外国に出願するには次の2つの方法があります。
(1)第1の方法は、各国に直接出願する方法です。通常、この場合には、パリ条約(平成14年8月現在の加盟国は165ヵ国であり、主要な国はほとんど同条約に加盟しています)という産業財産権の保護に関する国際条約を利用することになり、同条約の加盟国である日本国の国民であれば、出願対象国の国民と同様の保護を受けることができます。また、同条約には、優先権制度と呼ばれる制度が設けられており、我が国に特許出願を行ってから1年以内(優先期間内)に外国出願を行えば、その外国出願は、我が国での出願日を基準にして特許性(新規性、進歩性等)の判断がなされるという利益が得られます。しかしながら、各国に直接出願するには、各国の定める様式等の要件を充足しなければならず、特にその国の公用語での出願を求める国が多いため(ただし、米国やドイツのように公用語以外での出願を認め、後に翻訳文を提出すればよい国もある)、1年の優先期間内に外国出願を完了することが困難な場合も生じます。
(2)そこで、第2の方法として、PCTと略称される特許協力条約(加盟国は約100ヵ国であり、主要な国はほとんど同条約に加盟しています)に基づく国際出願を行い、複数の国に直接出願したのと同様の効果を得ることができます。PCTは、上記パリ条約の枠内における特別取極めであり、優先権制度による利益も享受することが可能であることに加え、形式的要件について各加盟国を統一しているため、国際出願として適式と認められれば、正規の出願として国際出願日が認定され、その国際出願日が各指定国での実際の出願日として扱われます。したがって、異なる国ごとに異なる形式的要件に煩わされることを回避することができます。また、国際出願は所定の受理官庁に対してその受理官庁が定める言語で行えばよいことになっており、しかも我が国特許庁は受理官庁として日本語での国際出願を受理しているため、1年の優先期間満了の間際でも翻訳の必要がなく、優先権の利益を享受しつつ国際出願することが容易に行うことができます。さらに、PCTは、国際調査制度及び国際予備審査制度を設けており、これらの制度を活用することにより、発明の特許性をある程度予測することが可能となります。
ただし、国際出願は、各指定国に通用する共通の国際特許を付与するための制度ではないため、一定の期間内(一部の国を除いて優先期間よりは18ヵ月以上長い期間内)に国際出願を各指定国につなげるための手続を行わなければなりません。したがって、各国に直接出願するか、PCTを利用するかは、費用的余裕、国数、時間的余裕、出願の目的等を考慮して判断する必要があります。
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