意匠法の保護対象について |
- Q.今般、当社は、多数の箱形ユニットを結合した2階建ての組立家屋を開発しました。この組立家屋は運搬や組立作業が簡単であるばかりか、外観のデザインも優れています。このような組立家屋についても、意匠法による保護を受けることができますか。
- A.
貴社の組立家屋のデザインは意匠登録の保護を受けることができます。貴社の意匠出願前に、他人が同じデザインの組立家屋を意匠登録出願しているとか、公知の意匠が存在している等の他の不登録要件がなければ、貴社の前記デザインは意匠登録されます。
(1)意匠法は意匠について、「物品(物品の部分も含む。)の形状、模様、色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」と定義しています。従って、出願した意匠が、この定義に該当しない場合には、意匠を構成しないとして登録を受けられません。
上記意匠の定義を分説すると、(a)物品と認められること(物品性)、(b)物品自体の形状・模様・色彩又はこれらの結合であること(形態性)、(c)視覚を通じて(視覚性)、(d)美感を起こさせるもの(審美性)であることが、意匠の成立要件であり、これらの1つでも充足しないと、意匠の保護は受けることができません。特に、貴社の組立家屋のデザインの場合、(a)の物品性を充足するかが問題となります。したがって、ここでは物品性に絞って説明します。
(2)(物品性)意匠登録出願にあたって、必ずその意匠に係る物品を記載しなければなりません。この物品の概念については、通説は取引の対象となり得る有体物の動産に限ると解し、実務でも採用されています。従って、
1)土地及びその定着物である家屋などの不動産は、原則として意匠法上の物品とは認められません。しかし、組立家屋・電話ボックス・移動便所等のように、工業的に量産され販売時に動産として取り扱われるものは意匠法上の物品として運用されています。
2)有体物として一定の形態を具えていることを要しますから、電気、光、熱などの無体物や、気体や液体などでもそのもの固有の形態を有しないものは意匠法上の物品といえません。
3)粉状物・粒状物等の一単位の如く肉眼で形態が判断しにくいものや、それらの集合体でも特定の形態がないものは物品性がありません。
貴社の組立家屋は、上述の意匠の成立要件、特に(2)1)を充足し、かつ形態性と審美性も充足していますので、意匠法の保護を受けることができます。
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- Q.どのようなものが意匠登録の対象となり、どのようなものが対象とならないのでしょうか?タイプフェースや携帯電話の液晶表示、アイコンなどはどうでしょうか?
- A.
意匠法上、工業上利用することができる意匠で、所定の登録要件を満たすものが意匠登録の対象となります。よって意匠登録を受けるためには意匠法上の意匠を構成するものであることが必須となります。
ここで「意匠」とは、簡単に言えば物品の形態であって目で見た時に「美しいな」と感じるものをいいますが、物品と言えるためには有体物でかつ市場で流通する動産である必要があります。従って不動産/電気、光などの無体物/粉状物/ひとつの物品の一部分などは原則として物品と認められず意匠登録の対象とはなりません。ただしひとつの物品の一部分については、その部分についてのデザイン創作を保護すべきという観点から平成10年の法改正にて部分意匠として登録の対象となりました。また形態とはその物品自体の形状、模様、色彩又はそれらの組合せをいい、物品そのものが有する特徴、性質から生じる形態である必要があります。従って例えばハンカチという物品を販売展示目的で折りたたんでできた花の形態はハンカチという物品自体の形態とは認められず意匠登録の対象とはなりません。
次にタイプフェースや携帯電話の液晶表示、アイコンなどが意匠登録の対象となるかどうかについてですが、原則としてタイプフェースやアイコン自体では物品を特定できないため意匠登録の対象とはなりません。しかし携帯電話の液晶表示についてはその液晶画面に表示されている画像が携帯電話という物品の形態であるため部分意匠として意匠登録の対象となりえます。実際に意匠登録が認められています(登録第1075910号)。
さらに、平成19年4月1日から、物品がその機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像で、物品に表示されるもの(例えばメニュー画面や初期画面)も、部分意匠として登録が受けられるようになりました。
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意匠の登録要件について |
- Q.このたび新製品を開発しました。この新製品のデザインについて意匠登録を受けたいと思いますが、意匠登録を受けるためにはどのような要件が必要ですか。
- A.
意匠登録を受けるには、新製品が概ね次の要件を満たす必要があります。
(1)意匠法上の意匠に該当することが必要です。詳しくは、小分類「意匠法の保護対象について」のQ&Aをご参照下さい。
(2)工業的に量産できることが必要です。一般にデパートや百貨店等で販売されている商品は、ほとんどの場合この要件を満たしますので通常はあまり気にする必要はありません。しかし、例えば、「貝殻」や「植物」等のように自然界に存在するもの自体や、製品の包装のように製品販売時に付加されるに過ぎない物品の形態、さらには量産目的で製作されていない絵画等の美術品は、いずれも工業的に量産されるものではありませんので意匠登録を受けることができません。
(3)新しい意匠であることが必要です。意匠登録を受けるためには、日本や外国を含めて従来知られていない新しい意匠でなければなりません。したがって、一般に知られた模様(例えば、水玉模様等)や形状(例えば、○や□等)を利用したに過ぎない意匠や、既に販売されている商品や新聞・パンフレット・意匠公報・インターネットなどで公表された物品等に掲載された商品と同じ形態若しくはそれに近い形態の意匠は意匠登録を受けることができません。また、一般に知られていない形態であっても、既に他人が意匠登録出願を行っている意匠と同一若しくはそれに近い形態の意匠については意匠登録を受けることができません。
(4)その他、社会一般に道徳感情を害するような意匠や、著名な他人の商品と誤認・混同を生じさせるような意匠も意匠登録を受けることができません。
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- Q.登録を受けようとするとき、意匠が「類似である」か否かはどのように判断されますか。
- A.
意匠審査において二つの意匠が「類似である」か否か(類否)の判断は、(1)両意匠の意匠に係る物品及び(2)両意匠の形態の二つのステップを経て行われます。
意匠とは「物品」及びその「形態」によって構成されます。形態とは、形状や模様、色彩、これらの結合を指します。そこで先ず、(1)の「(意匠に係る)物品」とは出願人が願書に記載する事項であり、審査官はその物品の用途(使用目的、使用状態等)及び機能を基に物品の類否を判断します。これらの共通性がない場合は、意匠が類似しないと判断されます。
次に、(2)の「形態」について、審査官は二つの意匠の形態における共通点及び差異点を認定し、これらが意匠全体の美感に対してどの程度の影響を与えるかなどを評価し、総合的に判断します。例えば、模様付きの包装用箱において、箱の縦横高さの比率(基本的構成態様)が異なっていても、特徴的な模様が共通していれば、両意匠は基本的構成態様における差異を超えて類似することがあります。
こうして(1)の物品が類似(または同一)である上に、(2)の形態が類似であるときは両意匠が類似であると判断されます。
なお、こうした判断の主体は需要者(取引者を含む)であり、物品の取引、流通の実態に応じた適切な者とされていて、意匠の創作者の主観的な視点を排し、需要者(同)が観察した場合の客観的な印象をもって判断するとされています。このように、登録意匠の範囲に関する平成18年の改正意匠法(意匠法第24条第2項)が、特許庁の意匠審査基準に反映されています。
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意匠登録出願手続について |
- Q.ペンギンをモチーフとした文鎮の意匠を出願したいと考えています。この文鎮の意匠は、実物のペンギンのモチーフをほとんどそのまま意匠に係る物品に表したものではなく、くちばしや眼や全体の形態がかなり異なるように美的処理を施した点に特徴があります。この特徴点を、出願の際に審査官にアピールしたいのですが、何か良い方法はありませんか。
- A.
1.出願の際に、自己の意匠の特徴を記載した「特徴記載書」を特許庁に提出することによって、出願意匠の特徴を審査官にアピールすることができます。この特徴記載制度は、意匠法の改正により平成11年1月1日の出願から利用できるようになった制度です。この特徴記載書の提出は、義務ではなく、出願人が選択できる任意手続きです。
2.特徴記載制度の趣旨
意匠登録出願の際に提出する願書及び添付図面等だけで、意匠の特徴を充分に表現することは困難な場合があります。そのため、審査官・審判官による審査が遅延して権利付与が遅くなるなどの問題がありました。
一方、出願人にとっては、例えば、自己の出願意匠は、公知意匠と異なる点を予め強調して拒絶理由を回避したいときや、自然物や有名な著作物等をモチーフとして利用していても創作容易な意匠ではないことを予め強調したい場合があります。
そこで、出願人自ら意匠の創作の特徴を主張できる特徴記載制度を導入することによって、特許庁における審査・審判の迅速化を図るとともに、第三者には前記特徴記載書の内容を意匠公報に掲載することにより当該意匠に関する出願人の主観的意図を知らせるものです。
3.提出手続
(1)特徴記載書は、意見書の先出しとも考えられることから、願書を提出するとき、又は出願が審査、審判、再審に係属中はいつでも提出できます(意匠法施行規則6条1項参照)。
(2)特徴記載書は、所定の様式によらなければなりません(意匠法施行規則6条2項参照)。詳しくは、弁理士にお問い合わせください。
なお、〔意匠の特徴〕及び〔説明図〕の記載は最新のものがそのまま意匠公報に掲載されます。
4.審査・審判での取り扱い
特徴記載制度は、出願意匠に関する創作のポイントを出願人が主張することによって、前記2.に記載したような効果を達成しようとする便宜的な制度です。
(1)審査官・審判官は、意匠の特定、類否判断、拒絶の理由において、特徴記載書の記載内容を直接の根拠にすることはできません。審査、審判の資料とするか否かは審査官・審判官の自由裁量です。特徴記載書の記載内容に同意できないときでも、拒絶理由を発したりすることはできませんし、判断結果が意匠公報に掲載されることもありません。
しかしながら、審査官・審判官は、特徴記載書を見るでしょうから、特徴記載が的確なサーチ範囲を決定する参考情報となるため、審査、審判の迅速化が期待されます。また、登録された場合には、〔意匠の特徴〕および〔説明図〕の記載内容が意匠公報に掲載されるので、第三者に対して出願人の登録意匠の創作の意図をしらせる牽制効果は得られましょう。
(2)特徴記載書の記載は、登録意匠の範囲を定める基礎としない(意匠法施行規則6条3項参照)し、審査の対象ともなっていないので、意匠権の権利範囲について直接的に何ら影響を与えないものです。
しかしながら、出願人が自ら特徴記載書で特徴記載をしている以上、侵害訴訟等の場においては、その記載内容と矛盾する主張はできないと思われるため、禁反言(エストッペル)の法理が適用される虞があります。従って、この特徴記載書を提出すべきか否か、提出する場合はその記載内容を十二分に検討すべきです。
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- Q.意匠登録出願前に、そのデザインの商品を既に販売してしまったのですが、登録を受けることはできますか。
- A.
意匠登録出願前に、販売、新聞発表等を行った場合、原則として新規性がなくなり、意匠登録を受けることができなくなってしまいます。ただし、特許法と同様に意匠法においても6カ月以内(注1)であれば例外の適用を受け、意匠登録を受けられる場合があります(特許法第30条、意匠法第4条)。以下の場合に例外の適用を受けることができます。
(1)意匠登録を受けるものの意に反して公知になった場合
例えば、詐欺、脅迫等によりその商品のデザインが公知となってしまったような場合です。
(2)意匠登録を受ける権利を有するものの行為に起因して公知になった場合
例えば、そのデザインの商品を販売、展示したような場合です。試験、学術発表をした場合も当然含まれます。
なお、この例外適用を受ける場合は、出願時にその旨を記載した書面(願書に記載することでもよい)を提出し、出願の日から30日以内に証明書を提出する必要があります。
(注1)平成29年12月9日以降に公開され、平成30年6月9日以降に出願された場合は、1年以内となります(平成30年改正意匠法第4条)。
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- Q.「組物の意匠」の登録を受けられる場合があると聞きましたので、具体的にどのような意匠かを教えてください。
- A.
どのようなシステムデザインでも組物として登録されるというわけではなく、経済産業省令に定められる56物品に限られています。
具体的には、美容用具セット、電気歯ブラシセット、コーヒーセット、ディナーセット、応接家具セット、ゴルフクラブセット、オーディオ機器セット、テレビ受信機セット、光ディスク再生機セット、電子計算機セット、自動販売機セット、門柱、門扉及びフェンスセットなどがあります。
なお、組物の意匠も、登録を認められるためには、通常の意匠登録出願の場合と同様に新規性、創作非容易性等の登録要件を満たすことが必要です。
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- Q.組物の意匠登録出願をする場合、他に注意すべき点がありますか。
- A.
システム全体を組物として意匠登録出願するとともに、システムデザインを構成する各物品についても、個別に出願するのが望ましいです。第三者があなたのシステムデザインを構成する1物品によく似たデザインの物品を販売している場合、組物(システムデザイン)の意匠は、システムデザイン全体として似ているか否かを問題にします。従って、第三者がシステムデザインとしてではなく、これを構成する1の物品を販売している場合は、権利侵害であるとしてその販売を差し止めることはできません。
例えば、パソコンシステムについての組物の意匠権を有している場合、第三者がこのシステムのディスプレイと全く同じデザインのディスプレイを模倣して製造販売していても、差し止めることはできません。
従って、システムデザイン全体ではなく、各物品を個別に出願しておくのが望ましいということになります。
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- Q.お互いに類似する意匠についての「関連意匠制度」とはどのような制度ですか。
- A.
平成11年1月1日から関連意匠制度が導入されました。
関連意匠制度の下では、複数の類似する意匠を登録するためには、いずれかを本意匠とし、それ以外の意匠を関連意匠として出願します。関連意匠の出願日は、本意匠の出願日以後であって、本意匠の意匠公報の発行の日前でなければなりません。関連意匠は必ず本意匠に類似していなければならず、他の関連意匠にだけ類似する意匠は関連意匠として登録されません。
関連意匠は登録されると、本意匠から独立した登録意匠として独自の権利範囲を有します。また、関連意匠の意匠権は、本意匠の意匠権が無効審判や放棄等により消滅しても、その影響を受けて消滅することはありません。ただし、関連意匠の意匠権の存続期間は本意匠の意匠権の存続期間と同じです。また、関連意匠の意匠権の移転、専用実施権の設定については本意匠の意匠権とともに行う必要があります。
なお、類似する複数の意匠を出願する場合、本意匠の選択を誤ると関連意匠を登録できなくなることがありますので、本意匠の選択には注意して下さい。
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- Q.新製品ついていろいろなバリエーションの意匠を創作しましたが、権利化についてどのような点に注意したらよいでしょうか。
- A.
新製品についていろいろなバリエーションの意匠を創作したとのことですが、権利化については、次のような点に注意してください。
まず、創作された意匠が、意匠法上の意匠を構成していること、工業上利用できる意匠であって、新規性および創作性を有し、不登録事由に該当しない意匠であることを前提にします。
1.関連意匠制度を利用する上での注意点
関連意匠出願制度の下では、いろいろなバリエーションのうち、一の意匠を本意匠として選択し、本意匠に類似する意匠を関連意匠とします。その際どの意匠を本意匠とするかが問題です。たとえば、A、B、C、Dの意匠について、AはBに類似し、BはCに類似するが、AはCに類似しない場合、Aを本意匠とするとBを関連意匠とすることができますが、Cを関連意匠とすることができなくなります。そこで、Bを本意匠とすると、AもCも関連意匠となります。また、DはA、Bに非類似であるが、Cに類似する場合、「関連意匠にのみ類似する意匠は意匠登録を受けることができない」という規定があるため、Dは関連意匠であるCにのみ類似するので意匠登録を受けることができません。関連意匠の出願日は、本意匠の出願日以後であって、本意匠の意匠公報の発行の日前でなければなりません。
なお、組物の意匠の場合も、関連意匠が認められます。
2.部分意匠制度を利用する上での注意点
いろいろなバリエーションの意匠の要部が共通している場合、新設されたこの制度を利用して、部分意匠として出願するとよいでしょう。部分意匠として出願する場合は、物品全体の中に占める位置、向き、大きさ、範囲、比率などを勘案して意匠登録を受けようとする部分を決定して下さい。
部分意匠についても前述の関連意匠が認められます。しかし、組物の意匠については部分意匠が認められません。
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- Q.システムデザインを創作しましたがどのようにすれば良いでしょうか。
- A.
パソコンセット、オーディオシステム、または応接セット等の複数物品の組み合わせからなるシステムデザインを創作した場合は、組物の意匠制度を利用して、組物の意匠登録出願をすることができます。
組物の意匠制度は同時に使用される2以上の物品であって経済産業省令で定めるもの(これを組物といいます)を構成する物品にかかる意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願でき、登録が認められる制度をいいます。
例えば、パソコンシステムでは、通常ディスプレイ、本体、プリンタ、マウス、キーボード等は個別に意匠登録出願をする必要がありますが、全体としてのデザインに統一感があると認められる場合は、これらをひとまとめにして出願し登録を受けることが可能となります。
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- Q.秘密意匠制度というものがあるそうですが、どのような制度ですか。
- A.
秘密意匠制度とは、出願人の請求により意匠登録の日から3年を限度として登録意匠の内容を公報に掲載せず、秘密にしておくというものです(意匠法第14条1項)。
1.秘密意匠の請求
この制度の適用を希望する出願人は、以下の点に注意して秘密意匠制度の適用を受けたい旨請求する必要があります(意匠法第14条2項)。
1. 意匠出願と同時、又は第1年分の登録料納付と同時に秘密意匠の請求を行うこと。
2. 請求書には、出願人の氏名(名称)及び住所、並びに、対象の意匠を秘密にすることを請求する期間(最長3年)を記載すること。
なお、この請求の後でも、出願人(意匠権者)は、秘密にしておく期間の延長又は短縮を請求することができます(意匠法第14条3項)。
2.秘密意匠の公開
秘密意匠は、以下の場合に公開されます。
1. 秘密期間中
意匠権者の承諾があったとき、裁判所からの請求があったとき等一定の場合には例外的に特定の者に対して秘密意匠の内容が示されます(意匠法第14条4項)。
2. 秘密期間経過後
通常の意匠と同様に公報に掲載されます(意匠法第20条4項)。
3.秘密意匠制度の利用に際しての注意点
秘密意匠制度を利用すれば、独占権を得ながら、一定期間、その内容を競業他者に対して秘密にしておくことができます。しかし、いいことばかりではありません。つまり、秘密期間中の秘密意匠に係る意匠権侵害訴訟では、侵害者がその意匠権の存在を知っていたことを意匠権者等が証明しなければならないのです。これは、秘密意匠は秘密期間中、意匠公報に掲載されないため、侵害者に過失があったと推定されないためです(意匠法第40条但書き)。
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- Q.物品の「部分」についての意匠登録は受けられますか。
- A.
部分意匠制度は、平成11年1月1日から導入された制度です。
従来、物品の一部分に外観的な特徴がある場合でも、物品全体の形態としてしか登録できませんでしたが、この部分意匠制度の導入により、物品の一部分の形状や形状と模様だけの結合でも登録できるようになりました。
例えば、従来は、コーヒーカップの把持部分に特徴がある場合でも、コーヒーカップ全体の形状を登録しなければなりませんでした。しかし、この部分意匠制度の導入により、そのコーヒーカップの把持部分の形態についてだけでも登録できることになりました。このように、物品の特徴的な部分に絞って登録しておくと、登録された特徴部分と同一又は類似の形態のものであれば他の部分の形態が異なっていても、第三者によるその意匠の実施を排除することができます。つまり従来は部分同士が同一又は類似であっても全体として似ていなければ侵害とはなりませんでしたが、本制度の導入により、部分同士が同一又は類似であれば原則として侵害となるため、「部分意匠」の登録をする方が「全体意匠」の登録をするよりも、広い権利が得られることになります。
なお、「部分意匠」を出願する際には、登録したい特徴部分のみを実線で描き、他の部分は破線等で表すことによって登録したい範囲を明確にすることとされています。
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意匠の国際登録制度について |
- Q.意匠の国際登録制度(2015.5.13~)について説明してください。
- A.
意匠の国際制度とは、我が国で2015年5月13日にジュネーブ改正協定が発効し、各国別に行っていた出願手続きを一元化して、WIPO国際事務局への1つの出願手続きにより、協定に加盟している国の内、指定した国にそれぞれ出願した場合と同等の効果を得ることができる意匠の国際出願及び国際登録システムです。
所定様式の書面若しくはE-Filing(インターネットによるオンライン出願)によって、WIPO国際事務局に対して出願を行うだけで良いため、各国別への出願が不要となる点で手続き的にメリットがあり、基本的に現地代理人を介さずに出願を行える点でコスト的にもメリットがあります。
国際出願を行うとWIPO国際事務局によって方式審査が行われ、出願書類に不備がなければ国際登録され、国際出願日が国際登録日となります。国際登録日から原則6ヵ月が経過すると、WIPOのウェブサイト(Hague Express)において出願した内容が公表され(国際公表)、その後、指定した各国で方式審査(書面等の形式審査)、実体審査(新規性等の審査)が行われます。
実体審査がない国の場合、国際公表から6ヵ月以内に拒絶通報(我が国でいう拒絶理由)がなければ、国際登録日から指定した国で登録の効果が発生します。実体審査がある国の場合、国際公表から12ヵ月以内に拒絶通報がなければ、国際登録日から指定した締約国において登録の効果が発生します(実際には、国際公表後に実体審査が開始され、12ヵ月以内に拒絶通報があると指定した国の官庁に対して反論を行い、拒絶が解消すれば登録されて権利が発生することになります。)。
登録後は5年ごとの更新で、指定した国が許容する存続期間(日本であれば登録から20年、アメリカであれば登録から15年)、権利を維持することができます。
ただし、世界共通の意匠権が発生するわけではありませんので、権利の効力範囲等については、各国の法律に基づくことになる点は注意して下さい。
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意匠権の効力・存続期間について |
- Q.我が社が意匠権を取得しているおもちゃの模倣品が海外から輸入されています。市場に出回るのをやめさせたいのですが、何か方法はあるでしょうか。
- A.
取得している意匠権を利用して、模倣品の流通を阻止するには、裁判所に訴訟を提起する(権利行使)、税関に輸入差止申立を行うといった方法が考えられますが、前提として、取得している意匠権に係るおもちゃの意匠と、模倣品に係るおもちゃの意匠とが同一又は類似する必要があります。
意匠とは、物品の形態(法律上は、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)を言いますので、意匠が同一又は類似するには、物品と形態とがそれぞれ同一又は類似している必要があります。
例えば、形状が同じ赤鉛筆と青鉛筆であれば、物品は同一で形状も同一ですが色が違うため形態は類似となりますので、意匠としては類似ということになります。
従って、海外から輸入されているおもちゃが模倣品ということであれば、意匠権を取得している意匠と物品とは同一又は類似していると思われますので、形態が同一又は類似していれば意匠権を利用して、模倣品の流通を阻止することが可能となります。
まず、意匠権の行使は、模倣品を輸入している者、販売等している者に対し、上記した民事上、刑事上の手続きを取ることになりますが、一般的には、輸入や販売等の行為が意匠権を侵害するため中止を求める等といった内容で書面を作成し、内容証明郵便で送付することが多いです。
内容証明郵便を送付しても中止しないようであれば、裁判所へ訴訟提起することになります。ただし、訴訟を提起する場合、弁護士費用等が発生し、それなりに時間と労力を要することになりますので、模倣品が輸入されて貴社が被る不利益等といった費用対効果を考慮して対応をご検討頂くのが良いと考えます。
なお、税関への輸入差止申立は、原則費用が発生することはなく(代理人を利用される場合は、代理人費用が発生します)、水際で日本国内へ模倣品が入ってくることを止めることができますので、流通阻止という面では効果があると考えます。
※輸入差止申立は、税関に提出した輸入差止申立書が受理されると、日本各地の税関で申立てを行った物品(本ケースではおもちゃの模倣品)が発見され、侵害品であると判断されれば、原則として、国内への輸入が阻止される(差止めされる)制度です。詳しくは、税関のホームページでご確認下さい。
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- Q.先ごろ、我が社の製品について、他社より、意匠権を侵害しているとの警告を受けました。意匠公報に図示されたものと同じでないように思えるのですが、それでも侵害となる場合もあるのでしょうか。
- A.
意匠権は、意匠公報に図示されている登録意匠と同じものだけでなく、その登録意匠に類似している意匠についても独占的に実施することができ、またこれらの類似している意匠を他社が実施することを禁止することができる権利ですから、貴社製品の意匠が、意匠公報に図示されている他社の登録意匠と同じでないとしても、類似であれば意匠権侵害となります。
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しかし、意匠公報に図示されている登録意匠の意匠権のすべてが有効なものでなく、例えば2年目以降の登録料を納付していないこと等によって、既に意匠権が消滅していることもありますので、意匠権侵害の警告を受けた場合には、先ず特許庁の意匠登録原簿の謄本を取り寄せて、当該意匠権が有効に存続していることを確認する必要があります。
意匠登録原簿の謄本によって、意匠権が有効に存続していることが確認できたときは、貴社製品と他社の意匠権の「意匠に係る物品」が同一又は類似のものであるかを検討し、非類似のものであれば意匠権侵害になりませんが、同一又は類似のものであったときは、貴社製品の意匠が意匠公報に図示されている他社の登録意匠に類似しているか否かを検討しなければなりません。
その際、他社の登録意匠の出願日前に、日本国内又は外国において、他社の登録意匠と同一又は類似の意匠の物品が販売されていた事実や刊行物に掲載されていた事実は、他社の意匠権の及ぶ範囲を確定するために重要なことですから、これらの事実を調査して、その事実を示す資料を収集する必要があります。
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上記の収集した資料によって、他社の登録意匠の出願日前に公知になっていた意匠が明らかになり、他社の登録意匠が登録無効事由を有していることやいかなる部分に新規の創作がなされているかも分かります。
その上で、貴社製品の意匠と他社の登録意匠を対比して、両意匠の共通点と相違点を検討し、上記の公知になっている意匠にはない部分を意匠の主要部として、そこに共通している点が多く、全体としてその共通点が、見る者に注意をひく場合は一般的に類似と考えられ、そうでない場合は非類似と考えられます。
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しかし、意匠が類似するか否かは物品によっても異なり、一概に判断し得るものではありませんから、弁理士の意見を求めるのがよいと思われます。
また、登録意匠の類似範囲が明確でないときは、意匠の範囲について特許庁に判定を求めることができます(意匠法第25条第1項)ので、これによっても意匠が類似するか否かが明らかになります。
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なお、平成11年1月1日に改正意匠法が施行され、改正前は物品全体としての意匠しか登録されませんでしたが、改正後は物品の一部分の形状や、形状と模様若しくは色彩又はこれらの結合よりなる意匠が「部分意匠」として登録されることになりましたので、物品の特徴的な部分に絞った意匠が「部分意匠」として登録されています。
そのため、貴社製品の意匠が物品全体として、意匠公報に図示されている他社の登録意匠と同一又は類似でない場合でも、貴社製品の一部に、「部分意匠」として登録されている他社の登録意匠と同一又は類似の部分があれば、他の部分が相違していても意匠権侵害となりますので、注意が必要です。
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- Q.意匠の登録を受けるとどのような効力があるのですか。また意匠権の存続期間は何年ですか。
- A.
(1)意匠権の効力
物品のデザインに関し新しい意匠を創作した場合には、特許庁に出願し、審査を受けることによって意匠権を取得することができます。
意匠権を取得すると、その意匠と同一のものはもちろん類似の意匠についても独占的に製造し販売することが認められます。他人が無断で登録意匠の製品を製造したり販売したりすることは法律によって禁止されています。これが意匠権の効力です。
● 差止請求権
意匠権を侵害した者に対しては、第1に、製造・販売を阻止することができます。これを差止請求権といいます。この差止請求権は、登録を受けた意匠と同じものだけでなく、類似のものにも認められます。意匠権は、物品のデザインに関するもので、物品の外観が権利の対象ですから、意匠権を取得しておけば、外観の似たものの製造・販売を阻止できる効力があるのです。
● 損害賠償請求権
第2に、他人が類似品を製造し販売したことにより損害を受けた場合に、その侵害賠償を請求することができます。差止請求権が認められることにより将来の侵害状態が阻止できますが、それだけでは不十分ですので、過去の侵害について損害賠償請求によって対処することができるのです。
● 意匠権侵害罪
故意に意匠権を直接侵害したものに対しては、以上のような民事上の措置が認められるだけでなく、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらの併科という罰則も適用されます。
(2)存続期間
意匠権の場合、存続期間は、意匠登録から20年(平成19年4月1日以降の出願について適用)です。出願から登録までの期間は計算に入りません。
意匠権の存続期間中は、登録意匠の製造販売を独占できます。
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- Q.意匠権侵害とは何ですか?
- A.
意匠権侵害とは、登録意匠を製造・販売する正当な権利や理由のない者が、事業において、登録意匠に係る物品を製造・販売する行為をいいます。また、登録意匠と同一の意匠に加えて、登録意匠に類似する意匠に係る物品を製造・販売する行為も意匠権侵害となります。
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- Q.自分が持っている意匠権に係る登録意匠と、他人が販売している商品に係る意匠が似ているかどうかはどのような点に注目して判断したらいいでしょうか?
- A.
意匠法では、自分が持っている意匠権に係る登録意匠と同一の意匠だけでなく、それに類似する意匠を他人が実施した場合も意匠権の侵害となります。従って他人が販売している商品にかかる意匠が類似するか否かは、意匠権の侵害となるか否かを判断する上で非常に重要となります。
ここでは、自分が持っている意匠権に係る登録意匠に係る物品と他人が販売している商品が同一又は類似であるとしてその形態が似ているかどうかについて説明します。なお、ここで説明するのはあくまでも一般論であり、実際には事案ごとに個別具体的に判断する必要があるのはいうまでもありません。
また、意匠の類否判断については非常に高度な専門性が必要ですので、実際の具体的判断については弁理士にご依頼いただくことをお勧めします。ここではその前提で説明いたします。
・まず、意匠の類似判断の主体となるのは需要者・取引者です。
・次に、自分の登録意匠における形態を、その需要者・取引者が購入する際に通常行う観察方法で観察した上で、物品全体の形態と各部の形態がどうなっているかを認定します。
・次に、登録意匠において当該意匠の特徴(性質、用途、使用形態、従来の意匠にない新規な創作部分があるかどうか)を検討して、当該登録意匠の要部がどこかを把握します。例えば炊飯器においてその操作パネルに斬新なデザインを施して登録になった場合、その操作パネル部分が要部となり得ます。
・次に、他人が販売している商品を購入するなどしてその形態がどうなっているかを観察し、登録意匠との共通点および相違点を認定します。そして両意匠が先に把握した登録意匠の要部において共通しているか否かを中心にして観察し、両意匠が全体観察上美感を共通するか否かによって類否を判断します。例えば両意匠の相違点が特に要部において顕著であり明らかに美感の差があれば両意匠は類似しないことになり、その相違点が要部以外の目に見えない部分の微差であれば両意匠は類似すると考えられます。
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