「ものづくり技術応援融資~技ひろがる~」
これまで築き上げてきた
産学官ネットワークを活かし、
優れた技術・製品に関する
「標準化」や「知的財産権」の取得
などをサポートしています。

今回の「ちざい げんき きんき」では、企業のみなさまが持つ優秀な技術・製品に関する「標準化」や「知的財産権」を取得するためのサポート活動を行われている株式会社池田泉州銀行に注目。大阪市北区の本店を訪ね、先進テクノ推進部の方々から単なる融資にとどまらない、その幅広い取り組みについてお話をお伺いしました。
15年前から地域の事業者の方々の技術開発などを支援
- 取材担当者
- 貴行では経済産業省が実施する「新市場創造型標準化制度※1」の地元中堅・中小企業様への普及を目的に、平成27年に創設された「標準化活用支援パートナーシップ制度※2」におけるパートナー機関として「標準化」のサポートを行われています。この件に関連して、平成29年度には経済産業省から「産業技術環境局長表彰」も受けられたとお聞きしました。
- 池田泉州銀行
- ありがとうございます。啓発活動への積極的な取り組みを評価していただき、パートナー機関として第1号の表彰となりました。
- 取材担当者
- 技術者の発明をある一定期間権利保護する「特許」を含む「知的財産権」と、国内のJISなどに代表されるように広く技術を使ってもらおうという「標準化」は全く相反する概念とも考えられます。しかし、近年は競争力強化のため、「知的財産権」と「標準化」を一体化させた戦略が求められています。技術・製品に関する「標準化」というのは、弁理士の業務のひとつとして位置付けられ、我々弁理士としても非常に興味のあるところです。そこで「標準化」のサポートについて、その取り組み内容を教えていただけますでしょうか。

- 池田泉州銀行
- 実は、私どもがいきなり一足飛びで事業者様に向けて「標準化」のサポートに取り組んだわけではありません。それまで技術面や知財面で様々なサポートを行ってきましたが、「標準化」サポートは、それらの延長での取組となります。まず、平成15年に「ニュービジネス助成金」を創設しました。これは新規性・独創性のあるビジネスプランを持つ企業・起業家の方々の発掘・育成を目指したもので、総額1,000万円を助成しています。
- 取材担当者
- 15年前からすでに、新しいアイデアや技術、ビジネスに対する助成を行っていたのですね。
- 池田泉州銀行
- はい。さらに平成16年からは企業様と大学・公的研究機関との共同研究や委託研究などにかかる研究費の助成を主体とした「コンソーシアム研究開発助成金」を創設しております。これら2つの助成金制度には総数2,000件を超えるプランが寄せられまして、これまでに受賞された企業様も400社近くになります。
- 取材担当者
- 相当な数ですね。


- 池田泉州銀行
- 助成金制度とは別に、企業様のアイデアや技術などのブラッシュアップや共同研究を進めるため、大学や研究機関等を紹介するということも行っています。企業様のニーズは多種多様であり、サポートの実効性を高めるため様々な大学や研究機関等とネットワークを築いてまいりました。そのような活動をしながら、特にものづくりを行う企業様に対する有効な出口戦略を模索しておりました。
- 取材担当者
- それが、地域の企業様の技術・製品に関する「標準化」サポートにつながったということですね。
- 池田泉州銀行
- はい、そうなんです。私どもがいろいろと考えていた時期に、先ほどお話しがありました「標準化活用支援パートナーシップ制度」を経済産業省が創設され、銀行では全国で最初に手を挙げさせていただきました。特に「新市場創造型標準化制度」は、技術や製品の信頼性向上や差別化などの有力な手段となる、性能の評価方法等の標準化を支援する制度であるため、大学や研究機関等のサポートが不可欠であり、当行の「コンソーシアム研究開発助成金」との親和性が強いと考えたことも「標準化」に取り組んだきっかけです。

パートナーシップ制度に基づく「標準化」全国10件中3件をサポート
※平成30年1月現在
- 取材担当者
- 平成30年1月現在、「標準化活用支援パートナーシップ制度」に基づく「標準化」案件はどれくらいあるのですか。
- 池田泉州銀行
- これまでにパートナー機関による「標準化」が全国で10件決定し、そのうち3件が私どものサポートによるものです。
- 取材担当者
- 新市場創造型標準化制度の対象となるのは、地域の中堅・中小企業様ですよね。

- 池田泉州銀行
- そうです。通常「標準化」というと、業界団体や大企業が開発した技術を「標準化」して、みんなで使いましょうという考え方です。しかし、新市場創造型標準化制度を利用すれば、中堅・中小企業様にも「標準化」を戦略的に活用するチャンスが生まれてくるところが魅力だと思います。
- 取材担当者
- 中堅・中小企業様に対して、貴行ではどのような提案を行っているのですか。
- 池田泉州銀行
- 新しい画期的な技術を持っていても、国内外への売り込み方がわからないということでお悩みのクライアントが私どもには少なからずおられます。そういう時、一般的には自分たちが知っている商社を紹介するという形を取られると思います。しかし、私どもの場合は、販路紹介に加え、その技術について「標準化」が可能か検討し、技術面からもブランド力を高めていこうという提案を行います。こういったサポートは、おそらく全国の銀行を見渡しても私どもしかできないのではないかと自負しております。
お客様と二人三脚で研究段階から市場化までを推進
- 取材担当者
- 地元の事業者様へのサポートの一環として、「ものづくり技術応援融資~技ひろがる~」という融資商品もはじめられていますね。こちらは「標準化」に向けた取り組みだけでなく、広く「研究開発」や「知的財産権」の取得などに要する資金などにも活用できるとお伺いしています。
- 池田泉州銀行
- この融資商品は、ものづくりを行う企業様に幅広くご利用いただける商品ですが、特にこれまで「融資」の検討遡上に乗りにくかったアーリーステージにある企業様のニーズにお応え出来る商品です。
- 取材担当者
- でも、融資を行ったからといって、その事業者様の事業が必ず軌道に乗るとは限らないですよね。非常にリスクのある商品ではないですか。


- 池田泉州銀行
- 確かにリスクを伴う商品ではあります。そこで、私どもが連携する大学や公的研究機関をはじめとした当行独自の産学官ネットワークをフル活用し「技術(技)」や「製品の成長(ひろがり)」をサポートするものです。大阪信用保証協会様とタイアップした「事業性評価型」連携融資商品としても画期的な商品ではないかと自負しています。
- 取材担当者
- この融資商品についても、貴行ならではの産学官ネットワークを活用したものなのですね。ところでこの商品では知的財産権に関する融資も行われていますが、その評価において弁理士は関与しているのでしょうか。
- 池田泉州銀行
- 現状において、日本弁理士会の先生方には関わっていただいていないです。
- 取材担当者
- ぜひとも関与させていただきたいですね。弁理士というと出願業務を行う仕事と思われがちですが、それだけではありません。知的財産権を取得するための戦略はもちろん、権利化されてからの活用についてなどご協力できることはたくさんあると思います。

- 池田泉州銀行
- ありがとうございます。私どもも、もっと知的財産権について勉強をし、弁理士の先生方とともに事業者様のサポートを行い、さらには地域創生につなげていければと思います。
- 取材担当者
- 本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
※1 新市場創造型標準化制度
中堅・中小企業等が開発した優れた技術や製品を国内外に売り込む際の市場での信頼性向上などの有力な手段となる「性能の評価方法」等の標準化を支援するため、平成26年7月に経済産業省が創設した制度です。例えば、①企業1社では業界内の調整が困難 ②中堅・中小企業等で、標準の原案を作成することが困難 ③複数の産業界にまたがる等の場合に、「新市場創造型標準化制度」を活用することで、従来の業界団体でのコンセンサス作成を経ずに、迅速な国内標準化(JIS化)や国際標準化(ISO/IEC)提案が可能になります。
※2 標準化活用支援パートナーシップ制度
自治体・産業振興機関、地域金融機関、大学・公的研究機関等と「一般財団法人日本規格協会」が、地域の中堅・中小企業等における標準化の戦略的活用を連携して支援することを目的に、平成27年11月に経済産業省が創設した制度です。平成28年10月現在、日本全国で110機関(うち、大阪府下は5機関)が本制度の登録を受けています。


株式会社池田泉州銀行
平成22年5月1日、株式会社池田銀行と株式会社泉州銀行が合併し、「株式会社池田泉州銀行」として発足。関西を代表する独立系地方銀行として、地域の経済やお客様の暮らしを様々な角度から支えています。
2018年7月9日掲載