特許権が発生していない以上、特許権に基づく差止請求(製品の販売等を差し止める)や損害賠償請求等の権利行使はできません。
しかし、特許権が発生していない場合であっても、認められる対抗手段があります。
この発明の特許出願について特許公開公報がすでに発行され、出願公開がされている場合は、当該他社に対して、一定の条件を満たした警告をしておくことも有効です。この警告によっても当該他社の販売行為等を差し止めることはできませんが、この発明の実施料に相当する金額の補償金を、特許権が発生した後に、請求することが可能となります。逆に言えば、この警告を行わないと一部例外を除いて当該補償金を請求することができません。
したがって、この警告を受けた場合、当該他社は自己の製品の販売を継続すると、「特許権が発生した後に、補償金を請求されるだけでなく、特許権侵害で訴えられるかもしれない」と考え、問題の製品の販売を中止してくれるかもしれません(特許法第65条参照)。
なお、この警告を行うためには、該当する特許出願が出願公開されていなければなりません。そこで、未だ該当する特許出願が出願公開されていないのであれば、特許庁に対して、早期に出願公開をするように出願公開の請求(特許法第64条の2)を行うこともできます。
また、特許権が発生していない場合の対抗手段として、例えば、不正競争防止法に規定されている差止請求(第4条)や損害賠償請求(第5条)は認められる場合があります。
不正競争防止法は、不正競争に対して権利行使を認める一方で、どのような行為が不正競争に該当するかが列挙されています(第2条第1項第1号~第15号)。例えば、特許出願した発明が製品の形態に関する発明である場合、当該他社の行為は、同条同項第3号に該当する可能性があります。すなわち、当該他社の行為が不正競争行為である場合には、当該他社の行為に対する対抗手段として、不正競争防止法に基づく差止請求や損害賠償請求をすることができます。
以上のような対抗手段の他に、特許権を早期に成立させるための付随的手段として、特許庁に対して、特許出願の審査を開始させるための出願審査の請求(特許法第48条の3)を行ったり、あるいは、当該特許出願の審査を優先して行ってもらうための優先審査の請求(特許法第48条の6)を行ったりすることも有効です。
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