第1部では本年度のテーマである「知財ビジネス最前線」~デザイン、ブランド、キャラクターを活かす!~」に則り、デザイン、ブランド、キャラクターの3つの切り口でご講演して頂きました。
まず、デザインにつきましては、(株)ハーズ実験デザイン研究所の村田様より「アジアの台頭に勝つための知財ビジネスとは」として、村田様が展開されている「METAPHYS」の理念、事例をご説明頂きました。
「METAPHYS」とは、コンソーシアムブランド(様々な企業が共同して形成するマーケットブランド)であり、コアコンピタンス、例えば知財があれば、中小企業であっても活躍の場が出てくることから、物流トータルに対して企画推進されているものです。
また、その中で、デザインがわが国の国策として重視されていないとして、デザイン部門のイニシアチブ、デザイン教育、行政意識、費用・手続等多くの課題を取り上げられ、これらを解決しアジア各国に伍していくために、アジア統一意匠法の制定を期待する、とのご提言を頂きました。
参加者は、知財を中核とする事業展開の実践、国策としてデザインを捉えられている見識に、とても興味を抱いたようでした。
次いで、ブランドにつきましては、松下電器産業(株)の西野様より「ブランドマネジメントの現場から~松下電器の実践事例から~」として、松下における「ブランドの価値を高めること、守ること」の取組みをご説明頂きました。
ブランド価値を高めることについては、商品力、マーケティング力、社会的活動、業績を要件とする管理手法を、ブランド価値を守ることについては、使用やライセンスに当たってのブランドルール、マニュアルの制定・運用を、それぞれご紹介頂きました。
参加者は、日本を代表する企業のブランド運用にふれることができる希少な機会であることからか、真剣にメモを取っているようでした。
最後に、キャラクターにつきましては、(株)講談社の馬場様より「キャラクター・ビジネスと日本人~なぜキャラクター・ビジネスは日本でこれほど成功したのか」として、キャラクター・ビジネスと日本文化の関係を切り口にご説明頂きました。
すわなち、日本人は子供から大人までキャラクター好きであるが、これは戦後の絶対的窮乏期から高度成長期に進む中で、選択的消費(社会通念から逸脱しないが個性的なものを選択する)という行動が定着したためであり、よって、キャラクター・ビジネスのポイントの一つは欠乏感である(希少価値が個性となる)との内容をご紹介頂きました。
参加者は、文化面からキャラクター・ビジネスを捉える考え方が新鮮であり、最後までしっかりと聞き入っていたように思えます。
今回の各講演は、講師の皆様のご経験によるもので、とても実践的であり、参加者や主催者である我々(近畿支部の弁理士)にとって大変有益であったと思います。2時間という時間的制約がある中、貴重なお話をして頂きました講師の皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げる次第であります。
(執筆者:弁理士制度普及委員会委員会 松成
靖典) |