HOME > 知財支援活動 > セミナー情報 > 報告 > 日本弁理士会近畿支部・大阪中小企業診断士会  2016年度合同セミナー報告書

日本弁理士会近畿支部・大阪中小企業診断士会  2016年度合同セミナー報告書

日 時 平成29年2月22日(水)午後6時30分~8時30分
場 所 マイドームおおさか 8階 第3会議室
主 催 日本弁理士会近畿支部・一般社団法人大阪中小企業診断士会
テーマ 収益性向上のためのアイデア創造から活用まで~弁理士・中小企業診断士の連携支援~
講 師 第1部講演:牧 隆志 氏(近畿経済産業局 特許室長)
第2部講演:後藤 昌彦 氏(弁理士 中小企業診断士)
      若松 敏幸 氏(中小企業診断士)
      岡野 眞人 氏(弁理士)
受講者 59名(中小企業診断士19名、弁理士24名、一般16名)
担 当 日本弁理士会近畿支部 知財普及・支援委員会
内 容   セミナーは、大池委員の司会進行により、ほぼ定刻通りに開始された。冒頭に、大池委員から本セミナーを開催するに至った経緯などについて説明があった。具体的に、①日本弁理士会近畿支部と一般社団法人大阪中小企業診断士会は、企業経営および知的財産に関する支援のさらなる向上を図ることを目的とする協働支援に関する覚書を締結していること、②連携事業の一環として両会の会員を対象とした研修会を過去2年に亘り開催してきたこと、③両士業が連携していることや両士業によりサポートできることなどを広く理解いただき知的財産に対する興味を持って頂くために本年度のセミナーの参加枠を一般の方々に拡大したことについて説明された。
  続いて、一般社団法人大阪中小企業診断士会の原副理事より、開会のご挨拶を頂いた。原副理事は、両士業の役割を説明された。さらに、原氏は、中小企業を強力にサポートするために両士業がどのように連携すべきかについて模索・検討し、両士業が中小企業のお役に立てる情報を継続的に提供していく方針であることなどを話された。
  第1部講演では、牧氏より「地域での知財活用活性化に向けて~中小・ベンチャー企業向けの知財支援施策~」とのテーマでご講演頂いた。牧氏は、まず近畿経済産業局の特許室を紹介され、国内外および近畿管内の出願動向などを確認された。また、牧氏は、流行のIoTによるビジネス構造の変化に乗り遅れないようにするために情報・資金など各方面からの様々な施策を展開していることを話された。特に、中小企業に対する支援施策として、支援策・知財制度の紹介を行っていること、知財に関する悩みや相談を受付ける無料相談窓口が設置されていること、INPIT近畿統括拠点(仮称)を2017年10月までに設置予定であることなどを紹介された。
  また、弁理士・中小企業診断士に対する要望として、現在展開している各種の支援施策を十分に理解いただき中小企業等に活用を促すこと、中小企業等をINPIT近畿統括拠点へ繋ぐ橋渡し役をお願いしたいこと、中小企業等に対する支援に関する課題をシェアしたいことなどを挙げられた。
  続いて、第2部講演では、トップバッターとして、後藤氏により「企業経営における知的創造サイクル」とのテーマでご講演頂いた。後藤氏は、両士業の連携による支援が効く経営課題の一つとして「収益性の向上」を挙げられた。「収益性の向上」に繋がる連携パターンとして、中小企業診断士が独自の「価値」を創造する役割を担い、その「価値」を弁理士が製品・サービスに具現化して知的創造サイクルを回す役割を担うことを提言された。
  後藤氏は、以前勤務されておられた大手家電メーカーでのご経験についても話された。事業部と開発部が連携し、おいしいお米を焚いて提供することで有名なお店の協力を得つつ、独自形状の釜を用いた炊飯器を開発・販売し、過去最高の利益を上げたというものであった。中小企業等の場合においても、弁理士・中小企業診断士と連携したチームを編成することにより、大手企業と同等の結果を生み出すことができる可能性は十分にあると話された。
  次いで、若松氏により「知的創造サイクルを循環させるために中小企業診断士にできること」とのテーマでご講演頂いた。若松氏は、昨今のマーケティングが機能的特性と便益にフォーカスした伝統的マーケティング(モノ発想)から顧客の経験価値にフォーカスした経験価値マーケティング(コト発想)に変化していること、ウォークマンの成功例がコト発想の典型であることなどを話された。
  また、若松氏は、実際に手掛けた新製品開発支援・マーケティング支援の事例や、関東経済産業局によって纏められた「知財戦略コンサルティング活用事例集」を取り上げて具体例を説明された。最後に、事業計画やマーケティングなどに関しては中小企業診断士がサポートし、事業計画やマーケティングに含まれる「知財戦略」に関しては弁理士がサポートするといったような、中小企業診断士と弁理士とが連携した実例を近畿で作っていきたいと今後への意気込みを語られた。
  第2部講演の締め括りとして、岡野委員により「知的創造サイクルを循環させるために弁理士にできること」とのテーマでご講演頂いた。岡野委員は、まず、企業価値を向上させるための知的財産の保護について説明された。商標権の保護対象が拡大していること、農業関連の商品を例にして特許のみならず意匠や商標によっても保護できることなどを話された。また、技術的にわかりやすい事例を用いて特許になるレベルやそこに至るまでの着眼点などについて説明された。続いて、企業の特許活動についても触れられ、特に、他企業と共同研究開発する場合において、創造段階では守秘義務契約を結ぶ必要性、活用段階では特許法第73条などを考慮して契約ですみ分けを図っておく必要性について説明された。
  また、岡野委員は、権利取得によるメリットとして参入障壁の形成を挙げられた。参入障壁のパターンとして、製品全体を独占する新価値創造型と、製品の部分を独占する改良型とを紹介され、製品自体ではなくその製品に用いられる消耗品に着目して上手く参入障壁を築いた中小企業の実例について紹介された。さらに、岡野委員は、権利取得によるメリットのみならず、権利取得に至るまでの知的財産活動自体にもメリットがあることを説明された。その例として、自社技術の強みを分析して新製品開発に結びつけた企業、報奨制度などを採用して人材育成に結びつけた企業、顧客のニーズに応える製品開発により信用力強化に繋げた企業などを紹介された。
  最後に、日本弁理士会近畿支部の中塚副支部長より、閉会の挨拶を頂いた。中塚副支部長は、セミナーの参加枠を一般の方々に拡大したことで弁理士・中小企業診断士を知って頂く良い機会になったこと、今後も引き続き会員のみならず一般の方を含めて連携事業にご協力頂きたいこと、一般の方々が弁理士・中小企業診断士を上手く活用いただく一助になるように今後も連携事業を継続していくことなどを話され、今回のセミナーの幕を閉じた。




以 上
(報告者:知財普及・支援委員会 白井宏紀)



« 戻る