「改正前の法律」という部分の意味によって、お答えが変わってきます。
(1)施行前の法律
ご質問が、「国会で成立した改正法が、まだ施行されていない段階で適用されることがあるのか?」という趣旨であれば、結論から言うと、「改正前の法律が適用されることはありません」。
一般に、法律が「改正された」とは、当該法律が「国会の承認を得た」ときを言います。改正された法律は、官報に掲載されて、国民に対して周知が図られます。
しかし、法律は、「改正され、官報に掲載された」だけではその効力は生じないので、その法律が適用されることはありません。
改正された法律が、その内容で効力を生じるのは、別途定められる「施行日」が到来してからです。また、「法の遡及適用の禁止」は厳に守られるべき原則ですので、「改正されるより前の日」が「施行日」として指定されることはありません。
なお、改正前の法律を根拠にする場合、当該法律の効力は発生しないので、これに基づいた損害も未だ発生しません。したがいまして、当然、損害賠償を請求されることはありません。
(2)旧法の適用
ご質問が、「法律が改正された後も、改正前の法律(旧法)が適用されることがあるのか?」という趣旨であれば、原則的には旧法の適用はありませんが、例外的に旧法が適用される場合があります」というお答えになります。
このような例外として最も多いケースは、当該案件の基礎となる事実や手続が改正前後に時間的にまたがっている場合です。
たとえば、出願日が法改正前であり、法改正後も特許庁で審査されている出願や、法改正前に成立して法改正後も存続している権利などの「継続案件」については、一部の事項がこのような例外になっていることがあります。
その一方で、出願人(権利者)の利益をあまり害さない事項は、このような継続案件についても改正後の法律(新法)が適用されることもありますので、どのような事項が例外であるかは一律には判断できません。
旧法が適用される例外事項は、改正法(新法)の「付則」として「…については、なお従前の例による。」と記載されていますので、これによって確認することができます。
なお、ある行為が、旧法では「適法」とされていたのに新法では「違法」と規定された場合に、旧法時代に行ったその行為にも新法が遡って適用されることによって、旧法時代のその行為について実質的な不利益が生じることはないと考えてかまいません(不遡及の原則)。
このため、たとえば、
(1)新法では出願と同時にある書類Aを提出しなければいけなくなったが、旧法では不要とされていた(旧法時の出願Bについて書類Aを提出していない)、
(2)新法ではある行為Cが違法と規定されたが、旧法では適法とされていたのでその行為Cを旧法時代に行っていた、
というような場合に、出願Bにかかる権利が無効になったり(1)、旧法時代の行為Cに対して損害賠償を請求されたり(2)することはありません。
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