自分が撮影した写真等に他人の著作物が写り込むことは多々あります。撮影した行為はその他人の著作物の「複製」(著作権法第21条)、撮った写真をブログにアップ等する行為は「公衆送信」(著作権法第23条)となり、著作権の侵害に問われるかもしれません。とはいえ、意図的に撮ったわけでなく、他人の著作物がたまたま写り込んだだけで著作権侵害が成立してしまうというのは、あまりにも窮屈過ぎるといえるでしょう。
平成24年の著作権法改正では、いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等への対応がなされました。他人の著作物が写り込んだ写真や映像を撮影等する行為や、撮影した写真等を利用する行為(ブログへアップする等)について、その著作者の許諾を必要としない(著作権侵害とならない)場合について新しい規定ができたのです(著作権法第30条の2)。
著作権侵害にならない場合とはどういうものか。まず、撮影した写真から写り込んだ他人の著作物を分離することが困難である必要があります。「分離が困難」というのは、例えば写真を撮影したときに、他人の著作物を除いて撮影することが一般的に考えて難しい場合です。写真を撮るとき、含まれそうな著作物はすべて撤去してから撮影するというのは非現実的です。意図的に撮ったわけでなく、たまたま写り込んだというのは「分離が困難」といえるでしょう。
次に、写り込んだ他人の著作物が撮影写真へ及ぼす影響が軽微であることも必要です。たまたま写り込んだとはいえ、写真の大半を占めるほど他人の著作物が大きく写っている場合は影響が軽微とはいえません。隅っこに小さく写り込んでいる場合なら影響は軽微といえるでしょう。
このほか、著作権者の利益を不当に害することにならないという条件もありますが、この条件についての判断はケースバイケースとなります。
ご質問によると、旅行へ行ったときの写真であり、人形(他人の著作物)を意図的に撮影したわけでなく写真に人形がたまたま写り込んでいたということですので、「分離が困難」といえます。また、人形は写真の隅の方に写り込んでいる程度ですから、写真に与える影響も軽微といえます。ブログにアップする行為が人形の製作者の利益を不当に害するとは考えにくいので、人形の製作者の許諾を必要としない、つまり、著作権侵害にはならないと考えられます。
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