直接的には特許権の侵害とならない行為であっても、侵害に直結する予備的な行為などを侵害行為とみなし、これを排除しようというのが間接侵害の規定です。
特許発明の実施とは、特許発明の構成全体の実施をいいますから、その構成の一部のみの実施は、特許権の侵害(直接侵害)とはなりません。しかし、侵害とならない行為であっても侵害に直結する予備的な行為などを放置すると、特許権の実効が損なわれるおそれがあります。そこで、このような予備的な行為などを侵害行為とみなす(間接侵害)こととしています。
たとえば、特許発明が「ピストンに特徴のあるエンジン」である場合、そのエンジンにのみ使用する「ピストン」(このような場合、ピストンは「専用品」と呼ばれます。)を製造・販売するような行為は「エンジン」の特許権の間接侵害とされるでしょう。間接侵害に対しては、直接侵害の場合と同様に、民事上の措置(差止請求権、損害賠償請求権等)、刑事上の措置(刑事罰)が適用されます。
なお、特許発明の構成の一部であっても、それが汎用品(その特許発明の実施以外にも用途のある部品)である場合には、間接侵害の規定は適用されません。たとえば、エンジンに用いられる一般的なバルブなどを製造・販売するような行為は「エンジン」の特許権の間接侵害とはならないでしょう。
また、特許発明の「エンジン」を製造する行為は直接侵害ですが、製造しなくても、「エンジン」を販売や輸出のために所持する行為は、間接侵害になります。
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