。
小林製薬
はい、当社では社内ネットワークを通して新製品アイデアや社内の改善案を募る「社員提案制度」を実施し、社員全員にアイデアを出してもらっています。

取材担当者
なるほど、会社を挙げて“あったらいいな”を探している訳ですね。
小林製薬
製品化の可能性がありそうなアイデアは「アイデア会議」で議論することがあります。 これは開発担当者が、会社Topに対し新製品アイデアをプレゼンテーションする会議で、 アイデアがお客様に新しい価値を生み出しているかを徹底的に議論します。
取材担当者
“あったらいいな”が実際にカタチになるまでには厳しいハードルを乗り越えないといけないわけですね。 なぜ御社はそこまで新製品開発に力を入れているのでしょうか。
小林製薬
当社は、まだ他社が参入しておらず市場になっていないニッチ(隙間)を発見し、そこにこれまでなかった製品を投入することで、 自ら市場を創造するニッチ戦略をとっています。新製品開発は、当社の戦略の幹をなす大変重要なファクターなのです。

取材担当者
ニッチ戦略の具体例を教えていただけますか。
小林製薬
例えば水洗トイレのタンクに吊り下げる芳香洗浄剤「ブルーレット」は、まだトイレの水洗化率が低い1969年に発売されました。 今後、水洗化が進み、需要が増えることを見越して投入し、新しい市場を作ることに成功したのです。 しかしここで終わりではありません。1986年にはマンションのトイレなどで手洗い場付きのタンクが増えてきたことに着目し、 手洗い場に置く「ブルーレットおくだけ」を発売。また“吊り下げるのが面倒”というお客様の声に対応するべく、 薬剤をタンクに投げ入れる「ブルーレットドボン」を発売しました。 このように、新市場を創造し、なおかつ需要を拡大する製品を次々に投入することで市場を広げ、シェアを維持し続けることが、 当社のビジネスモデルなのです。
知的財産への取組

商標登録の可否を事前にしっかりと調査

取材担当者
「ブルーレットおくだけ」も「ブルーレットドボン」も、その商品名によって、商品のコンセプトを消費者に効果的に伝え、記憶に残りやすく、小林製薬の商品名として理解しやすくかつ商標登録もできるものになるよう工夫されていますね。 御社の製品では他にも「熱さまシート」「のどぬ〜る」など個性的なネーミングが多く、商品名(商標)に強いこだわりを感じます。
小林製薬
当社では、広告から販売促進にいたるまで、徹底して“わかりやすさ”を追求しています。 今まで市場に無かった製品を発売する以上、まずどんな製品かを理解してもらうことが、 マーケティングの最重要課題だからです。特にネーミングは、コマーシャルや店頭を通してお客様と直に触れるもの。 名前を見たり聴いたりしただけで製品の特長がストレートにわかり、なおかつ印象に残るようこだわって考えています。

取材担当者
商品名はどなたが考えるのですか。
小林製薬
さまざまなケースがあります。マーケティングのスタッフからネーミング案が出されることもありますし、 開発段階で関係者が使っていた仮称が商品名になることもあります。 「熱さまシート」も、熱が出た時におでこに貼るタイプの冷却シート、という開発テーマの段階で、 “頭ひんやり”や“熱さま”など、商品特長を端的に表した呼び名が出てきていました。 そこから最終的に「熱さまシート」に決まったと記憶しています。 どちらにしても、社員が考えると「あ、これ、小林製薬らしいな」という名前が自然に出てきます(笑)。 みんな当社の事業の方向性を十分分っているからでしょう。

取材担当者
ではスムーズに決まりそうですね。
小林製薬
そう簡単ではありません。当社にとってネーミングは、商品のセールスを左右する重要な要素です。 本当にこの名前でいいのか、マーケティング担当者、開発担当者、経営陣などの意見を踏まえ、吟味を重ねた末に決定します。 また例え社内的に評価が高かったとしても、商標登録できなければ意味がありません。 そのために、開発段階から我々知的財産グループのスタッフが参加し、登録可能かどうか判断します。

取材担当者
事前調査をするわけですか。
小林製薬
そうです。商標登録できるネーミングかどうか、また他社で既に類似の商品名が使われていないか、この2つを調べます。 調査結果は○△×式で「これは大丈夫」「これは微妙かもしれない」「これは無理」というふうに判断します。 担当者の思い入れが強いネーミングの場合は、我々の判定が「△」でも、 弁理士の先生方と詳細に検討した上で、使用の安全性が確認された場合、その商標を採用し、商標出願も行い、確実に商標登録に導いております。 ただし、他社の登録商標と明らかに同一・類似の場合はNGですね。 商標登録できないだけでなく、発売後に他社から申し入れを受けるなどして、ネーミングを変更せざるを得ない状況になりかねないからです。

取材担当者
ネーミングが先に決まり、いざ調査したらすでに似たものを他社に登録されていた…しかし社長がその製品名で出せ、 というので困っている……そういうケースを何度か耳にしたことがあります。 御社の場合は登録前にしっかりチェックをするので、そのような綱渡りは起こらないわけですね。
小林製薬
はい。万全を期するために、開発の初期の段階で社内でまず調査し、なおかつ外部の弁理士事務所さんにも調査をしてもらうダブルチェック体制を取っています。 商品名はセールスのための強力な武器ですから、当社の財産として、きちんと商標登録できることが基本です。 我々知的財産グループの責任は大変重いと感じています。
弁理士への要望

当社の知財戦略の一歩先を行く提案が欲しい

取材担当者
御社は一つの商品について、ネーミング、パッケージ、キャラクターは言うに及ばず、 商品パッッケージや広告に使用する特徴的なコピーについても多数商標登録されていますね。 例えば熱さまシートですと、「ひんやり」というコピーまで登録されています。 「おくだけ」など、難易度の高そうな商標も商標権を取得されていて、 知財に対し『攻め』の姿勢を感じます。
小林製薬
世に出した商品はブランドとして長く育てたいと考えています。 そのため、権利化できるものは積極的に権利を取得する、というのが当社の基本的なスタンスです。 これはぜひとも取りたい、と考えた場合は、事前調査をしっかりやり、戦略を立てて取りに行きます。

取材担当者
そうなると、外部の弁理士さんとのタッグも重要になってくるのではないですか。
小林製薬
知的財産は、当社にとって文字通り“財産”です。そのために社内で事前調査も重ねますし、登録のための戦略も練ります。 なので外部の弁理士さんには、受け身ではなく、我々が考えた戦略の一歩先を行くようなアドバイスや提案を期待しています。

取材担当者
お客様の製品や事業、そして知財戦略をしっかり理解し、積極的にアドバイスを求められるような存在になることは、 我々弁理士の目標でもあります。今おっしゃられた期待にしっかり応えられるよう、私たちも自己研鑽を怠らず、 さらにスキルアップしていきたいと思います。最後になりましたが御社は海外展開に力を入れていると聴いています。 海外でのブランド戦略を教えていただけますか。
小林製薬
海外では、米国、欧州、中国、東南アジアを中心に、カイロ、額用冷却シート、芳香剤、OTC医薬品などを展開しています。 特に使い捨てカイロの売れ行きが好調で、アメリカでは「HOT HANDS」、中国では「暖宝宝(ヌアンパオパオ)」という商品名(登録商標)で販売しています。 “宝宝”は中国語で赤ちゃんや子供に対する愛称です。暖かくて赤ちゃんみたいに可愛らしいアイテム、という意味を込めて名付けました。

取材担当者
外国語であるにもかかわらず、小林製薬さんらしいセンスを感じるネーミングですね。
小林製薬
世界共通のブランド名を作って浸透させるという考え方もありますが、当社はそれにこだわらない戦略をとっています。 海外でも、お客様がネーミングを見たり聞いたりしただけでどんな商品かすぐ理解できることを目指しているのです。 そのため発売国の文化や嗜好を考慮し、国ごとに名称を変えて販売しています。 一見バラバラに思えるかもしれませんが、当社のアイデンティティーともいえる「あったらいいな」を「分りやすく伝える」戦略は、 海の向こう側でも変わることなく貫かれているのです。

小林製薬株式会社
1886年、合名会社小林盛大堂として創業。1956年小林製薬株式会社と改め現在に至ります。 経営理念「絶えざる創造と革新によって新しいものを求め続け、人と社会に素晴らしい『快』を提供する」に基づき、 医薬品、オーラルケア用品、芳香消臭剤、衛生雑貨品、スキンケア用品、家庭雑貨品、食品など、幅広い分野でお客様ニーズを満たす新製品やサービスを開発しています。