平成27年度の不正競争防止法の改正で、営業秘密侵害罪は非親告罪となり、告訴がなくても控訴が可能となりました。公判手続等において営業秘密の漏えいが懸念されますが、その対策として営業秘密の秘匿決定や、公判期日外の証人尋問等において漏えい防止の措置が講じられています。
具体的には、営業秘密侵害罪に係る刑事訴訟手続で、証拠として提出する証拠に公開されると自社の事業活動に著しい支障を生じる営業秘密が含まれている場合、裁判所は当事者からの申出を受けて、営業秘密の内容を法廷で明らかにしない旨の「秘匿決定」をすることができます。
申出は、あらかじめ検察官にしなければなりません。秘匿決定の実効性を考えると、起訴後第一回公判期日までに行うのが望まれます。また、申出は営業秘密を構成する情報を具体的に挙げるとともに、秘匿決定される範囲が明確となるように説明することが望まれます。
営業秘密の漏えいが懸念されるのは、被告人等においても同様です。被告人等の保有する営業秘密についても、犯罪の証明や被告人の防御のため等の一定要件下で秘匿決定される場合があります。このように、営業秘密侵害罪の刑事訴訟では、被害者及び被告人双方の営業秘密保護に対する配慮がなされた上で、手続が進行されることとなります。
「秘匿決定」されれば、裁判所は、秘密情報が含まれる特定の事項に仮の名前を付けてその内容が明らかにならないようにしたり、一定の場合には証人尋問の際の尋問内容を制限したり、公開の公判期日以外の日に証人尋問又は被告人の供述を求める手続をしたりするなどの配慮がなされます。
営業秘密として保護されるためには、非公知性、有用性、秘密管理性が必要です。上述の営業秘密を構成する情報の特定を含め文書化して記述し、公証人の確定日付やタイムスタンプを取得しておく日常の努力が望まれます。
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