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平成17年7月28日 大阪地裁 平成16(ワ)6549号
- 特許権侵害差止等請求事件 -

事件名
:ボイドスラブ施工事件
キーワード
:特許権の侵害、均等
関連条文
:特許法101条3号及び4号
主文
:原告らの請求をいずれも棄却する。


1.事案の概要
(1)「ボイドブロック固定金具,ボイドブロック,ハーフユニット及び簡易浮き止め金具,並びにこれらを用いたボイドスラブ施工方法」に関する特許権・独 占的通常実施権を有していた原告らは、被告が製造,使用等するユニット金具及びボイドブロック並びに被告がそれらを使用して行うボイドスラブの施工方法が 特許権を直接又は間接侵害すると主張して,それらの製造,使用等の差止め及びユニット金具の廃棄を請求するとともに,損害賠償を請求した事案である。


2.主な争点及び判決の要旨
(1)イ号製品の構成については、工事方法の当否の問題はともかく、実際に被告がどのようなイ号製品を使用して工事を行っているかということである。
したがって,被告のイ号製品は,逆V型鋼線とボイドチューブとの間に3㎜又は5㎜の間隙を有するものであると認められる。

(2)イ号製品が,本件発明1の構成要件Bb,Bd及びCの「ボイド型枠の…外縁が当接される鉄筋を有する」「ボイド型枠固定筋」,構成要件Dの「ボイド型枠固定金具」の要件を充足するか否かについて
明細書の記載からすると、本件発明1の「ボイドブロック固定金具」は,内部に挿通されるボイドチューブを文字どおり「固定」するものであり,「当接」による摩擦ないし圧力によってボイド型枠を「固定」することとしたものと解される。
このような解釈は,本件発明の出願経過によっても基礎づけられる。
そうすると,本件のイ号製品では,本件発明1の「ボイド型枠固定筋」に相当する逆V型鋼線(スペース保持鉄筋)と,本件発明1の「ボイド型枠」に相当する ボイドチューブ(円筒型スチロール)との間に3㎜又は5㎜の間隙を有しているから,「当接」の要件を満たさず,それによりボイド型枠を「固定」していると もいえない。
したがって,本件のイ号製品は,文言上,本件発明の構成要件を充足しない。

(3)この点の相違に関する原告らの均等の主張について
本件発明は,軽量素材のボイド型枠をボイドブロック固定金具に組み込んで,軽量のボイドブロックを作り,ボイドブロックを工場で製作して現場に搬入した上 で,ボイドブロックを移動させることができるようにして,人件費を削減して作業効率を上げる効果を有することを一つの大きな特徴とするものであり,本件発 明のボイドブロック固定金具においては,ボイド型枠固定筋がボイド型枠と「当接」し,それによりボイド型枠を「固定」する構成が,特徴を生み出す重要な要 素となっているのであるから,イ号製品はこの本質的部分において相違があるものというべきである。
よって、イ号製品が本件発明1と均等なものということもできない。


3.執筆者のコメント
文言解釈、均等の主張について本質的部分の相違、意識的除外について、判示したものである。


(執筆者 岡田  全啓 )


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