HOME > 関西会について > 研究活動 > 大阪地裁判決要約 > 平成17年11月24日 大阪地裁 平成16年(ワ)8657号

平成17年11月24日 大阪地裁 平成16年(ワ)8657号
- 意匠権侵害損害賠償請求事件 -

事件名
:輸液バッグ事件
キーワード
:意匠権に対する抗弁、先使用権の成否
関連条文
:意匠法29条、29条の2
主文
:原告の請求をいずれも棄却する。


1.事案の概要
本件は、輸液バッグに関する意匠権を有する原告が、被告らが製造販売する輸液バッグ(ダブルバッグタイプの輸液バッグで、製剤収納側(抗生剤フルマリン静 注用1g)の袋体と溶解液収納側(生理食塩水100ml)の袋体とからなる)の意匠が、原告の前記意匠権に係る登録意匠に類似し、その製造販売が原告の意 匠権を侵害するとして、被告らに対し、損害賠償を請求した事案である。


2.争点及び判決の要旨
(1) 本件登録意匠の要部は、輸液バッグの製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体との境界部におけるいわゆるダンベル形状のシール部であり、イ号意匠は本件登録意匠に類似する点では、争いがない。
(2) 主な争点は、先使用による通常実施権の成否である。
(3) 裁判所の判事事項は、以下のとおりである。
各証拠および前記認定によれば、検乙第7号証は、被告の取引先に納入されたもののうちの一つであると認めるのが相当である。
以上のことから、検乙第7号証に係る意匠は、有用性試験が行われた当時までに創作され、本件登録意匠の出願当時、完成されもしくは完成に近い状態にあったものと認められる。
そうとすると、被告らは、本件登録意匠に類似する検乙第7号証に係る意匠について、意匠法29条により本件登録意匠について通常実施権を有するというべき である。したがって、検乙第7号証に係る意匠と実質的に同一であるイ号意匠に関する被告らの先使用の主張は理由がある。


3.執筆者のコメント
本件登録意匠の出願前実施である事業の準備をしていた検乙第7号証に係る意匠が、本件登録意匠に類似し、また、本件登録意匠の出願後実施していたイ号意匠 も、本件登録意匠に類似していて(本件の場合、争いがない。)、さらに、検乙第7号証に係る意匠とイ号意匠とは実質的に同一であることが認定された。ゆえ に、先使用権が認められた。
先使用権の存在を立証する証拠として、本件では、他の証拠をも総合して、デジタルカメラの撮影、コンピュータ内に保管された写真も採用された。


(執筆者 大和田隆太郎 )


« 戻る