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ちざい げんき きんき 事例紹介 知的財産の活用で、元気な関西の企業/団体を紹介します
INPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)

特許庁所管の独立行政法人として、
近畿地方の中堅・中小・
ベンチャー企業の知的財産の
保護・活用を支援しています。

今回は、近畿地方に所在する中堅・中小・ベンチャー企業の知的財産の保護・活用に関する多面的な支援を行い、地域ビジネスの成長と発展を後押しするINPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)を訪問。特許庁所管の一機関が関西に設置されるとあって話題と注目を集めた2017年7月31日の開設から現在までの活動内容や利用者の声など、様々なお話しをお伺いしました。

「INPIT」とは

産業界・大学・研究機関などの知的財産をつなぐ活動を展開

取材担当者
知的財産に興味・関心を持って私どものホームページを訪ねてくださる方々に、まずINPITとはどのような機関なのかをご説明いただけますか。
INPIT近畿統括本部
INPITは経済産業省特許庁所管の独立行政法人で、正式名称は「工業所有権情報・研修館」と申します。2001年に本部を東京に構え、現在は産業界・大学・研究機関などの知的財産をつなぐインターフェイスとして大きく三つの活動を展開しています。
取材担当者
詳しくお聞かせください。
INPIT近畿統括本部
はい。まず一つ目が「産業財産権情報の提供」です。特許情報プラットフォーム、これは一般に「J-PlatPat」と呼ばれていますが、1億件を超える特許・実用新案・意匠・商標の公報等の関連情報を、インターネットで手軽に検索・照会できるサービスを提供しています。
二つ目が「知的財産権の取得・活用の支援」です。現在、47都道府県に知財総合支援窓口を設置しており、特許や商標などの知的財産の出願・権利化などに関する様々なご相談にお応えしています。
三つ目が「知的財産関連人材の育成を支援するサービス」です。知的財産立国の実現のためには「創造」「保護」及び「活用」の各フェーズで構成される「知的創造サイクル」の活性化が大切であり、そのようななかで多種多様の人材の育成が求められています。そこで、IP・eラーニングとしてインターネットを通じた学習教材の提供、また、ケーススタディで学ぶ教材の提供など、明日の産業人材である学生等を対象とした知的財産に関する実践的な能力育成支援の各種サービスを提供しています。
取材担当者
創設以来、様々な活動を行われてきたなかで、初めての地方拠点として2017年7月31日にINPIT近畿統括本部を設置されたわけですが、どのような背景があったのでしょうか。
INPIT近畿統括本部
INPIT近畿統括本部の設置には、地方創生の関係で政府関係機関の地方移転に関する今後の取り組みのひとつという背景がありまして、「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」が決定した事項です。これを踏まえて、地元自治体や地域の関係機関とも連携し、近畿地方に所在する中堅・中小・ベンチャー企業などの知的財産の保護活用をきめ細かく支援することを目的としています。開設に向けては日本弁理士会近畿支部の皆様にもお力添えをいただき、誠にありがとうございました。
取材担当者
INPITではじめての地方拠点が関西に誕生することは、私ども弁理士にとって、そして関西の経済界にとっても大変喜ばしいことです。そこで全面的にご協力させていただこうという運びになり、日本弁理士会近畿支部では「INPIT対応特別委員会」を起ち上げました。
INPIT近畿統括本部
我々としましても関西においては知名度が低く、INPIT近畿統括本部を開設しても本当に利用していただけるか不安を抱えていました。
取材担当者
日本弁理士会近畿支部という立場から、より多くの方にINPITのことを知っていただき、利用してもらうためには何ができるだろうかと考えました。私どもの強みは、所属する弁理士一人ひとりが大企業から中堅・中小・ベンチャー企業・個人事業主に至るまで幅広いクライアントを持っていることです。事前にお話しをしてみると、「INPITと聞いても、どのような取り組みを行っているのかよくわからない」というクライアントがほとんどでした。そこで、INPITとユーザーをつなぐため、2018年3月8日に私どもの主催にて関西「知財の輪」セミナー・交流会を開催させていただきました。
(関西「知財の輪」セミナーの様子)

INPIT近畿統括本部
当日は各企業、さらには知財支援機関・団体から多くの方々に参加していただき、INPIT近畿統括本部を紹介することができまして、大変感謝しております。
取材担当者
こちらこそ、いろいろとありがとうございました。現在は、日本弁理士会近畿支部の会員を対象としたセミナーを開催しております。
私ども近畿支部会員の弁理士一人ひとりがセミナーを通じてINPITの活動内容をもっと詳しく知り、ユーザーとの懸け橋になりたいと考えています。

「INPIT近畿統括本部」この1年の取り組み

近畿の事業所の皆様が有する知的財産の多面的な活用を支援

取材担当者
早いもので開設から1年以上が経ちました。INPIT近畿統括本部として取り組んできたことを振り返っていただけますか。
INPIT近畿統括本部
まず、主に近畿地方の中堅・中小・ベンチャー企業の方々に向けて、「知的財産に関する高度・専門的な支援」を行っています。
取材担当者
どのような相談内容が多いですか。
INPIT近畿統括本部
知的財産権の取得にまつわる基本的なことから、営業秘密管理、知財紛争への対応など非常に多岐にわたりますが、全般的に見ますと海外ビジネスに関連したご相談が多いですね。
取材担当者
私ども弁理士に相談する前に、そちらにお伺いするケースが多いということでしょうか。
INPIT近畿統括本部
海外でビジネスを展開する際、模倣品など様々なトラブルが発生するのではないかと、漠然とした不安を抱えているようです。でも、弁理士の先生を訪ねるのは敷居が高く感じるのか、今まで一度も相談したことがないという方が結構いらっしゃいます。
取材担当者
なるほど。実際は気軽に訪ねていただければいいのですが、その点は私どもの今後の課題ですね。そのほかの取り組みについてもお聞かせください。
INPIT近畿統括本部
特許庁では審査官と出願人等とが特許出願の審査に関わる意思疎通を図るための機会として、面接を実施しています。そこで、INPIT近畿統括本部においても特許庁の審査官との出張面接とテレビ面接の場の提供を行っています。
取材担当者
これまでにどれくらいの利用がありましたか。
INPIT近畿統括本部
開設から1年余りで延べ733件、356社の面接がここで行われました。出張面接及びテレビ面接は全国で実施していますが、全体の約4割をここINPIT近畿統括本部で行ったことになります。
取材担当者
それはかなりの件数ですね。ご利用された方からはどのような声が寄せられていますか。
INPIT近畿統括本部
これまでも関西圏では特許庁の審査官との出張面接を不定期で行っていたのですが、出願人の予定や審査請求のタイミングが合わないことがよくありました。そういうケースでは東京まで出向かなければならず、交通費や宿泊費などのコストがかかっていましたが、大阪で出張面接が受けられるとあって非常に喜んでいただいています。また、出願内容によっては実際に審査官が工場見学も併せて行うこともあり、より詳しく技術を理解していただけたという声も頂戴しています。
取材担当者
審査官に直接発明を説明することは、試作品を用いたデモや技術のアピールができるだけでなく、審査官の考えを聞くことが期待できるなど様々なメリットがありますからね。
INPIT近畿統括本部
はい。INPIT近畿統括本部での面接は地方創生の一環として地域ユーザーの権利化を支援するためにも、さらに積極的に推進していきたいと考えています。

取材担当者
INPIT近畿統括本部には国内外特許文献のサーチをスピーディーに行える、高度検索用端末も設置されているんですよね。
INPIT近畿統括本部
ここには、現在6台を設置しております。この高度検索用端末は、特許庁の審査官が使用する機器とほぼ同等の機能を持つものです。
取材担当者
この端末は特許庁とここにしかないとお聞きしました。
INPIT近畿統括本部
そうなんです。専用回線ですので、東京の特許庁本庁舎2階にある公報閲覧室とここにしかありません。最初にご紹介した「J-PlatPat」よりも遥かにレスポンスが早く、ご利用者からは“「J-PlatPat」だと10日ほどかかっていた作業が、高度検索用端末を利用すれば1日で終わった”という声をいただいています。企業の方はもちろん、弁理士の先生方にも大いにご利用いただければと思います。
(高度検索用端末)
取材担当者
検索・閲覧の操作がかなり難しいのではないですか。
INPIT近畿統括本部
検索指導員が常駐しておりますのでご安心ください。気軽にお声かけいただければ、丁寧にサポートいたします。

近畿地方への波及効果と今後の課題・目標

地域の支援機関と協働し、認知度・利用率のさらなる向上を

取材担当者
開設から現在までを振り返っていただきましたが、近畿地方における波及効果と今後の課題についてもお聞かせいただけますか。
INPIT近畿統括本部
出張面接及びテレビ面接、さらには高度検索用端末の利用実績など、1年目としては順調な滑り出しではないかと思っています。ただ、今でも特許庁の関西支部と勘違いをされて、こちらに出願に来られる方もたまにおられます。
取材担当者
まだまだ、PR不足ということでしょうか。
INPIT近畿統括本部
もっともっと、PR活動を行っていかなければならないと思っています。INPIT近畿統括本部の活動範囲は近畿経済産業局の管轄地域と同じ2府5県なのですが、現状は大阪・兵庫・京都からのご利用が圧倒的に多いです。今後は地域の支援機関とも一層密接に連携して、滋賀・奈良・和歌山、そして福井からもご利用いただけるように取り組んでいきたいと考えています。
取材担当者
最後にこれからの目標をお聞かせください。
INPIT近畿統括本部
我々の大きな役割は、近畿地方の中堅・中小・ベンチャー企業の方々に、まず知的財産の役割と重要性を知っていただくことです。えっと驚くのが、長年名乗ってきた会社名を商品やサービスにも使用しているのに、商標登録をされていない企業がたくさんあることです。
取材担当者
商号があれば、商標登録は必要ないと認識されているわけですね。
INPIT近畿統括本部
そのようです。あとは特許、特に海外での特許に関しては費用がかかるので出願しないという企業の方が数多くいらっしゃいます。
取材担当者
中小・ベンチャー企業の場合、知財担当者がいないことがすべての原因になっている気がしますね。
INPIT近畿統括本部
だからこそ、まずはINPIT近畿統括本部が提供する支援サービスのすべてをご利用いただきたいです。ここには、実践における生の感覚を持つ「知財戦略エキスパート」をはじめとするスタッフが在籍しております。近畿地方には世界に誇る高度な技術力や潜在的な成長力を持つ中堅・中小・ベンチャー企業が集積していますので、そういった企業にとってビジネスの有力な武器となる知的財産を効果的に活用していただくためにも、各種支援機関ともリンクしたサポートを行い、明日への成長を後押ししていきたいと考えております。
取材担当者
INPIT近畿統括本部と日本弁理士会近畿支部が今後より細やかに連携を取り合って、近畿地方のビジネスを盛り上げていきたいですね。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

INPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)
「独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)」は、特許庁の機能を補完し、知的財産権制度に関するユーザーへのきめ細かなサービスを実現するための総合支援機関です。INPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)は、INPITによるはじめての地方拠点として2017年7月31日に「グランフロント大阪」ナレッジキャピタルタワーC9階(大阪市北区)に開設。ビジネスの重要なツールである知的財産の活用支援を通じて、近畿地方2府5県の中堅・中小・ベンチャー企業とともに歩み、地域ビジネスの成長と発展に貢献しています。


2018年12月17日掲載