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特許出願手続(出願時)について

Q日々製品を改良するべく研究開発を行っていると、内容が近い発明が増えていきます。具体的には、当社は廃液処理剤を製造販売しているメーカで、新しい処理剤を開発し特許出願しましたが、その後の試験で処理できる廃液の範囲を広げる有効な添加剤がみつかりました。しかし試験はこれで終わるものではありません。これらについて効率的に権利取得する方法はないものでしょうか。(国内優先権主張出願について)
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開発過程で次々に新知見が見出され、複数の多様な関連発明が生まれることはよくあることです。開発が終了するまで待っていて、他社に先に出願されると、自社の出願は権利化されません。そこで、さしあたり基本発明を先に出願しておいて、その後の改良発明を取り込んだより包括的、網羅的な出願へと発展させて権利化することを目的とする制度として、国内優先権制度があります。
この制度を利用しますと、先にした特許出願(複数出願でもよく、実用新案登録出願でも可)の内容に加えて、新たに開発された発明を1つの出願ですることができます。
ただし、その適用範囲は無制限ということではなく、以下のような、内容的、時間的、手続的に一定の制限があり、これを守ることが必要です。

(1)国内優先権を主張する出願をするときの留意点
a. 内容的には、先に出願した発明と一定の関連を有する発明について出願したときに、後述の効果が得られます(下記(2)の項参照)。例えば、先に出願した廃液処理剤の処理能力を高める添加剤を加えた処理剤の発明、その処理剤の製法の発明等を含めることができます。
特に、先の出願をした後に行った試験の結果、先の出願内容を含めた、より上位概念に相当する発明を出願内容に含めることができるという利点があります。例えば、先の出願ではCa塩を有効成分とした発明である場合に、試験の結果、Ca塩に代えて、あるいはCa塩に加えて、Mg塩やSr塩も有効成分になり得ることが判明しますと、これらをアルカリ土類金属塩として請求の範囲に記載した出願をすることにより、一層広い範囲を権利化できる可能性が生じます。アルカリ土類金属塩は、Ca塩、Mg塩、およびSr塩の上位概念です。
なお、先の出願が既に取下げ、あるいは放棄されていたり、実用新案権の設定登録がなされていたりする場合等、先の出願が一定の例外に該当する場合は、この制度を利用することができません(特許法41条1項)。
b. 時間的には、先の出願の出願日から1年以内に出願する必要があります。先の出願が複数ある場合は、最先の出願の出願日から1年以内に出願することが必要です。
因みに、国内優先権を主張する出願をしますと、先の出願はその出願した日から1年4ヵ月経過後に取り下げられたものとみなされます。重複する内容の出願が併存するのを避けるためです。
c. 手続的には、国内優先権を主張した出願をするには、その旨、及び先の出願の表示をした書面(願書に必要事項を記載することにより提出を省略できます。特許法施行規則27条の4)を特許庁長官に提出する必要があります。
d. その他、出願人は先の出願と同じであることが要件となりますので、先の出願が他社と共願の場合には、他社も出願人にする必要があります。

(2)国内優先権を主張した出願の取り扱い
国内優先権を主張した出願は、以下のように取り扱われます。
a. 国内優先権を主張した後の出願内容の内、先の出願に記載されている内容については、先の出願の日に出願をしたものとして扱われ、先の出願が複数ある場合については、夫々の出願日に出願したものとして扱われます。後の出願のときに追加した内容については、後の出願の出願日に出願したものとして扱われます。したがって、新規性、進歩性、先願性といった特許要件については、夫々の内容に対応して夫々の出願日が判断日となります(特許法41条2項)。
b. 国内優先権を主張した出願は、(国内優先権を主張した後の出願の出願日ではなく)先の出願をした日から1年6ヵ月経過後に出願公開されます。
ただし、審査請求期間や特許存続期間の起算日は、国内優先権を主張した出願の出願日となります。

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