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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
『「世界最高を、お届けしたい。」®』
『スペース・ファンタジー・ザ・ライド/Space Fantasy The Ride』
『ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド/HOLLYWOOD DREAM THE RIDE』
商標登録: (「世界最高を、お届けしたい。」)第5555355号、 (スペース・ファンタジー・ザ・ライド/Space Fantasy The Ride)第5316062号、 (ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド/HOLLYWOOD DREAM THE RIDE)第5028903号
権利者:株式会社ユー・エス・ジェイ 

ゲストの満足度を高めるため、
よりよいライセンス財産を
柔軟かつ積極的に取り入れていく、
それがユニバーサル・スタジオ・ジャパン®の姿勢です。


2014年夏、映画「ハリー・ポッター™」をテーマにしたエリアがオープンし、過去最高の入場者数を記録するなど、 今話題のユニバーサル・スタジオ・ジャパン®。 「世界最高を、お届けしたい。」という理念のもと、パークではさまざまなコンテンツが展開されています。 今回は子どもから大人まで魅了するユニバーサル・スタジオ・ジャパン®を運営する株式会社ユー・エス・ジェイをお訪ねし、パークの人気を生み出すライセンス契約と知的財産権の運用についてお話しをお伺いしました。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン®の知的財産権

ライセンシーとしてさまざまな知的財産を運用

取材担当者
先ほどパークを案内していただきましたが、平日にも関わらず大勢のゲストが訪れ、一人ひとりの笑顔が輝いていました。 日夜、さまざまなアトラクションやショーがくり広げられていますけど、知的財産権の対象としてはどのようなものがあるのでしょうか。
ユー・エス・ジェイ
私どもの使用しているコンテンツとしては、ライセンス財産(ライセンサー(ライセンスを与える者)からライセンスを受けているコンテンツ)と当社の独自開発財産にわかれます。 ライセンス財産でいえば、米国のユニバーサルをはじめ、ワーナー・ブラザーズ、セサミワークショップなど数々のライセンサーとライセンス契約を交わしているものになります。 それらのライセンス契約におけるライセンスの対象はキャラクターなどの著作権、商標権がほぼすべてです。 独自開発財産に関しては、当社で開発した「スペース・ファンタジー・ザ・ライド」や「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」といったアトラクションがあり、こちらは私どもが自ら商標権を得ています。 さらに、「スペース・ファンタジー・ザ・ライド」に伴うオリジナルキャラクター「サンフェアリー」等も、私たちに著作権があるほか、これらの商標権も保有しております。

取材担当者
「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」といえば、後ろ向きに走行する「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド ~バックドロップ~」でも話題になりましたよね。 ところで季節ごとにさまざまなイベントやショー、物販なども展開されていますが、それらのネーミングは商標登録出願をされていないのですか。
ユー・エス・ジェイ
恒常的に設置されるアトラクションやショーだけでなく、季節ごとのイベントやショー、物販商品なども重要なものは商標登録するようにしています。

取材担当者
商標登録において大変なことなどはありますか。
ユー・エス・ジェイ
コンテンツのライセンス契約では、普通はアサインバックの規定(当社で出願・登録をした商標でもライセンス財産に基づくものは、ライセンサーの財産になるという規定)があるので、当社で開発した面白い商標をライセンサーに譲渡しなければならないことがあります。 例えば、カップ麺で「すぱいだぁ麺!!」という自分たちでいうのもなんですけど傑作商品がありまして、これは私どもでネーミングを考えて商標登録も済ませています。 しかし、アサインバックの規定があるためにスパイダーマンのライセンサーである、マーベル・キャラクターズ・インコーポレーテッドに譲渡いたしました。 このあたりが、ライセンシー(ライセンスを受ける者)として少々残念なところではあります。

取材担当者
せっかく商標登録をしても、そのようなことがあるんですね。 特許権、意匠権に関しては取得されていますか。
ユー・エス・ジェイ
自社で特許出願を行うことはほとんどありません。 ただ、当社には技術部といってアトラクションの導入やメンテナンスなどを担当する部門があるのですが、そこでは安全に関わる技術について出願実績があります。 アトラクション制御システムに緊急地震速報を取り込み、揺れが発生する前に安全なところまで進行して停止させるシステムについては、すでに特許権の取得を済ませています。 意匠権に関しては、実績がありません。商品デザインなど対象となるものはありますが、商品サイクルなども考慮にしたうえで出願は行っていないのが現状です。
取材担当者
それは意外ですね。
ユー・エス・ジェイ
私ども法務部から見て、ユニークなデザインの商品はいっぱいあるのですが。 ただ、ほとんどの商品はキャラクター自体の著作権で保護されているので、わざわざ意匠登録をしなくてもいいのでは、と考えています。
取材担当者
なるほど。それで意匠登録に関しては積極的に取り組まれていないのですね。 ところでパーク内では営業秘密といいますか、ノウハウについてもいろいろ保持されていると思います。 例えば、「ハリー・ポッター™」エリアで人気のバタービールは、映画のシーンに登場したドリンクそのものですよね。
ユー・エス・ジェイ
ひと口飲むと白いひげのように、泡が鼻の下に付くんですよ(笑)。 もともとは、米国のユニバーサル・オーランド・リゾートで体験できるものですが、当然レシピは一切開示されていません。 私どもは米国のユニバーサルからそのレシピを提供されているんですけど、管理は非常に厳重です。 封筒にサインされて封が閉じられ、見る人を限定する条件が課されていたり、社内のひとつの部署だけでなく複数の部署で分けてレシピを管理するようにしたりしています。 保管のためにわざわざ金庫をいくつか購入しました。まさに営業秘密の管理の見本のような管理を行っています。
取材担当者
バタービールは秘密に守られた、“魔法のドリンク”なんですね。
ライセンス契約の臨み方

米国と日本で大きく異なるライセンス契約

取材担当者
ライセンス契約に関していろいろとご苦労があると思いますが、どのように交渉に臨まれていますか。
ユー・エス・ジェイ
私どもとしては、より広い範囲でライセンス財産を使えるようにしたいと思っています。 そのためには「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン®」を世界最高の品質を誇るテーマパークにしなければならないと考えています。 それが、ライセンス財産の価値を高めることにつながりますし、ライセンサーの信頼を得ることで、結果としてビジネスの相手として尊重されますから。

取材担当者
日本なら情に訴えれば交渉がうまくいく場合がありますが、米国企業に対してはいかがですか。
ユー・エス・ジェイ
情に訴えるというか、ビジネス上のつきあいのなかで育んできた信頼関係というのは非常に大切にされます。 私が入社した当時は20代でしたが、米国の人は年齢や役職に関係なく接してくれました。 きちんと根拠を示し、論理立てて交渉していけば認めてもらえ、どんどんとつながりが深くなっていきます。 その積み重ねで、やがて「キミがそういうのなら」と物事が動くこともよくありますね。
取材担当者
企業と企業のドライな交渉になりがちな印象が米国にはありましたが、人と人の関係が重視されることが多いのですね。 そういう意味では、“人情”が感じられますよね。
ユー・エス・ジェイ
はい。それはすごく思いますね。

取材担当者
「ユニバーサル・クールジャパン」と銘打ったイベントも大盛況でしたが、米国と日本の企業ではライセンス契約上の違いはあるものですか。
ユー・エス・ジェイ
それはまったく違いますね。 例えば、米国のユニバーサルとのライセンス契約や、ワーナー・ブラザーズとの「ハリー・ポッター™」のライセンス契約の場合、契約書はとんでもない厚さで、内容も細かく複雑です。 一方、日本のライセンサーとのライセンス契約の場合、数ページほどの契約書という例が結構あります。
取材担当者
そんなに違いがあるものなんですか。
ユー・エス・ジェイ
米国のライセンサーとのライセンス契約書の場合、まず契約当事者に関する表明保証や知的財産権の侵害・損害に関する表明保証の条文が何ページにも渡ります。 日本のライセンサーとのライセンス契約書には表明保証に関して、ほとんど記載されていないですから。
取材担当者
米国の場合、それだけリスク管理が徹底しているということですね。 契約書の内容は交渉のなかで変えていくわけですか。
ユー・エス・ジェイ
はい。ライセンスの対象となるものの定義から権利許諾の範囲等に至るまで、エリアやアトラクションなど当社がゲストに提供したいものが契約に適切に含まれているかや、当社とライセンサーの権利義務の強さのバランスを判断しながら交渉を行っていきます。
ライセンス財産の保護

「モッピー」商標を巡る大阪府との関係構築

取材担当者
交渉を重ねた末に得たライセンス財産を、今度は保護する努力も必要になってくると思います。 これまでに第三者による侵害事例は数えきれないほどあったのではないでしょうか。
ユー・エス・ジェイ
模倣品に関しては、私どもも驚くほどに少ないんですよ。 もちろん発見次第、ライセンサーに通知のうえで対応しています。 少し特殊な事例としては、2014年に、大阪府のキャラクターと商標登録に関する問題がありました。
取材担当者
マスコミでも取り上げられていましたが、「モッピー」についてですね。
ユー・エス・ジェイ
そうなんですよ。私どもの「モッピー」に関しては、パークのオリジナルキャラクターを作ろうというところからはじまり、ライセンサーであるセサミワークショップと協力して誕生しました。 もちろん、商標登録も済ませています。おかげさまでとても人気で、新キャラクターとしてすっかり定着しています。
取材担当者
かわいいですよね。
ユー・エス・ジェイ
ありがとうございます。ところが2014年春、大阪府ではキャラクターが府内21部局に計45体も乱立していたため、これをリストラしようということになったんですね。 その際、松井一郎・大阪府知事が記者会見で最古参の「モッピー」というキャラクター(1997年のなみはや国体のキャラクター)をメインに据えることを発表されたんです。
取材担当者
キャラクター名が同じですね。

ユー・エス・ジェイ
私ども法務部としては、当然アクションを起こさなければなりません。 まず、大阪府の「モッピー」の商標権を確認したところ、登録されていないことがわかりました。 本来ならこの時点で警告書を送るのですが、大阪府と私どもはともに協力して大阪を盛り上げていく関係です。 そこで大阪府の担当の方に連絡を取り、法務部の方で直接お会いして事情を説明させていただきました。
取材担当者
できれば大阪府と争うことはしたくないですからね。
ユー・エス・ジェイ
私どもとしては返事を待つしかなかったのですが、幸いなことに松井知事をはじめ大阪府の皆様の迅速なご判断で大阪府側のキャラクター名を変更し、ともに協力して大阪を盛り上げていきましょうというご連絡をいただきました。 その後、大阪府では新しいキャラクター名を公募することとなり、当社と一緒にプロモーションをしていくことになったんですよ。 2014年秋にパーク内に会場を設けて、松井知事による新名称発表式を行いました。 その様子が夕方のニュースで大きく報道されまして、私どもの「モッピー」と大阪府の「もずやん」(「モッピー」からの改称後の名称)の知名度向上にもつながりました。 最初はどうなることかと思いましたが、結果として大阪府と私どものどちらにも効果がもたらされてよかったと思っています。
知的財産に対する新たな取り組み

「世界最高を、お届けしたい。」を商標登録するために

取材担当者
法務部として、知的財産権に関する新たな取り組みなどはありますか。
ユー・エス・ジェイ
私どもは開業当初の「映画の専門店」という位置付けから、よりゲストの満足度を高めていくために「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へと移行してきました。 その思いを込めたのが、CMなどで使われている「世界最高を、お届けしたい。」というキャッチフレーズです。 パークでは、アトラクションに関する数々の賞を受賞した「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド4K3D」や「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー™」を導入しているほか、クリスマスツリーが電飾数で3年連続ギネスブック世界記録に認定されるなど、多くの世界最高を作り続けています。 そこで、この「世界最高を、お届けしたい。」というフレーズを、商標登録しようということになりました。

取材担当者
いわゆる標語、キャッチフレーズは、商標法3条1項6号により原則として拒絶されるのではないですか。
ユー・エス・ジェイ
おっしゃる通りです。私どももこれはキャッチフレーズだから無理だろうなと思いながら商標登録出願を行いましたが、実際にも拒絶されました。 そこで、不服を申し立てるために、弁理士事務所の先生にご協力いただいて、審判を請求することにしました。
取材担当者
その際、担当の弁理士からはどのようなアドバイスがありましたか。
ユー・エス・ジェイ
キャッチフレーズが持つ識別力を示すために、周知性を主張する必要があるので、その証拠となる資料を数多く用意するようにアドバイスをいただきました。 このフレーズ訴求で一番インパクトがあったのはスピルバーグ監督が出演したCMでしたので、どれだけの回数がテレビで放映されたのかを集計しました。
当社のホームページでもフレーズを表示していたのでその閲覧回数を調べ、さらには旅行代理店のパンフレット、ホテル、スポンサー企業の広告など「世界最高を、お届けしたい。」というフレーズが使用されているありとあらゆる媒体をチェックし、審判官を圧倒するほどの量を資料として集め、周知性を主張する証拠として提出しました。
取材担当者
これなら大丈夫という実感はありましたか。
ユー・エス・ジェイ
過去の事例を見ても、キャッチフレーズが商標として認められたケースは少なかったので不安でしたね。 それだけに商標登録の審決をいただけたときは、法務部みんなで喜びあいました。 「世界最高を、お届けしたい。」というユニバーサル・スタジオ・ジャパン®の理念が認められた結果でもあり、本当にうれしかったです。 ご協力いただいた弁理士事務所の先生にも感謝の気持ちでいっぱいです。

取材担当者
そのほかにも、今後、知的財産戦略としてトライしていこうとされていることはありますか。
ユー・エス・ジェイ
私どもはCMで耳に残るフレーズを用いるように心がけていることもあり、今年4月1日から施行された音商標も使えたら面白いのではないかと思います。 そのほかに、パーク運営のビジネスモデルで特許出願を行っているものもあります。 これからもユニバーサル・スタジオ・ジャパン®は、どんどんと面白くなっていきます。 次々と新しいコンテンツを提供していければと考えておりますし、そのためにライセンス契約をはじめ法律面をサポートしていくのが、私ども法務部の大きな役割です。
もちろん社内だけでは対応できない事案が数多くありますので、弁理士事務所の先生方にぜひともご協力をお願いしたいと思います。
取材担当者
本日はいろいろと貴重なお話しをお聞かせいただき、ありがとうございました。

株式会社ユー・エス・ジェイ
1994年、大規模テーマパークの開発・建設のための企画及び調査等を目的として、前身の企画会社が設立される。 2001年、大阪市此花区において「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」全面開業。 以来、エンターテイメント&レジャー業界におけるアジアのリーディングカンパニーをめざし、ゲストの期待を上回る「感動とサービス」を提供し続けています。

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