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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
UCCフードマッチングシステム 特許出願中
TTND製法 特許:第3057026号
光サイフォン 特許:第4137312号
権利者:UCC上島珈琲株式会社 

発明者自身が
知財の知識を持っているため、
効率よく知財の出願や管理を
行うことができます。

コーヒー製品の製造・販売にとどまらず、コーヒー文化の普及にも力を注いでいるレギュラーコーヒーのリーディングカンパニー、UCC上島珈琲。研究開発の分野でも、缶コーヒー向け抽出技術である「TTND製法」をはじめ多数の特許を取得しています。今回は2016年に話題となった技術「UCCフードマッチングシステム」を取材するべく、同社の研究拠点であるUCCイノベーションセンターを訪問。開発の背景や特許への取り組みについて詳しくお話しいただきました。

UCCの開発体制

他部門と連携しコーヒーの製造技術や新製品の開発に取り組む

取材担当者
実は私、缶コーヒーのヘビーユーザーなのですが、世界で初めて缶コーヒーを開発したのが御社だと聞いて好奇心をかき立てられました。どのような経緯でコーヒーの容器に缶を使うという発想が生まれたのですか。
UCC
創業者の上島忠雄が営業で全国を飛び回っていた頃の話です。ある日上島は営業の途中、駅のキヨスクで瓶入りのコーヒー牛乳を買ってひと口飲みました。ところが列車の発車ベルが鳴り、まだ中身がほとんど残っているのに売店へ瓶を返し列車に飛び乗らなければならなくなったのです。瓶は割れる、重い、返却が必要ということから列車に持ち込むことができなかったためです。列車に乗ってからも飲み残したコーヒーが気になり“いつでもどこでも手軽に飲めて常温流通できるようなコーヒーはできないか?”と考え、そこから瓶を缶にするというアイデアが生まれたと聞いています。
取材担当者
それはいつ頃だったのでしょうか。
UCC
1960年代後半です。試作ではコーヒーのタンニンと鉄分が結びついて墨汁のように真っ黒になったそうです。そこで缶の内側へのコーティング技術を開発するなど様々な試行錯誤を経て、1969年にようやく発売することができました。
取材担当者
その頃にはすでに研究開発の部門があったのですか。
UCC
いえ、まだです。缶コーヒーの発売から7年後の1976年に、当イノベーションセンターのルーツである「中央研究室」が立ち上がりました。当初は製品の品質管理がメインでしたが、やがて本格的に研究開発に取り組むようになり、名称も中央研究室から「R&Dセンター」へ、さらに2014年に「イノベーションセンター」へと変更したのです。現在はマーケティング部門や製造部門をはじめ他部門と密接に連携しながら、コーヒーの未知の成分の探索や応用技術の開発、レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー・コーヒー飲料製品の開発に取り組んでいます。
取材担当者
R&Dセンターからイノベーションセンターへ…。よりイノベーティブ(革新的)な研究組織に進化したわけですね。
UCC
はい、そのような方向を目指しています。社内では「早く次のメシの種を探せ」とハッパをかけられていますが(笑)
UCCフードマッチングシステムとは

コーヒーと食べ物の最適な組み合わせを数値化

取材担当者
御社が2016年に出願した「UCCフードマッチングシステム」についてお聞きしたいと思います。新聞やテレビなどにも取り上げられ、話題になりましたが、どういったシステムなのか詳しく教えていただけますか。
UCC
ひとことで言うと、コーヒーの味と食品の味を数値化し、その相性をレーダーチャートで視覚的に分かりやすく表示するシステムです。「この食べ物にはこのコーヒーが合いますよ」といった組み合わせが、一目瞭然で理解してもらえます。
取材担当者
コーヒーに合う食べ物と言えば、パンやケーキが定番ですが。
UCC
実はこのシステムの開発の背景には「コーヒーの新たな飲み方を提案する」というテーマがありまして。コーヒーをワインのようにさまざまな料理と合わせる、という新しい飲用スタイルをプレゼンテーションすることで、これまでにないマーケットを開拓できるのではないか、と考えたのです。
取材担当者
ワインの場合は白ワインは魚料理、赤ワインなら肉料理というように、いわゆる料理とのマリアージュが数多くあって、それが飲み方の幅を拡げています。コーヒーもパンやケーキにとどまらず、もっと幅広い組み合わせができる、ということですね。
UCC
そうです。UCCグループには創業以来培ってきたコーヒーに関する知識と技術の蓄積があり、フードとのマリアージュ(マッチング)についても膨大な数のノウハウを持っています。そして当社はこれまでも培ったノウハウを、UCCグループが運営するコーヒーの専門教育機関「コーヒーアカデミー」を通じて生徒の皆さんに提供してきました。例えば浅煎りのコーヒーは酸味があってスッキリとしているから、こんな食べ物と合いますよ、というような具合です。
取材担当者
なるほど、コーヒーに対する深い造詣がバックボーンにあるからこそ生まれたシステムなのですね。
UCC
はい。コーヒーと食べ物の最適な組み合わせを、客観的な数値データとして提示できれば、感覚だけで説明するよりはるかに説得力が増すのではないか…。そのような発想から、分析装置を使った独自のシステム開発を進めていきました。
取材担当者
「味」というのは非常に主観的なものですよね。どうやって数値化するのですか。
UCC
分析装置は、九州大学の都甲 潔 教授が開発した「味覚センサー」がベースになっています。味覚を「酸味」「甘味」「苦味」などの項目に分け、それぞれの項目を数値化することで、主観的な味覚を客観的なデータとして分析したり提示することができるのです。そこに当社のコーヒー鑑定士の官能評価データを加え、熟練の鑑定士の舌を再現した、当社独自のセンサーにカスタマイズしています。
取材担当者
その分析装置を使ってコーヒーと食品の味をチャートにし、比べるわけですね。具体的にはどんな食べ物がコーヒーと相性がよいのですか。
UCC
一例をあげると、チャーハンや塩鮭などはよく合います。
取材担当者
うーん、普通は思いつかない組み合わせです(笑)。もちろんマッチングすることが、このシステムで証明されたわけですよね。
UCC
例えばチャーハンとコーヒーの場合、チャートを見ると「苦味」「酸味」「旨味」など各項目のバランスが非常によく似ています。このような場合は、食べたときに2つの味が舌の上で重なり合い、広がりを与えてくれるのです。また「塩味」の強い塩鮭と「酸味」の強いコーヒーは、お互いの足りない部分を補い合ってくれるので、これも相性がいい組み合わせだといえます。
取材担当者
なるほど、確かにチャートだとよく分かります。
UCC
開発では、何種類ものコーヒーを並べ、鮭をひと口食べてはコーヒーをひと口飲んで…という地道な作業を繰り返しました。どういった特長を持ったもの同士がマッチングするのか、実食と分析装置の数値を見比べながら、法則性を割り出していったのです。
取材担当者
フードマッチングシステムに対する社外の評価はいかがですか。
UCC
展示会などでは大変よい反応をいただいています。そのときも、チャーハンや塩鮭を試してもらいました。食べていただく前にデータで説明できますから、舌だけでなく頭でも納得してもらえます。チャーハンとコーヒーというのはなかなか理解いただけないと思うのですが、このシステムが後押ししてくれるおかげで、非常にスムーズに受け入れてもらえることが分かりました。
取材担当者
フードマッチングシステムはどのように活用していますか。
UCC
まずはコーヒーを取り扱う飲食店様に対し、コーヒーを提案する際の支援ツールとして使っています。例えばそのお店で出している食事を分析すれば「一番合うコーヒーの種類はこれですよ」と提示することができます。また当社の営業が使っているタブレット端末には、フードマッチングシステムで分析した料理とコーヒーの組み合わせがデータベース化されて入っています。商談の際に、データベース中の食べ物が話題に上がれば、最適なコーヒーを即座に提示することも可能です。
知的財産への取り組み

研究開発部門で特許の出願~管理を実施

取材担当者
フードマッチングシステムは特許出願中とお聞きしています。特許の対象となる技術について、現時点で可能な範囲でお教えください。
UCC
ひとつは分析方法に関してです。味覚センサーの分析値から、相性を判断するための基準や、データの数値換算方法。もうひとつはそのデータベースから、食品とコーヒーの相性を閲覧・検索するシステムです。
取材担当者
特許の出願で苦労されたことはありますか。
UCC
分析方法やシステムといった概念での出願は当社としても経験に乏しく、明細書の書き方、主張できる権利の範囲も見当がつきませんでした。担当弁理士の経験や知識に基づくアドバイス、特許情報の収集力に助けられました。
取材担当者
よい弁理士とおつきあいされているのですね。食品分野が得意な方ですか。
UCC
いえ、工業方面に強い方です。我々は分析ノウハウの特許化しか視野になかったのですが、「将来的な運用を考えるとデータベースや、そのデータをスマートフォンなどでユーザーに提供するアプリなども範囲に入れてはどうか」とアドバイスされまして、なるほどと思いました。

取材担当者
特許の出願や管理もイノベーションセンターで行っているのですか。
UCC
営業の方で出す場合もありますが大多数は当センターで出願から管理までやっています。研究をやっている人間が特許も理解し管理して行こう、という方針なのです。
取材担当者
それは珍しいですね。では弁理士とのやりとりなども。
TTND製法が用いられている
UCCBLACK無糖
UCC
我々が行います。そのためにイノベーションセンターでは積極的に知的財産管理技能検定の受験を勧めています。特許の制度を知っていることで、弁理士さんの意図をより正確に理解できますから。当社による出願の特許取得率が9割を超えているのも、発明者自身が知財に関する豊富な知識を持っているため、効率がよいからだと考えています。
取材担当者
開発者である皆さんが知財に対し高い意識を持っているというのは素晴らしいですね。御社の特許取得技術をリストでいくつか見せてもらいましたが、低温・中温・高温の3つの異なる温度帯でドリップする『TTND製法』や、火を使わずハロゲンランプでコーヒーを抽出する『光サイフォン』など、オリジナリティーのあるものがたくさんあるようにお見受けしました。
UCC
ありがとうございます。イノベーションセンターでは良いアイデアが出て、新技術としてまとまりそうな場合は、積極的に特許を取りにいく方針です。数多く出願すれば、それだけ質のよい特許もおのずと増えます。よい特許が揃っているという状態になってはじめて、独占、ライセンス供与、クロスライセンス、開放など、有効な活用の選択肢が出てくるのではないかと考えています。
取材担当者
本日お話いただいたフードマッチングシステムも、非常に可能性を感じさせる技術ですね。
UCC
現在、日本のコーヒー消費量は3年連続で過去最高を更新しており、日本人はこれまででもっともたくさんコーヒーを飲んでいる、と言えます。コンビニエンスストアで淹れたてのコーヒーを飲むスタイルが定着しましたし、近年は回転寿司のチェーン店などもコーヒーに力を入れ始めています。それらを考え合わせると、チャーハンにコーヒー、という組み合わせも決して突飛ではなくなってくると思います。フードマッチングシステムを上手に活用すれば、きっと新しい飲用シーンが開拓できる。そう私たちは信じています。
ハロゲンランプを熱源にした光サイフォン
取材担当者
それこそお茶のように、食後ではなく食事の合間に飲むものとして、コーヒーの出番がますます増えていくかもしれませんね。本日はお忙しいなか、興味深いお話をありがとうございました。

UCC上島珈琲株式会社
1933年創業。以来、80年を超える歴史の中で、生産国でのコーヒー栽培から、原料調達、研究開発、焙煎加工、販売、文化、品質保証に至る「カップから農園まで」あらゆる段階でコーヒー事業を展開しています。UCCは様々な生活シーンの中で、お客様がこれまで体験したことのない新しい価値(味・飲み方・楽しみ方・情報等)を提供していきます。


2016年12月9日掲載