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パテントセミナー2010 兵庫(午前の部・午後の部)の報告

日  時 平成21年2月6日(土)
●午前の部: 午前10時~午後0時30分
●午後の部: 午後1時30分~午後4時00分
場  所 神戸市産業振興センター
テーマ ●午前の部
  中国ビジネスと知財
  ~中国での知財権保護の落とし穴(日中相違、法改正を意識して)~
●午後の部
  中国ビジネスと知財 ~模倣対策とライセンス契約の充実について~
講  師 ●午前の部  弁理士 小倉 啓七
●午後の部  弁理士 中尾 優
受講生 ●午前の部 94名
●午後の部 98名
コメント 午前の部は、日本弁理士会近畿支部知財制度普及委員による主催者挨拶に始まり、続いて、「中国ビジネスと知財」という大きなテーマのうちの、「中国での知財権保護の落とし穴」というサブテーマの部分について、小倉啓七先生による講義がありました。この講義の中心は、中国子会社で商品開発した(共同研究開発した)場合の留意点と、中国への技術移転をする場合の問題点でした。小倉先生による講義の中で印象深かった点は、日本企業が、中国企業をライセンシーとしてライセンス契約をする場合には、(1)「技術の完成性の保証」(ライセンサー(日本企業側)は、提供技術が完全で瑕疵なく、有効で目標を達成できることを保証しなければならない)、(2)「侵害責任の保証」(提供技術が他人の権益を侵害した場合は、ライセンサー(日本企業側)が責任を負わなければならない)、(3)「改良技術の利用」(技術輸入契約の存続期間内に改良した技術の成果は、改良した側(中国企業側)に帰属する)という点に留意する必要があるという点でした。小倉先生の講義は、聴講者参加型(私もよく参加させられました)の講義で、しかも、話し振りが熱のこもったものであったため、雪の降る中の講義であったにも拘らず、非常に活気に満ちていました。最後の質疑応答の時間には、企業の方々から多くの質問が出て、2時間半の講義時間が非常に短く感じられました。
午後の部は、兵庫地区会会長(喜多秀樹会員)による挨拶の後、「中国ビジネスと知財」という大きなテーマのうち、「模倣対策とライセンス契約の充実について」というサブテーマの部分について、中尾優先生による講義がありました。午前の講義を担当された小倉先生は、中尾先生のことを、「上海料理の元料理長」と紹介されていましたが、正確に言うと、中尾先生は、「上海総領事館の元領事(りょうじ)」をされていた、中国事情に詳しい方です。先生のお話の中心は、模倣品対策の要は、知財の配備であり、海外事業形態に応じた知財配備が重要であるという点にあったように思います。そして、知財配備の強化策として、「商標権侵害の予防策」としては、中国での商標使用を管理する現地体制を整えることが重要であるとの見解を述べられました。また、「合法的模倣防止策(日米欧の特許公開公報で検索して中国で未出願であれば中国人が実用新案・意匠を冒認出願してしまうことを防ぐ策))」としては、製品に使用する技術・デザインのうち、リバースエンジニアリングできてしまう技術については、中国でも特・実又は意匠の出願をしておくべきであり、逆に、リバースエンジニアリングできない技術については、特許出願せずにブラックボックスとすべきであるとの見解を述べられました。中尾先生の中国知財についての研究成果と種々のご経験に裏打ちされた有意義な講義であったと思います。
最後に、喜多地区会長をはじめ、兵庫地区会のご協力に大変感謝申し上げます。


講師:小倉 啓七 氏


会場の様子
   


講師:中尾  優 氏


会場の様子

執筆者:近畿支部知財制度普及委員会 水田 愼一

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