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平成17年10月27日 大阪地裁 平成16(ワ)12489号
- 商標権侵害及び不正競争行為差止等請求事件 -

事件名
:ビジョンメガネ事件
キーワード
:商標の類否、商品等表示の周知性
関連条文
:商標法2条3項 36条 37条 38条
不正競争防止法2条1項1、2号 3条 4条 民法709条
主文
:原告の請求をいずれも棄却する。


1.事案の概要
本件は、眼鏡等の小売業を営み、商標権を有する原告が、被告が開設した店舗の看板等に被告標章を使用している被告に対し、
(1) 被告標章は原告の登録商標に類似し、その使用は商標法2条3項各号所定の登録商標の使用に該当し、商標権を侵害する、
(2) 被告標章の使用行為が原告の著名又は周知な商品等表示である「ビジョンメガネ」「ビジョン」等と同一若しくは類似の商品等表示の使用に該当し、原告の商品ないし営業との混同を生じさせる不正競争防止法2条1項1号又は2号に当たる
と主張して、商標法36条又は不正競争防止法3条に基づき、被告標章の使用の差止め等を求めるとともに、民法709条又は不正競争防止法4条に基づき、商標権侵害ないし営業上の利益を害されたことによる損害賠償を請求している事案である。


2.争点及び判決の要旨
(1)商標権に基づく請求について
ア 被告標章は商標として使用されているものであるか。
イ 被告標章は原告商標に類似するか。
(2)不正競争防止法に基づく請求について
ア 被告標章は「商品等表示」として使用されているか。
イ 原告商品等表示は不正競争防止法2条1項1号、2号の周知・著名性を取得したか。ウ 被告標章は原告商品等表示と類似し、原告商品等表示との混同のおそれがあるか。
(3)原告の被った損害額について


3.判決要旨
(1)イ (商標の類似)について
A原告商標について
原告は、原告登録商標「VISION」が周知・著名商標であると主張する。しかし、認定事実によれば、「ビジョンメガネ」は周知性が認められるが、 「VISION」は「ビジョンメガネ」の付随的なものとして使用されているというべきであり、また、「ビジョン」が原告の略称として周知性を獲得したとは いえない。さらに、「VISION」を構成の一部分とした他の登録商標が多数存在し、「VISION」の識別力は比較的弱いものといわざるを得ない。
B 被告標章について
被告商標「VISION SQUARE」は、「眼鏡を提供する者とこれを求める者とが出会う広場」というイメージの造語である。被告標章は「ビジョンスクエア」と称呼され、直ちに 特定の観念を生じさせないが、上記の観念を生じさせると認められる。また、被告標章は「VISION」の外観、称呼、観念を生じることもない。
C類否について
原告商標は、被告標章と外観、称呼、観念においても相違し、両者を同一又は類似の商品に使用しても相紛れることもなく、商品の出所について混同するおそれはないから、類似しないというべきである。
(2)イ(原告の商品等表示の周知性)及び(2)ウ(被告標章との類似性)について
「VISION」それだけでは周知性を取得しているとはいえず、「ビションメガネ」は、不可分の商品等表示として周知性を取得したものにほかならない。したがって、「ビジョンメガネ」以外は周知性が認められない。
「ビジョンメガネ」と「ビジョンスクエア」とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似しないから、両者に混同が生じるおそれがあるとも認められない。


4.執筆者のコメント
原告の登録商標が周知性を取得する途中でも、他の登録状況に注視し、行動を常にとることが重要である。このケースの場合、「ビジョンメガネ」でなく、「ビ ジョン」で周知性を取得する戦略が取れなかったものか。ただ、「ビジョン」は普通名称化し易いという問題点があると思う。


(執筆者 大和田隆太郎 )


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