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平成19年度 弁理士の日 記念講演会ご報告

弁理士の日記念講演会の案内はこちら

日 時 平成19年6月30日(土) 午後1時~5時
会 場 新梅田研修センター
テーマ知財ビジネス最前線
 
~デザイン・ブランド・キャラクターを活かす!~

第1部 講演会 午後1時~3時

「アジアの台頭に勝つための知財ビジネスとは」

~コンソーシアムデザインブランドの実験的活動・METAPHYS~

村田智明 氏(株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役社長)
「ブランドマネジメントの現場から」
~松下電器の実践事例から~

西野吉徳 氏(松下電器産業株式会社 ブランドマネジメント室)
「キャラクター・ビジネスと日本人」
~なぜキャラクター・ビジネスは日本でこれほど成功したのか~

馬場一郎 氏(株式会社講談社 ライツ事業局)
第2部 分科会 午後3時30分~5時




「グローバル基準となるか?日本のプロダクトデザイン」
岩崎建樹 氏(三菱電機株式会社 開発本部デザイン研究所)
村田智明 氏(株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役社長)
川瀬幹夫 氏(三協国際特許事務所 弁理士)





「グローバルに信頼され愛されるブランドを育てる・守る」
松本宗久 氏(ダイキン工業株式会社 法務・知的財産部)
西野吉徳 氏(松下電器産業株式会社 ブランドマネジメント室)
中川博司 氏(三枝国際特許事務所 弁理士)





「世界に誇る日本の文化=キャラクター・ビジネス」

山口康男 氏(日本動画協会 専務理事/事務局長)

馬場一郎 氏(株式会社講談社 ライツ事業局)

中川裕幸 氏(中川国際特許事務所 弁理士)
(順不同)
聴講者数 約280名
概要

第1部

第1部では本年度のテーマである「知財ビジネス最前線」~デザイン、ブランド、キャラクターを活かす!~」に則り、デザイン、ブランド、キャラクターの3つの切り口でご講演して頂きました。

まず、デザインにつきましては、(株)ハーズ実験デザイン研究所の村田様より「アジアの台頭に勝つための知財ビジネスとは」として、村田様が展開されている「METAPHYS」の理念、事例をご説明頂きました。

「METAPHYS」とは、コンソーシアムブランド(様々な企業が共同して形成するマーケットブランド)であり、コアコンピタンス、例えば知財があれば、中小企業であっても活躍の場が出てくることから、物流トータルに対して企画推進されているものです。

また、その中で、デザインがわが国の国策として重視されていないとして、デザイン部門のイニシアチブ、デザイン教育、行政意識、費用・手続等多くの課題を取り上げられ、これらを解決しアジア各国に伍していくために、アジア統一意匠法の制定を期待する、とのご提言を頂きました。

参加者は、知財を中核とする事業展開の実践、国策としてデザインを捉えられている見識に、とても興味を抱いたようでした。

次いで、ブランドにつきましては、松下電器産業(株)の西野様より「ブランドマネジメントの現場から~松下電器の実践事例から~」として、松下における「ブランドの価値を高めること、守ること」の取組みをご説明頂きました。

ブランド価値を高めることについては、商品力、マーケティング力、社会的活動、業績を要件とする管理手法を、ブランド価値を守ることについては、使用やライセンスに当たってのブランドルール、マニュアルの制定・運用を、それぞれご紹介頂きました。

参加者は、日本を代表する企業のブランド運用にふれることができる希少な機会であることからか、真剣にメモを取っているようでした。

最後に、キャラクターにつきましては、(株)講談社の馬場様より「キャラクター・ビジネスと日本人~なぜキャラクター・ビジネスは日本でこれほど成功したのか」として、キャラクター・ビジネスと日本文化の関係を切り口にご説明頂きました。

すわなち、日本人は子供から大人までキャラクター好きであるが、これは戦後の絶対的窮乏期から高度成長期に進む中で、選択的消費(社会通念から逸脱しないが個性的なものを選択する)という行動が定着したためであり、よって、キャラクター・ビジネスのポイントの一つは欠乏感である(希少価値が個性となる)との内容をご紹介頂きました。

参加者は、文化面からキャラクター・ビジネスを捉える考え方が新鮮であり、最後までしっかりと聞き入っていたように思えます。

今回の各講演は、講師の皆様のご経験によるもので、とても実践的であり、参加者や主催者である我々(近畿支部の弁理士)にとって大変有益であったと思います。2時間という時間的制約がある中、貴重なお話をして頂きました講師の皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げる次第であります。

(執筆者:弁理士制度普及委員会委員会 松成
靖典)

第2部 分科会








第1分科会においては、三菱電機の岩崎様より、社内のデザイン組織、製品デザインがどのように行われているのか、デザインにおける知的財産の問題点等につき、具体的な事例とともにご講演頂いた後、第1部でご講演頂いた村田様、本会の川瀬会員とともにパネルディスカッションを行いました。村田様からは、アジア諸国における模倣の実態と、それに対する対処における問題点の指摘がなされました。デザインは公表後実施化まで数年を要する場合や、学生デザインコンテストなども多数開催されているが、実施化前に諸外国も含めた権利取得費用を捻出することは不可能な場合も多く、政策的な取り組みが不可欠であるとのご指摘を頂きました。

法律的な側面ではなく、デザインの現場を主体として知的財産権制度の利用や問題点を採り上げる講演会は支部において過去あまり行っていなかったと思われますが、学生や企業のデザイン部門の方々など、日頃は知財の仕事に携わっていないと思われる聴講者の方々も多く、今回の講演会を通じて弁理士制度をより広く普及できたものと感じられました。

なお、今回、第1分科会の責任者である千原会員の功績により、今回の講演会への出席が、デザイン専門学校の履修単位として認められました。今後開催する講演会においても履修単位として認定されることで、より広く弁理士制度を普及できるものと期待します。

(執筆者:弁理士制度普及委員会委員会 村上 太郎)










まず、コーディネータの中川博司会員による中国商標制度の簡単な説明があった後、ダイキン工業株式会社 松本様の中国における商標模倣事件の事例紹介がありました。

ダイキン工業様の社名商標を、中国の模倣者が、同社が販売しているエアコンと同じ商品区分においては、似てはいるが、商標的には非類似といえる態様で登録し、異なる商品区分においては略同一の商標態様で登録したこと等、模倣の巧妙な手口を生々しくお話されました。そして、知的財産協会やIIPPFにおける積極的な活動を通して、中国において馳名商標を取得できるに至ったことを詳しく説明されました。参加者の興味を強く惹いたお話でした。

松下電器の西野様からは、模倣対策の必要性、ブランドの社員への徹底の方策等、第1部の話の補足説明をしていただきました。

その後、中川博司会員の司会で会場から質問を受け、松本様、西野様に回答をしていただきました。会場からは活発に質問が出て、予定の時間を少しオーバーしてしまいました。

さらに、第2部終了後も、松本様、西野様と直接お話を希望する参加者が絶えず、お二人には約30分もオーバーして参加者の質問等に回答していただきました。

第2分科会に参加していただいた方だけではなく、他の分科会の参加者にも聞いていただきたかった、松本様、西野様のお話でした。

(執筆者:弁理士制度普及委員会委員会 仲谷 男)










最初の15分間は、馬場様より、「キャラクター・ビジネスは生き残れるか?~格差社会で様変わりする消費モチベーションにどう対応していくか~」と題してご講演いただきました。消費者層の変化を切り口としたキャラクター・ビジネスの現状と今後の展望について、歯切れよくお話頂き、参加者もその話術に惹きこまれるように、熱心に耳を傾けていました。

その後、30分間に亘って、山口様より、「アニメ製作現場から‘ネーミング’と商標登録~何が売れる?時代の風は突然変わる!~」と題してご講演いただきました。最初の15分間は、アニメができるまでの工程をDVD上映により分かり易く説明して頂き、その後は、「キャンディ・キャンディ」などの馴染みのあるアニメを実例にとって、裏話を含めた非常に興味深いお話を伺うことができました。

最後に、中川裕幸会員がコーディネータとして加わり、3名でパネルディスカッションをして頂きました。原作、音楽、声優などの各パートで発生する著作権・著作隣接権の権利帰属の関係等、主に法律的な内容について意見が交わされました。このパネルディスカッションには、45分という比較的長い時間をとっていましたが、現場の第一線で活躍しておられる山口様・馬場様をパネリストに迎えたこともあって、時間が全く足りないほど多くの意見が出ました。当初、中川裕幸会員には、海外市場や資金調達、商標権との関係など、非常に多くの資料を用意して頂いておりましたが、時間の都合上、残念ながらその全てについて討論して頂くことはできませんでした。

日本弁理士会近畿支部の恒例行事として毎年行われている弁理士の日記念講演会において、「キャラクター・ビジネス」をテーマとすることは非常に画期的であったため、多くの参加者に集まって頂けるか心配でしたが、それも取り越し苦労に終わるほど大変多くの方々に第3分科会に参加して頂きました。この結果が、来年度以降の記念講演会を運営していく上で非常に大きな財産になると思うと、今回講師を引き受けて頂いた山口様、馬場様、及びコーディネータの中川裕幸会員には感謝の念が絶えません。

(執筆者:弁理士制度普及委員会委員会 吉本 力)



第1部講演の様子
 
第2部第1分科会の様子
第2部第2分科会の様子
 
第2部第3分科会の様子


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