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三会による大学生を対象とした専門家講座

報告者:知財普及・支援委員会 宮下 和晃

日 時 平成28年7月7日(木) 午後4時20分~5時50分
場 所 大阪大学 豊中キャンパス
テーマ 科学者のための財務、法務、知財の基礎~実務家の視点から~
内 容 日本において早くから知的財産の重要性を認識し、知財戦略を実行してきた「キヤノン株式会社の事例」を取り上げ、事業戦略に沿った①権利化、② 権利の活用、③ 収益化について、弁理士、弁護士、公認会計士の三士業がそれぞれの観点からその概要を説明した。
主 催 大阪弁護士会・日本公認会計士協会近畿会・日本弁理士会近畿支部(三会)
講 師 弁護士 細井 大輔 氏(あらた法律事務所)
公認会計士 美藤 直人 氏(美藤公認会計士事務所)
弁理士 鴨 みどり 氏(鴨・井澤合同特許事務所)
対 象 基礎工学部生(主に大学院生、一部3回生) 約400名
報 告  日本において早くから知的財産の重要性を認識し、知財戦略を実行してきたキヤノン株式会社(以下「キヤノン」という)の事例を題材として、①公認会計士、②弁理士、③弁護士が、それぞれの士業について学生に対して簡単な説明、紹介を行ったのち、キヤノンに実際に起こった事例(インクタンク事件)を通じて、①収益構造、②知的財産権(特許権)の権利化、③知的財産権(特許権)の活用とそれぞれの視点からリレー形式で講義を行った。
 具体的には、
 ①公認会計士の美藤氏が、キヤノンの事業内容、貸借対照表、損益計算書等の会計の基礎的事項を説明した後、キヤノンの収益構造を分析し、多額な研究開発費用を拠出している点、その収益構造は消耗品(インクカートリッジ)に大きく依存している点について指摘した。
 ②次に、弁理士の鴨氏が、特許権についての基礎的事項を説明し、その中でも特許請求の範囲(権利の範囲)についての考え方を六角鉛筆の事例を使い、説明した上で、権利者が物品を正規販売した後の特許権の効力について、具体的な事例(シャチハタスタンプとキヤノンのインクタンク)を用いて消尽の概念と、またその後中古品の修理、再補充等の行為との関係を説明し、特許権の侵害になるのか、非侵害になるのかの判断の仕方について簡潔に説明した。
 ③最後に、弁護士の細井氏が、実際に起こった裁判例であるインクタンク事件(キヤノン)の事例について説明をし、民事訴訟の基礎的事項についても解説をしつつ、再補充等の行為が、同一性を欠く新たな製品の製造になるのか否かについての最高裁判所の判断について解説を行い、特許権の活用方法として裁判によるもの以外にもライセンス契約というものもあることを説明した。
 講義の最後には、当該三士業による実務者講座のまとめとして、細井氏より、本講義の聴講者は理系の学生であることを踏まえ、理学、工学の知識、見識だけではなく、実際に社会にでて企業で事業活動をしていく上では、会計知識、知財知識、法律知識が備わっていた方が仕事の幅を広げていくうえで重要であることを説明して講義を締めくくった。
 本講義責任者である北山辰樹先生(基礎工学研究科)からは、当該インクタンク事件では特許権侵害以外で争う余地はあるのかとの質問があり、細井氏が、状況にもよるが、商標権、不正競争防止法による対処も一般的にはある旨回答した。

以上






講座風景(美藤直人氏)

講座風景(鴨みどり氏)

講座風景(細井大輔氏)


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