(1)特許も実用新案も、難しい表現を使えば、「自然法則を利用した技術的思想の創作」を保護する点で同じです。
ただ、実用新案の場合は、「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」という条件が付加されます。
したがって、物品の製造方法や、薬等「物品の形状・・・・係るもの」とはいえないものは、特許でしか保護されませんが、それ以外のものは特許でも実用新案でも保護を受けることが可能です。
(2)さて、両者の相違点ですが、
(a)最も大きな違いは、特許では新規性(出願した発明が、従来にはない新しいものであるか否か)等について特許庁で審査をし、この審査を通らないと特許権が得られませんが、実用新案の場合は、前述した「物品の形状・・・・係るもの」という条件など、形式的な条件だけ審査をし、これに通れば実用新案権が得られるということです。つまり、実用新案は、新規性等については無審査で権利が得られるのです。
このため、実用新案では、出願から4~6か月程度で実用新案権が得られますが、特許では、審査を請求してから1年半程度かかるのが一般的です。
(b)つぎに、権利の存続期間が異なります。特許は出願の日から20年ですが、実用新案の場合は出願の日から10年と短くなっています。
(c)また、費用の点についても、特許では、別途審査請求料等が必要となりますので、実用新案の方が2~5割程度割安の料金で権利化できるでしょう。
次の1~5の事項を覚えておくと良いと考えます。
(1)実用新案は無審査で登録がなされます(形式的な要件さえ整っていれば、考案が新規性・進歩性等の登録要件を備えているか否かには関係なく、すべて登録がなされます。)が、権利行使できるのは、登録要件を満たしている登録実用新案だけです。
(2)実用新案は、方法(例えば機械の製造方法、薬剤の製造方法、部品の検査方法等)の創作や、化学物質、組成物自体等の創作は含みません。
(3)電気回路も実用新案法の保護対象となり、コンピュータソフトウェアに特徴がある産業装置の制御装置であっても、実用新案法の保護対象となり得ます。
(4)特許法は、実用新案法の保護対象をすべて保護対象とします。
(5)特許法と実用新案法とのいずれによっても権利を得ることのできる創作が多くある場合は、得られる権利の効力や、権利存続期間、費用、出願から権利取得までに要する期間、製品のライフサイクル等を考慮して選択すると良いと考えます。
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