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パテントセミナー2024 第4回 報告書


日  時 令和6年11月9日(土)午後2時~3時40分
場  所 京都リサーチパーク KRP西地区 ルーム1
テ ー マ 第4回「創業387年、酒を科学して快を創る、月桂冠の酒造りと知的財産」
講  師 弁理士 石田 博樹 氏 
受 講 者 36名
内  容

 以下の9構成でご講義いただいた。

1.100年研究所設立
 1637年創業。中興の祖である大倉恒吉の時代に、灘の酒に追いつき、いつの日か肩を並べることを目標として、経験と勘だのみだった酒作りに科学技術を導入すべく、大卒の技師を採用し、清酒メーカー初の研究所を創設する(1909年)。
 研究所初の成果として、「防腐剤なしのびん詰」を発売し、1911年には全国新酒鑑評会で第1位を獲得。また、列車が揺れてもお酒がこぼれない「コップ付き小びん」の実用新案を取得し、鉄道網の広がりに伴って商品の流通が拡大する。
 お酒の王様になることを夢見て「月桂冠」を商標登録する。

2.戦後の発明
 1961年には、先端技術を駆使し、年間を通じて酒作りができる四季醸造蔵を創設する。
 融米造りの実用化、リンゴやバナナ様の香り物質を高生産する酵母の育種法、業界初の常温流通が可能な生酒、糖質ゼロ清酒、日本酒テイストのノンアルコール飲料、プリン体ゼロ清酒、桃の香りの日本酒の開発等、常に斬新な発明で清酒業界をリードし、数々の特許を取得する。

3.新規事業と特許
 酒粕が黒くなる原因がメラニンであることや、清酒麹菌からメラニン生成酵素が生じることを突き止めて学会発表をしたところ、花王からメラニンを白髪染めに利用したいとの申し出があり、共同研究をスタート。その後も日本酒麹菌が作るデフェリフェリクリシンが、美白効果、皮膚バリア機能促進効果等を有することを発見し、甲南大学との共同研究において、癌細胞の死滅作用があることを解明した。清酒造りから得られた知見を異業種に展開して、新規事業につなげている。

4.月桂冠の特許群
 特許よりもノウハウとして保護するほうが圧倒的に多く、公証人役場等を利用して、どの時期に何をしていたかを客観的に立証できるようにしている。
 保有特許は現在55件で、そのうち清酒と清酒製造装置が半分強を占め、残りは染毛料等の異分野の特許が占めている。

5.人材育成
 試作段階の日本酒を世に出し、お客様の反応を確認して改善につなげる「Gekkeikan Studioプロジェクト」を行っている。
 社外セミナー活用の他、社内では、特許出願の検索方法、特許出願とノウハウ秘匿の使い分け、発明発生時の相談等について知財教育を実施している。

6.海外市場
 カリフォルニアで30年以上前から日本酒を作っている。過去3年で世界47か国に進出し、輸出量は業界第2位である。

7.商品化につながった事例
 燻製の香りの元となる4-VGを生産しない酵母や、カプロン酸エチル(りんご様の香り)高生産酵母を開発し、商品化につなげている。

8.酒とは
 酒は昔から世界各地で神にささげられており、仲間との親交を深めるためにも役立ってきた。「アルコールが人間の脳に作用し、創造力に火をつけたおかげで、言語、芸術、宗教が発展した」という言葉もあるように、お酒は昔から人々の交流や文化の発展に寄与してきたと思われる。



以上

(執筆者:関西会 知財普及・支援委員会 大角 菜穂子)






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