商標法の保護対象について |
- Q.どのようなものが商標登録の対象となりますか。
- A.
商標とは、自分の提供する商品又は役務(サービス)を他人のそれと区別するための目印として使用される標識のことで、商品に使用されるものを「商品商標」、役務に使用されるものを「役務商標(サービスマーク)」と言われています。
商品商標とは、例えば、薬、衣類、電気製品等の市場に流通する商品の目印として使用する商標であり、役務商標とは、例えば、銀行や宅配業者のように、役務(サービス)の提供を業とする者が、提供する役務の目印として使用する商標をいいます。
商標には、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、また、これらを組み合わせたものがあります。また、音なども商標となり得ます(新しいタイプの商標)。
商標は、それを使用することによって次第に需要者に知られるようになり、○○印の製品は品質が良いとか、△△印の引っ越し業者はサービスが良いといった評価が生じ、これによってその商標を使用している者の「業務上の信用」が高まります。商標法はかかる商標を使用したことによって生じた「業務上の信用」を保護すると共に、需要者が、例えば、ABC印の商品を買うつもりがAbC印の商品を買ってしまうといった商品や役務が混同されることを防止し、自由競争社会における競業秩序の維持を図ると共に需要者の利益も保護することを目的としています。
このように、商標法は、商標の上に化体した「業務上の信用」を保護し、需要者が商品や役務を混同することを防止するものですから、商標法によって保護される商標は、保護するに値するものでなければなりません。そのため、わが国の商標法は、審査主義を採り、商標法で保護するに値する商標であるか否かを審査し、審査にパスしたものだけを商標登録し、独占的に使用できる権利を与えることにしています。
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- Q.サービスマークとは何ですか。
- A.
サービスマークは自己の提供するサービス(役務)について使用する標章で、平成3年の商標法改正によって商標登録されることになり、商標法で保護されることになりました。サービスマークは、自己のサービスを他人のサービスと識別する機能があり、サービスの品質を表示する機能もあるため、商品に使用される商標と同様に保護されることになっています。
なお、平成19年4月1日から、役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれることとなりました。
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- Q.平成27年4月1日から商標登録の対象となった新しいタイプの商標について教えてください。
- A.
平成26年商標法改正により、平成27年4月1日から新たに商標登録の対象となった新しいタイプの商標は以下のとおりです。
①色彩のみからなる商標
これまで「色彩」は文字、図形等と組み合わせた場合のみ商標の構成要素として認められていました。今次改正により、色彩のみを構成要素とする商標が新たに商標登録の対象となりました。一色のみならず、複数色の組み合わせも対象となります。
②音商標
楽器、自然音、言語、これらの組み合わせからなる音が新たに商標の構成要素として認められ、商標登録の対象となりました。例えば企業CMのサウンドロゴなどがこれに該当します。
③動き商標
文字、図形、立体的形状等に動きがある場合、一連の動きを含め、変化する商標として商標登録をすることが可能になりました。例えば企業CMのモーションロゴなどがこれに該当します。
④ホログラム商標
ホログラムとは、ホログラフィ技術を用いて平面上に描かれた立体的画像のことで、見る角度によって映る姿が異なるものであり、一連の変化を含め、商標登録をすることが可能になりました。偽造防止のために貼付されるシールなどがこれに該当します。
⑤位置商標
文字、図形等の構成要素が商品等の特定の位置に付されていることに特徴がある場合、その位置を特定して商標登録をすることが可能になりました。
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- Q.商標と商号の違いについて教えて下さい。
- A.
商標は、自己の業務に係る商品又は役務に使用する標章(いわゆるマーク)のことで、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを結合したもの又はこれらに色彩を施したものですから、商号のように平面的なものに限られていません。また、平成26年商標法改正により、音商標をはじめとする新しいタイプの商標も登録の対象となりました。商標は自己の商品や役務と他人の商品や役務を区別するために使用するものですから、このような商標は、商品や役務の出所を表示すると共に、その商標を使用して提供される商品や役務の品質を保証していることにもなるため、かかる機能を有する商標を保護するため商標法で商標として登録することにしているのです。商標を使用する者は、商標を使用する商品又は役務を指定して特許庁に出願することにより、一定の条件の下に、独占的に使用し、他人の使用を排除し得る効力を有する商標権を得ることができます。
一方、商号は商人が営業上自己を表すための名称で、他の営業主体と区別するためのものです。商号の登記は、会社の場合は必ず行わなければなりませんが、個人商人の場合は必ず行う必要はありません。そして登記されている商号と同一又は類似の商号は、同一市町村内で(区のあるときは同一区内で)同一種の営業について登記することはできません。商号の使用者は一定の条件の下に、商法及び不正競争防止法によって保護されます。なお商号を商品や役務について、自他を区別するための標識として使用する場合は、商標登録されることによって、商標法による保護も受けられる可能性があります。
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- Q.商標制度による地域ブランドの保護について教えてください。また、地理的表示とは何かを教えてください。
- A.
地域ブランドの保護制度(地域団体商標制度)とは、「地域名」と「商品名」から構成される商標が、保護される制度のことをいいます。
地域の事業者が協力して、地域の特産品にブランドを付けて生産、販売などを行う場合、第三者に当該ブランドを勝手に使用されるのを防ぐために、商標権を取得することが有効です。そこで、このような地域ブランドについて、周知性などの一定の条件を満たすことで、商標登録が認められます。
また、地理的表示とは、農林水産物・食品のうち、品質等の特性が産地と結び付いており、その結び付きを特定できるような名称(地理的表示)を登録することができる制度です。登録された地理的表示は、登録された産品自体等に使用できます。一方、品質の基準を満たしていない産品に地理的表示は使用できません。
以上、地域団体商標制度と地理的表示保護制度では、保護の内容が異なりますので、地域ブランドの保護については、両制度のメリットをうまく組み合わせて保護を図ることが重要になります。
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- Q.「国内のブランド農作物を外国に輸出しようとしたら、その国で既に、わが社以外の者が商標登録していた」などということが起きないように、予めどのようなことをしておくべきですか。
- A.
近年、外国において、日本国に関連のない第三者が、商標登録を行う、という事例を多く耳にするようになっています。
このように、第三者によって商標登録されてしまった場合、正当な日本の事業者によって、商品が輸出された場合でも、当該国で商標権の侵害となる可能性があり、商品の輸出や販売ができないことが考えられます。
そこで、これらの対策としては、先ず、外国でも先願主義(早い者勝ち)の制度を採用している国が多数なので、輸出の可能性がある外国については、なるべく早く、商標出願を行うことが重要です。
また、一旦、商標登録され権利化されてしまうと、その後の無効審判等で、権利を無効にすることは、非常に困難です。そこで、第三者による不正な出願の有無について、定期的にウオッチングを行い、不正な出願に対してなるべく早い段階で情報提供や異議申立などの対応を行うことが重要です。
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- Q.CMでよく耳にする音も商標登録の対象となりますか。
- A.
CMでよく耳にする音も、「音商標」として商標登録の対象になります。CMの始まりや終わりに流れる企業のサウンドロゴがその典型例です。楽器、自然音、機械音、言語、これらの組み合わせ、どのような音であっても対象となります。
ただし、商標登録の対象にはなっても、実際に商標登録できるかどうかは、別問題です。たとえば単純すぎる音は、その音を聞いてもそれだけではどこが製造販売する製品か識別できない(これを「自他商品識別力に欠ける」といいます)という理由で、原則として出願が拒絶されます。例外的に、その音がよく知られ周知、著名になっている場合は、どこの製品か識別できるとして、商標登録できる場合があります。また、CMのバックに流れているような音は、サウンドロゴではなく単にバックミュージックに過ぎないとして、出願が拒絶される場合があります。
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- Q.赤・青・緑の三色からなる旗も商標登録の対象となりますか。
- A.
「色彩のみからなる商標」は単一色のみならず複数色も組み合わせでも構いませんので、赤・青・緑の三色のみからなる商標も商標登録の対象となります。
ただし、商標登録の対象にはなっても、実際に商標登録できるかどうかは、別問題です。色彩のみからなる商標(単一色、複数色の組み合わせいずれの場合も)は、その色を見れば、誰が製造販売する商品か、あるいは誰が提供するサービスかがわかる程度に有名でなければ登録されません。よって、赤・青・緑の三色からなる商標も登録の対象にはなりますが、それを見た需要者が特定人を想起するほど有名でなければ登録することは難しいでしょう。
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- Q.当社では、ユニークな形状の香水の瓶を考えました。この瓶の形状については、すでに意匠を出願をしましたが、現在、商標も出願することを検討中です。この香水の瓶の形状について、商標登録することができるのか教えて下さい。
- A.
結論からいえば、貴社の香水瓶の形状のみからなる立体商標は、自他商品識別機能を発揮しないとして拒絶される可能性が大です。
商標法3条1項3号は、「商品の形状(包装の形状を含む。)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録を受けることができないと定めています。これは、商品若しくは商品の包装容器の形状は、本来それ自体のもつ機能を効果的に発揮させたり、あるいは、その商品等の形状のもつ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的に商品の出所を表示し、自他商品識別標識として採択されるものではないからです。
したがって、貴社の香水瓶のように、ユニークな形状や模様を備えていても、本来的には自他商品識別標識として機能するものではないと考えられるのです。
一方、貴社の香水瓶が、使用により自他商品識別力を獲得している(商標法3条2項適用)と判断されれば、商標法3条1項3号は適用されません。しかしながら、商標法4条1項18号に基づいて拒絶される可能性があります。すなわち、自他商品識別機能を発揮する立体商標であっても、それが、香水瓶が当然に備える特徴である判断されれば、商標登録を受けることはできないのです。
(この場合の「香水瓶が当然に備える特徴」とは・・香水瓶の立体的形状が、香水瓶の性質から通常備える立体的形状のみからなるものであること、または、香水瓶の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるものであることをいいます)
ちなみに、現在、登録されている立体商標の例としては、商品や商品の包装の形状に自他商品識別力を有する文字・図形等が付加されているもの、「ペコちゃん人形」や「カーネルサンダースおじさん人形」等、店舗の目印となる看板等として用いられているものがあります。
なお、貴社の香水瓶に関しては、意匠登録がされるまでは、一定条件下でデッドコピーから保護されます(不競法2条1項3号)。また、意匠登録後は、意匠権によって保護されますし、意匠権消滅後は、周知性等一定の条件下で保護され得ます(不競法2条1項1号、同2号)。
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商標の登録要件について |
- Q.登録を受けることができない商標とはどのような商標ですか。
- A.
登録を受けることができない商標としては、
・その商品・サービスについて一般的に用いられている名称のみからなる商標(例えば、商品「ワードプロセッサ」について「ワープロ」、サービス「ホテル等の宿泊施設の提供」について「観光ホテル」等の商標)
・商品の産地、品質、商品の形状等を表す商標(例えば、「東京」、「グッド」、「四角形」やサービス「宅配便」について「はやい」、等の商標)
・ありふれた氏又は名称のみからなる商標(例えば、「TANAKA」、「高橋株式会社」等の商標)
・簡単でありふれた図形、文字等のみからなる商標(例えば、「○」、「△」等の図形、ローマ字や数字等の1字又は2字からなるの商標)
・日本又は外国の国旗、菊花紋章、赤十字のマーク、国際連合その他の国際機関のマーク、都道府県・市町村のマーク等と同一又は類似の商標
等があります。
また、
・他人の登録商標と同一又は類似の商標であって同一又は類似の商品について使用するもの
・他人の有名な商標と同一又は類似の商標等、他人の商品や役務と混同を生ずるおそれのある商標等
も登録を受けることができません。
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- Q.実際に使用するメインのマークの他に、いろいろなバリエーションも出願したいと思います。これらを一括して登録できますか。
- A.
バリエーションを構成する商標は、互いに外観、称呼、若しくは観念が類似しているのが普通です。商標法上、他人の登録商標と類似の商標について商標登録出願すると、出願を拒絶される場合があります。しかし、商標権者若しくは出願人が同じならば、商標が類似しているとの理由で拒絶されることはありません。従って、商標権者若しくは出願人が同一であることを前提にして、バリエーションの商標を一括して登録することができます。但し、バリエーションの中に、他人の商標と類似のものがあった場合、その商標については拒絶される可能性があります。
このように、バリエーションの商標を一括して登録することは可能ですが、「一商標一出願の原則」により、バリエーションを構成する個々の商標について、それぞれ出願をしなければなりません。すなわち、バリエーションの数だけ商標登録出願をする必要が生じます。なお、バリエーションの商標について複数の商標登録出願をする場合に、これらを同日にする必要はありません。必要に応じて商標登録出願をし、バリエーションの商標を追加して商標登録していくことも可能です。
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- Q.周知商標、著名商標とは何ですか。また、これらについては商標法でどのように保護されますか。
- A.
「周知商標」とは、複数の都道府県で知られている商標であり、「著名商標」とは全国的に著名な商標であるといわれています。海外において著名な商標も「著名商標」として扱われる場合が多いです。これら周知・著名商標には、それ自体に高い財産的価値があるとされていますので、このような商標は特に法的な保護が必要とされます。
商標法上、自分の登録商標と同一類似の商標につき、他人が商標登録出願した場合であっても、指定商品若しくは指定役務が非類似であれば、その商標が自分の登録商標と同一類似であるとの理由ではその出願は拒絶されないのが原則です。しかし、自分の商標が周知・著名である場合、たとえ指定商品若しくは指定役務が非類似であったとしても、他人が自分の商標と同一類似の商標につき商標登録出願すると拒絶される場合があります。例えば、その商標を他人が非類似の商品若しくは役務に使用したとすると、需要者が出所の誤認混同をきたすと特許庁が判断をした場合です。このように、周知・著名商標の場合、これらと同一類似の商標について、他人が商標登録を受け難い制度となっています。
積極的に同一類似の商標について他人の商標登録を防止する手段として防護標章登録があります。先に説明したとおり、自分の登録商標と同一類似の商標につき、他人が商標登録出願した場合であっても、指定商品若しくは指定役務が非類似であれば、その商標が自分の登録商標と同一類似であるとの理由でその出願は拒絶されないのが原則です。すなわち、非類似の商品、役務については、自分の商標が周知、著名であったとしても、自分の商標と同一の商標につき、他人が商標登録を受ける余地があります。これを防止するため、周知、著名商標に関しては、これと同一の標章につき、本来使用の予定の無い非類似の商品、役務を指定して防護標章登録を受けることができます。防護標章登録されると、同一の標章につき、それに係わる商品、役務を指定して、他人が商標登録を受けることができなくなります。
また、自分の商標権が侵害された場合、権利を侵害した者に対して損害賠償請求をすることができますが、周知、著名商標はそれ自体に高い財産的価値がありますので、請求額もそれに応じて高額となります。ところで、商標権は、登録商標と同一類似の商標を、指定商品若しくは役務と同一類似の範囲で使用した場合が、その効力の及ぶ範囲です。周知、著名商標につき防護標章登録を受けると、他人が登録防護標章と同一の標章を、これに係わる指定商品若しくは役務と同一のものに使用する行為も商標権侵害となります。このように、権利行使の面でも、周知、著名商標は特別に保護されます。
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- Q.同業者団体や生産地域における団体などが商標権を取得することはできますか。
- A.
同業者団体や生産地域が商標権を取得する制度として団体商標があります。原則として、商標登録はその商標を使用するものがこれを受けることができます。ところが団体商標の場合、商標登録を受ける団体以外に、その団体に属する構成員もその商標を使用することができます。団体商標制度を利用することで、ある生産地域の団体が、その地域の産品に独自ブランドを付して販売する際にそれらを登録商標しておくことで、その団体に属する構成員がその独自ブランドを使用することができることのみならず、他人の使用を防止することができます。但し、団体商標の商標登録を受けることができる団体には法律上の規定があり、公益社団法人、農業協同組合、事業共同組合、商工会議所、NPO法人等がその対象となります。一方、株式会社、法人格を有しない社団等は登録を受けることができません。
ところで、商標登録を受けるには、その商標が自他識別力を有することが必要とされます。従って、例えばある地域の独自ブランドとして(その地域名+商品の普通名称)で構成されるものを用い、これを商標として商標登録出願をしても、自他識別力が無いものとして商標登録がされません。例外的に、一定期間使用されることにより特定の団体の産品等を表示するものとして自他識別力を有すると認められた場合には商標登録がされます。しかし、この例外規定の適用は厳格であり、独自ブランドとして(その地域名+商品の普通名称)のようなものを用い、これを登録商標とすることは困難です。
このような(地域名+商品の普通名称)で構成されるような、いわゆる地域ブランドについて商標登録を受けるための制度として、地域団体商標制度があります。上記の団体商標制度を利用して商標登録を受けるためには、その商標につき全国的な知名度を獲得することが必要とされていますが、地域団体商標制度によれば、複数都道府県に及ぶほどに周知であればよいとされているので商標登録を受けることが容易になります。地域団体商標の類型として、①(地域名+商品(役務)の普通名称)、②(地域名+商品(役務)の慣用名称)、及び(①または②+産地等を表示する際に付される文字として慣用されている文字)、例えば、○○みかん、○○焼、本場○○織、が挙げられています。地域団体商標制度により、○○蒲鉾、△△温泉、□□の塩のような商標が既に登録されています。
なお、平成26年8月1日から、商工会、商工会議所、NPO法人(特定非営利活動法人)、これらに相当する外国の法人も、地域団体商標の出願をすることができるようになりました。
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- Q.地域団体商標とは何ですか。また、地域団体商標が登録されるためには、どんな条件が必要ですか。
- A.
地域団体商標とは、例えば、「和歌山ラーメン(登録第5004520号)」などのように、地域名(和歌山)と商品名(ラーメン)の文字から構成されている商標のことです。通常は、地域名と商品名を組み合わせただけでは商標登録されにくいのですが、所定の条件を満たせば商標登録されます。
地域団体商標が登録されるための条件としては、
・地域の事業協同組合、農業協同組合、商工会、商工会議所、NPO法人(特定非営利活動法人)等の団体による出願であること
・「地域の名称+商品の普通名称」を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標等であること
・一定の地理的範囲で有名になっていること
などが挙げられます。
地域名と商品名からなる商標が、地域ブランド育成の早い段階に商標登録を受けられるので、この地域団体商標に関する制度は、地域ブランドを法的に保護していく手段として活用されています。
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商標の類否判断について |
- Q.商標の類否判断について教えて下さい。
- A.
特許庁商標課は、「商標審査基準」を公表しており、特許庁の審査官はこの基準に沿って出願商標が他人の先行商標と類似するかどうかの判断を行います。その基準は以下のようになっています。
「商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」
「商標の類否の判断は、商標が使用される商品又は役務の主たる需要者層(例えば、専門家、老人、子供、婦人等の違い)その他商品又は役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断しなければならない。」
原則として、両商標が外観(見た目)・称呼(呼び名)及び観念(意味合い)のいずれか一つの要素において紛らわしければ、類似と判断されます
称呼類似の例
「アスパ」と「アスペ」、「アトミン/Atomin」と「ATAMIN/アタミン」
観念類似の例
「太陽」と「SUN/サン」、「APPLE」と「りんご/林檎」
また、商標の構成全体での類否判断を原則としますが、二以上の要素が結合したような商標の場合には、その商標の一部分をもって類否判断する場合がありま す。また、両商標を並べて比べるのではなく、時と所を異にして両商標を見た場合に需要者が混同するかどうかが基準になります。
その他、「商標審査基準」には商標の類否について、具体的な例を挙げて記載されていますので、詳しくはそちらをご覧下さい。(特許庁ホームページ:資料室(基準・便覧・ガイドライン)→基準・便覧・ガイドライン→商標審査基準→九、第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標))
なお、特許庁では「商標審査基準」に従い、原則として画一的な判断がなされますが、使用商標が他人の登録商標と類似し商標権侵害に該当するかどうかを判断 する裁判所においては、実際の取引の実情などを考慮の上、個別具体的に、両商標が付された商品又は役務の出所について、需要者が混同のおそれを生じるかど うかの観点から商標の類否が判断されます。
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商標・役務(サービス)の国際分類について |
- Q.商品・役務(サービス)の区分について教えて下さい。
- A.
商標登録出願は、「商品及び役務の区分」に従って、商標を使用する1又は2以上の商品又は役務を指定して行わなければなりません。この「商品及び役務の区分」とは、商品及び役務(サービス)を45のグループに分類したものです。各グループに属する商品や役務は、その概要が商標法施行令別表に、その具体的な内容が商標法施行規則別表に掲載されています。商標登録出願する際には、後者の商標法施行規則別表に掲載されている商品又は役務を指定しなければなりませんのでご注意下さい。
第1類~第34類が商品、第35類~第45類が役務です。
商標法施行令別表に記載されているそれぞれの区分に属する商品・役務の概要は、以下の通りです。
第1類 工業用、科学用又は農業用の化学品
第2類 塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品
第3類 洗浄剤及び化粧品
第4類 工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤
第5類 薬剤
第6類 卑金属及びその製品
第7類 加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械
第8類 手動工具
第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具
第10類 医療用機械器具及び医療用品
第11類 照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生用の装置
第12類 乗物その他移動用の装置
第13類 火器及び火工品
第14類 貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計
第15類 楽器
第16類 紙、紙製品及び事務用品
第17類 電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック
第18類 革及びその模造品、旅行用品並びに馬具
第19類 金属製でない建築材料
第20類 家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの
第21類 家庭用又は台所用の手動式の器具、ガラス製品及び磁器製品
第22類 ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維
第23類 織物用の糸
第24類 織物及び家庭用の織物製カバー
第25類 被服及び履物
第26類 裁縫用品
第27類 床敷物及び織物製でない壁掛け
第28類 がん具、遊戯用具及び運動用具
第29類 動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物
第30類 加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料
第31類 加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料
第32類 アルコールを含有しない飲料及びビール
第33類 ビールを除くアルコール飲料
第34類 たばこ、喫煙用具及びマッチ
第35類 広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(下線部は平成19年4月1日から施行)
第36類 金融、保険及び不動産の取引 F41
第37類 建設、設置工事及び修理
第38類 電気通信
第39類 輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配
第40類 物品の加工その他の処理
第41類 教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動
第42類 科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発
第43類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供
第44類 医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務
第45類 冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するものを除く。)、警備及び法律事務
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商標登録出願手続(出願時)について |
- Q.商標登録するための出願手続について教えて下さい。
- A.
商標登録出願は、商標法施行令で定めている商品及び役務の区分に従って、1つ又は2つ以上の商品又は役務を指定して、1つの商標ごとにしなければなりません。
「商標法施行令で定める商品及び役務の区分」というのは、商品及びサービスを45のグループに分類したものですが、各グループに属する商品やサービスの事例は商標法施行規則に別表として掲載されていますので、これを参考にして商品やサービスがどのグループに入るかを決めた上で、それぞれの商品及びサービスとその区分(グループ)を指定して出願しなければなりません。
1つの区分(グループ)内では商品又はサービスをいくつ指定しても、特許庁に支払う料金(特許印紙代)は同じですが、商品又はサービスの区分が増えますと、増えた区分の数に応じて料金が加算されます。
また、商標登録出願は1つの商標ごとに行わなければなりませんので、1つの出願にいくつもの商標を含めることはできません。ただし、文字と図形を組み合わせたもの、文字と文字を組み合わせたものや図形と図形を組み合わせたもの等であっても、全体として1つの商標と認められるものについては、1つの出願に含めることができます。
その他、商標登録出願に、出願人の氏名又は名称等を記載した一定の様式を用いて出願しなければなりません。
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- Q.新しいタイプの商標(音、動き商標、色彩のみ)について出願する際に、どのような出願手続をすればよいでしょうか。
- A.
文字、図形等の従来から登録の対象となっていた商標の出願手続と基本的には同様です。つまり、文字、図形等の出願の場合と同様に、商標登録を受けようする商標を、願書に記載します。ただし、願書への記載方法は、新しいタイプの商標ごとに異なりますので注意を要します。
たとえば音商標では、五線譜によって表現するか、五線譜で表現できない場合は、どういう音かを文章によって表現しなければなりません。また、動き商標の場合、一連の動きがわかるように複数の図または写真を記載しなければなりません。
また、商標のタイプによっては、願書以外の物件を併せて提出しなければならない場合があります。たとえば音商標の場合、出願に係る音を所定の方式で記録したCD-ROMを出願時に提出しなければなりません。また、出願商標について詳細な説明を記載する必要がある場合もあります。たとえば動き商標の場合、一連の動きの順番や動き全体にかかる時間などを願書の「商標の詳細な説明」に記載する必要があります。
また、色彩のみの商標では、色彩を特定するための色彩名、三原色(RGB)の配合率、色見本帳の番号、色彩を組み合わせた場合の各色の配置や割合等を、願書の「商標の詳細な説明」に記載する必要があります。また、色彩を付する位置を特定する場合には、色彩を付する商品等における位置(部位の名称等)について記載する必要があります。
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- Q.商標登録出願をする前にすべきことはありますか。
- A.
せっかく出願しても、その商標が他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品や役務(サービス)に使用するものである場合は、商標登録を受けることはできません。したがって、出願する前に、このような他人の登録商標がないかどうか調査しておくことが必要となります。
調査方法としては、商標検索専用のデータベースを利用する方法、特許庁(工業所有権情報・研修館)のホームページの商標検索サービスを利用する方法、特許庁が発行する商標公報を利用する方法等があります。
このほか、商標法第15条に規定されている商標登録出願が拒絶されることになっている理由に該当するかについても検討しておく必要があります。
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- Q.商標登録出願の前に調査をしたところ、同じマークで他社の登録商標が発見されました。どのような対処法をとることが可能ですか。
- A.
商標が同一でも、指定商品・役務が非類似だと商標登録される可能性があります。例えば、あるマークが他社により指定商品を「チョコレート」として商標登録されている場合に、自分が、そのマークと同一のマークについて、指定商品を「テレビ」として商標登録出願をしたとしても、同一のマークが他社により商標登録されているからとの理由で拒絶されないのが原則です。それぞれの指定商品である「チョコレート」と「テレビ」が非類似だからです。従って、指定商品・役務が非類似であるならば、そのまま商標登録出願をすればよいでしょう。但し、他社の登録商標が著名・周知な場合は出願が拒絶される可能性があります。
一方、指定商品が同一類似の場合は問題です。他社の登録商標の存在を理由に拒絶されるのが原則だからです。この場合、商標を非類似なものに替えて商標登録出願すればよいのですが、どうしてもその商標にこだわるのであれば、以下のような手段があります。
1.問題となっている他社の登録商標を買い取り、名義書換をする。指定商品が同一ならば、これで商標登録出願をする必要はなくなります。指定商品が類似ならば、その指定商品について、商標登録出願をすればよいのです。名義書換により他人の登録商標ではなくなるので、拒絶理由がなくなっているからです。
2.問題となっている他社の登録商標をなくす。他社の登録商標がなくなれば、これを理由に商標登録出願が拒絶されることはなくなります。登録商標をなくす手段としては、異議申し立て、無効審判、取消審判等があります。例えば、問題となっている登録商標が過去3年間継続して使用されている形跡がなければ、特許庁に対して、不使用を理由にした取消審判を請求できます。
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