商標・役務(サービス)の国際分類について |
- Q.商品・役務(サービス)の区分について教えて下さい。
- A.
商標登録出願は、「商品及び役務の区分」に従って、商標を使用する1又は2以上の商品又は役務を指定して行わなければなりません。この「商品及び役務の区分」とは、商品及び役務(サービス)を45のグループに分類したものです。各グループに属する商品や役務は、その概要が商標法施行令別表に、その具体的な内容が商標法施行規則別表に掲載されています。商標登録出願する際には、後者の商標法施行規則別表に掲載されている商品又は役務を指定しなければなりませんのでご注意下さい。
第1類~第34類が商品、第35類~第45類が役務です。
商標法施行令別表に記載されているそれぞれの区分に属する商品・役務の概要は、以下の通りです。
第1類 工業用、科学用又は農業用の化学品
第2類 塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品
第3類 洗浄剤及び化粧品
第4類 工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤
第5類 薬剤
第6類 卑金属及びその製品
第7類 加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械
第8類 手動工具
第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具
第10類 医療用機械器具及び医療用品
第11類 照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生用の装置
第12類 乗物その他移動用の装置
第13類 火器及び火工品
第14類 貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計
第15類 楽器
第16類 紙、紙製品及び事務用品
第17類 電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック
第18類 革及びその模造品、旅行用品並びに馬具
第19類 金属製でない建築材料
第20類 家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの
第21類 家庭用又は台所用の手動式の器具、ガラス製品及び磁器製品
第22類 ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維
第23類 織物用の糸
第24類 織物及び家庭用の織物製カバー
第25類 被服及び履物
第26類 裁縫用品
第27類 床敷物及び織物製でない壁掛け
第28類 がん具、遊戯用具及び運動用具
第29類 動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物
第30類 加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料
第31類 加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料
第32類 アルコールを含有しない飲料及びビール
第33類 ビールを除くアルコール飲料
第34類 たばこ、喫煙用具及びマッチ
第35類 広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(下線部は平成19年4月1日から施行)
第36類 金融、保険及び不動産の取引 F41
第37類 建設、設置工事及び修理
第38類 電気通信
第39類 輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配
第40類 物品の加工その他の処理
第41類 教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動
第42類 科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発
第43類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供
第44類 医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務
第45類 冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するものを除く。)、警備及び法律事務
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商標登録出願手続(出願時)について |
- Q.商標登録するための出願手続について教えて下さい。
- A.
商標登録出願は、商標法施行令で定めている商品及び役務の区分に従って、1つ又は2つ以上の商品又は役務を指定して、1つの商標ごとにしなければなりません。
「商標法施行令で定める商品及び役務の区分」というのは、商品及びサービスを45のグループに分類したものですが、各グループに属する商品やサービスの事例は商標法施行規則に別表として掲載されていますので、これを参考にして商品やサービスがどのグループに入るかを決めた上で、それぞれの商品及びサービスとその区分(グループ)を指定して出願しなければなりません。
1つの区分(グループ)内では商品又はサービスをいくつ指定しても、特許庁に支払う料金(特許印紙代)は同じですが、商品又はサービスの区分が増えますと、増えた区分の数に応じて料金が加算されます。
また、商標登録出願は1つの商標ごとに行わなければなりませんので、1つの出願にいくつもの商標を含めることはできません。ただし、文字と図形を組み合わせたもの、文字と文字を組み合わせたものや図形と図形を組み合わせたもの等であっても、全体として1つの商標と認められるものについては、1つの出願に含めることができます。
その他、商標登録出願に、出願人の氏名又は名称等を記載した一定の様式を用いて出願しなければなりません。
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- Q.新しいタイプの商標(音、動き商標、色彩のみ)について出願する際に、どのような出願手続をすればよいでしょうか。
- A.
文字、図形等の従来から登録の対象となっていた商標の出願手続と基本的には同様です。つまり、文字、図形等の出願の場合と同様に、商標登録を受けようする商標を、願書に記載します。ただし、願書への記載方法は、新しいタイプの商標ごとに異なりますので注意を要します。
たとえば音商標では、五線譜によって表現するか、五線譜で表現できない場合は、どういう音かを文章によって表現しなければなりません。また、動き商標の場合、一連の動きがわかるように複数の図または写真を記載しなければなりません。
また、商標のタイプによっては、願書以外の物件を併せて提出しなければならない場合があります。たとえば音商標の場合、出願に係る音を所定の方式で記録したCD-ROMを出願時に提出しなければなりません。また、出願商標について詳細な説明を記載する必要がある場合もあります。たとえば動き商標の場合、一連の動きの順番や動き全体にかかる時間などを願書の「商標の詳細な説明」に記載する必要があります。
また、色彩のみの商標では、色彩を特定するための色彩名、三原色(RGB)の配合率、色見本帳の番号、色彩を組み合わせた場合の各色の配置や割合等を、願書の「商標の詳細な説明」に記載する必要があります。また、色彩を付する位置を特定する場合には、色彩を付する商品等における位置(部位の名称等)について記載する必要があります。
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- Q.商標登録出願をする前にすべきことはありますか。
- A.
せっかく出願しても、その商標が他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品や役務(サービス)に使用するものである場合は、商標登録を受けることはできません。したがって、出願する前に、このような他人の登録商標がないかどうか調査しておくことが必要となります。
調査方法としては、商標検索専用のデータベースを利用する方法、特許庁(工業所有権情報・研修館)のホームページの商標検索サービスを利用する方法、特許庁が発行する商標公報を利用する方法等があります。
このほか、商標法第15条に規定されている商標登録出願が拒絶されることになっている理由に該当するかについても検討しておく必要があります。
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- Q.商標登録出願の前に調査をしたところ、同じマークで他社の登録商標が発見されました。どのような対処法をとることが可能ですか。
- A.
商標が同一でも、指定商品・役務が非類似だと商標登録される可能性があります。例えば、あるマークが他社により指定商品を「チョコレート」として商標登録されている場合に、自分が、そのマークと同一のマークについて、指定商品を「テレビ」として商標登録出願をしたとしても、同一のマークが他社により商標登録されているからとの理由で拒絶されないのが原則です。それぞれの指定商品である「チョコレート」と「テレビ」が非類似だからです。従って、指定商品・役務が非類似であるならば、そのまま商標登録出願をすればよいでしょう。但し、他社の登録商標が著名・周知な場合は出願が拒絶される可能性があります。
一方、指定商品が同一類似の場合は問題です。他社の登録商標の存在を理由に拒絶されるのが原則だからです。この場合、商標を非類似なものに替えて商標登録出願すればよいのですが、どうしてもその商標にこだわるのであれば、以下のような手段があります。
1.問題となっている他社の登録商標を買い取り、名義書換をする。指定商品が同一ならば、これで商標登録出願をする必要はなくなります。指定商品が類似ならば、その指定商品について、商標登録出願をすればよいのです。名義書換により他人の登録商標ではなくなるので、拒絶理由がなくなっているからです。
2.問題となっている他社の登録商標をなくす。他社の登録商標がなくなれば、これを理由に商標登録出願が拒絶されることはなくなります。登録商標をなくす手段としては、異議申し立て、無効審判、取消審判等があります。例えば、問題となっている登録商標が過去3年間継続して使用されている形跡がなければ、特許庁に対して、不使用を理由にした取消審判を請求できます。
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- Q.外国で商標を登録するにはどのような方法がありますか。
- A.
外国で商標を登録するには、対応する各国で、商標出願を行う必要があり、方法として、大きく2つあります。
一つ目は、直接、商標登録を希望する国に出願をするルートです。
現地の特許事務所など、いわゆる現地代理人に依頼して、出願を行うルートです。下記で説明するマドプロ出願のように、基礎出願等の制約もなく、一般的なルートといえます。
二つ目としては、商標の国際的な商標登録制度を利用して、加盟国に出願をするルートです。
マドプロ出願とも呼ばれており、基礎となる日本登録又は日本出願をベースに各国に出願する方法で、下記のメリットがあります。
(1)一度の手続で複数国に権利取得が可能です。
(2)複数の商標権の管理が容易になります。存続期間の更新が、国際事務局に対する一回の手続で可能となるため、個別の権利についての期間管理が不要になります。
なお、上記のいずれのルートを選択するかは、基礎出願・基礎登録の有無、出願国、出願商標の態様、指定商品・役務等を考慮して、事案ごとに判断していただくことになります。判断に迷う場合は、是非、弁理士に相談していただければと思います。
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商標登録の異議申し立て制度について |
- Q.他人の登録商標に対して、異議申し立てをすることは可能ですか。
- A.
どなたでも、商標掲載公報の発行の日から2月以内に限り、特許庁に対して、他人の商標登録の異議申し立てをすることが可能です。
異議申し立て理由の例としては、本Q&Aの「登録を受けることができない商標」と同じになりますが、
・その商品・サービスについて一般的に用いられている名称のみからなる商標(例えば、商品「ワードプロセッサ」について「ワープロ」、サービス「ホテル等の宿泊施設の提供」について「観光ホテル」等の商標)
・商品の産地、品質、商品の形状等を表す商標(例えば、「東京」、「グッド」、「四角形」やサービス「宅配便」について「はやい」、等の商標)
・ありふれた氏又は名称のみからなる商標(例えば、「TANAKA」、「高橋株式会社」等の商標)
・簡単でありふれた図形、文字等のみからなる商標(例えば、「○」、「△」等の図形、ローマ字や数字等の1字又は2字からなる商標)
・日本又は外国の国旗、菊花紋章、赤十字のマーク、国際連合その他の国際機関のマーク、都道府県・市町村のマーク等と同一又は類似の商標
・他人の登録商標と同一又は類似の商標であって同一又は類似の商品について使用するもの
・他人の有名な商標と同一又は類似の商標等他人の商品や役務と出所を混同せられるおそれのある商標
などが挙げられます。
なお、特許庁への異議申し立てはそのまま認められるとは限られず、特許庁が商標登録を取り消す決定をする前に、商標登録を持つ者が特許庁に対して反論してくる場合もあります。
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- Q.先日、特許庁から商標登録の異議申立に関する書類が送られて来ました。これに対しては、どう対処すべきでしょうか。
- A.
商標登録後の異議申立制度においては、異議申立があった場合には、その旨を商標権者に知らせるため、まず商標権者に異議申立番号が通知され、その後に異議申立書副本が送付されます。
従来の登録前の異議申立制度では、異議申立書副本の送付を受けた出願人は、これに対して通常は答弁書を提出していました。が、登録後の異議申立制度では、異議申立書の副本を受け取ったとしても、商標権者は答弁書を提出しなくてもよいのです。特許庁(審判官)が異議申立の理由について職権で審理し、商標法第43条の2第1号又は第2号に該当しないと判断したときは、商標登録維持の決定をします。一方、審理の結果、審判官が商標登録を取り消すべきと判断を したときは、商標権者に対して、商標登録の取消理由を通知してきますので、この通知を受けた場合に、商標権者は意見書を提出すればよいのです。
なお、異議申立の理由を解消するためであっても、登録後は、指定商品又は指定役務の一部を削除する補正はできませんので、指定商品等の補正に代えて、指定商品等の一部について商標権を放棄する登録申請を行うことになります。
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商標権の効力・存続期間・更新について |
- Q.商標権にはどのような効力がありますか。
- A.
商標権は、特許庁で商標が登録をされることによってはじめて得られる権利ですから、特許庁に商標登録出願をしただけでは商標権は発生しません。
特許庁で商標が登録されて商標権が発生しますと、登録を受けた商標を、登録に際して指定した特定の商品やサービス(役務)に独占して使用できることになり、又、これについて他人から文句をいわれるおそれもなくなります。
商標の使用は、商品そのものに直接商標を表示することだけでなく、商品の容器・包装紙や下げ札に商標を表示すること等も含まれています。また、サービスの提供に際して使用する物(例えば、ホテルの寝具やレストランの食器・ナプキン等)に商標を表示することや商品又はサービスに関する広告等に商標を表示することも商標の使用になります。
商標権が発生すると、その登録商標を指定した特定の商品やサービスに独占して使用できるだけでなく、もし他人が登録商標やそれに類似した商標を、その指定商品又はサービスやそれに類似するものに使用したときは、そのような使用をした他人に商標の使用を止めさせることができ、更に、他人の使用によって生じた損害賠償を請求することができます。
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- Q.商標権の存続期間は何年ですか。
- A.
商標権が有効に存続する期間は登録された日から10年間となっていますが、10年ごとに期間を延長するための更新登録申請を行い、所定の登録料を納付すれば、10年間ずつ期間を更新することができますので、商標権は実質的に永久に存続させることができます。
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- Q.商標権の更新登録をする際に、指定商品等を変えることは可能ですか。
- A.
商標権の存続期間の更新登録を申請する際、指定商品等の表示内容の変更はできません。
一方で、更新登録の対象が2区分以上の複数の区分からなる場合、区分を減らして、更新登録の必要な区分のみ更新登録の申請を行うことが出来ます。
具体的な方法としては、更新登録申請書に、「商品及び役務の区分」の欄を設けて、更新登録が必要な区分を記載して更新登録の申請手続きを行います。
従いまして、更新を機会に、更新の対象となっている商標の使用状況を確認することをお勧めします。
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- Q.わが社の登録商標に類似する商標を付した商品(同一又は類似の商品)が、外国から輸入されています。市場に出回るのをやめさせたいのですが、何か方法はあるでしょうか。
- A.
今回のケースのように、貴社の登録商標に類似する商標を付した商品が、外国から輸入されている場合、このような輸入行為は、登録商標に類似する商標の使用行為に当たり、貴社はそのような輸入行為の中止を求めることができます。このような他社商品が市場に出回るのを阻止する方法として、以下の二つがあります。
(1)輸入貨物に対しては、税関における輸入差止
(2)市場に出回っている商品に対しては、差止請求
(1)税関における輸入差止
商標権侵害が疑われる貨物が輸入されている場合、貴社は、税関長に対して、貨物の輸入を差し止めるよう認定手続を申し立てることができます(輸入差止申立制度)。差止申立書に必要事項を記載し、所定の資料等を添付したものを、いずれか一か所の税関に提出します。複数の税関を対象に輸入差止申立てを行おうとする場合でも、一の税関に対して申立すればよく、各税関に輸入差止申立を行う必要はありません。
なお、「認定手続」とは、商標権侵害が疑われる貨物について、侵害商品に該当するか否かを認定するための手続をいいます。認定手続の結果、侵害商品に該当すると税関が認定した場合、その貨物は税関に没収されることになります。
詳細は税関の「知的財産ホームページ」ご覧下さい(検索エンジンにて「税関 知的財産ホームページ」と検索して頂くと、ご覧になれます。)。
(2)差止請求
既に市場に出回っている商品については、販売者に対し、商標権侵害商品の販売を止めるよう、求めることができます。また、在庫商品について、その商品から、貴社の登録商標に類似する商標の表示を削除するよう求めることもできます。
上記に加えて、侵害者に対し、侵害行為によって生じた損害を賠償することを請求することも可能です。
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- Q.外国語や漢字の文字商標によみがなを付記して登録している商標を見かけますが、なぜ、よみがなを付記しているのですか。
- A.
外国語や漢字で表記された文字商標の場合、それらの読み方が需要者に理解されないおそれがあります。商標名が人から人へ伝達され広告宣伝機能を発揮することを考慮すれば、商標の読み方が需要者に理解をされないとすると、その商標を付した商品、役務について需要を拡大するうえで不利となります。このような不利益を回避するため、外国語や漢字の文字商標を、よみがなを付記して使用するとともに、これらを商標登録することは有効な手段といえます。
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- Q.商標権侵害とは何ですか。
- A.
商標権侵害とは、登録商標を使用する正当な権利や理由のない者が、業として、登録商標を登録されている指定商品や指定役務について使用する行為をいいます。また、登録されている範囲と同一のものに加えて、商標または指定商品・指定役務の類似範囲での使用も商標権侵害となります。
ここでいう商標の「使用」には、例えば、商品や、商品パッケージ等に商標を表示することに加えて、商品またはパッケージ等に商標が付された商品を販売・輸出・輸入することや、インターネット上で販売すること等も含まれます。また、サービスの提供の際に使用する物(例:レストランの食器やタクシーの自動車等)に商標を表示することや、その商標が付された物を用いてサービスを提供すること、画面上に商標を表示してサービスを提供すること(例:オンラインでの英会話レッスンにおいて画面上に商標を表示すること)、さらに、商品またはサービスに関する広告等に商標を表示することなども、商標の「使用」に当たり、これらの行為も侵害行為になります。
しかし、ここでいう「使用」と言えるためには、商標的に使用していることが必要になります。すなわち、商標として(自他商品・役務の識別標識として)使用していない場合には、商標権侵害には該当しません。例えば、商品や商品パッケージに使われている文字であっても、商標として使用されていないような単なる飾り文字や説明語句などは商標権侵害の対象にはなりません。
「業として」の使用が商標権侵害の対象になります。よって、家庭内での商標使用は商標権侵害の対象にはなりません。
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商標(登録)表示について |
- Q.商品の名前の右肩に「R」や「TM」がついていますが、これはどういう意味ですか。
- A.
®は、“Registered”の略で登録商標であるとの告知記号、TMは、“Trade Mark”の略で商標であるとの告知記号、SMは、“Service Mark”の略でサービスマークであるとの告知記号であり、いずれも米国発祥です。特には1946年に米国商標法(Ranham Act)が制定された時、その第29条に、表示を怠れば原則として損害賠償請求権を失う旨の規定を置いたことから、俄然世界の注目を浴び、一挙に世界に知られました。以来、半世紀以上経過した現在は世界で通用する登録告知記号となったといえます。例えば、漢字国である中国ですら商標法実施条例で®を商標登録告知記号と認めています。また、スペイン語国であるペルーでは、ペルーで未登録の商標に®を付せば制裁を科しています(Legislative Decree No.23)。
なお、上記米国ランナム法(ランハム法は誤読)第29条は現在も存在しますが、表示が無いから「損害賠償を請求できない」とか「請求されないで済む」と考えるのは早計です。(R)、TM、SMなどの表示を付す・付さないは、わが国を含むどの国においても商標使用者の自由意思に委ねられており、付さないからといって罰則はないからです。例えば、わが国商標法第73条は「登録商標である旨の表示を付するように務めなければならない」と訓示していますが、違反しても罰則はありません。また、商標法施行規則第17条は、「登録商標第○○○号」、「国際登録第○○○号」のように表示すべしと定めていますが、圧倒的に®が使用されています。
逆に未登録商標にを付した場合は、わが国の法令に規定がないので裁判で争点になるかもしれませんが、理論上、明白な虚偽表示です。従前存在しなかった新商品・新役務が次々に登場する昨今、何年か前に商標登録したハウスマークを新商品・新役務に使用すれば、指定商品・役務外の使用、即ち虚偽表示になりかねないので注意すべきです。ちなみに、わが国商標法第80条は、虚偽表示にについて刑事罰を科し、その量刑を3年以下の懲役又は300万円以下の罰金と定めています。
ところで、わが国では商標権は特許庁に設定登録しないと発生しませんが、米国では商標を通常の国際又は州際商取引の場で使用すれば商標権が発生し(使用主義)、商標登録は商標権発生の要件ではありません。商標権は、その商標を米国領域内で最先に使用した者に帰属します(先使用主義)。このことを踏まえて、®表示・TM表示・SM表示の意義を理解しておくべきです。
例を挙げて説明します。「JUMBO」という文字を付した「ソーセージ」を米国で最初に販売した人がいたとします。もしその使用態様が「JUMBO」であれば、「JUMBO」は連邦商標登録済であることを一般に告知することになります。連邦特許商標局は、商標登録するに当り審査を行うため、の表示は、「JUMBO」なる語が識別性要件(使用による識別力、即ちsecondary meaningの発生の判断を含む)の有無について審査したうえで登録が認められたことを意味します。したがって、商標権者は、「JUMBO」の語は「ソーセージがジャンボサイズである」ことの表示ではなく、「JUMBO印のソーセージ(出所標識)」の意に解すべきであると告知していると主張でき、被告が「『ジャンボサイズ』の意であると信じたのであって悪意は無かった」と抗弁することを許しません。
では、TM表示・SM表示についてどうでしょうか。TMがTrade Markで,SMがService Markのことであることは、米国の取引者・需要者に容易に理解されますので、「JUMBOTM」の態様で使用しておれば、使用者は「JUMBO」の語を「ジャンボサイズのソーセージ」ではなく、「JUMBO印のソーセージ」即ち出所標識として使用している旨を告知していると主張できます。「JUMBO」のように本質的な識別性に疑義がある商標であって、連邦登録の審査を受けていない場合にTM表示は、被告が「『ジャンボサイズ』であるとの表示であると認識したから使用したのだ」と抗弁するのを封じるのに役立つでしょう。この裁判の帰趨は、米国におけるソーセージの需要者が「JUMBO」の語をどう認識するか次第です。
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不使用取消審判と無効審判について |
- Q.不使用取消審判について教えてください。
- A.
不使用取消審判とは、登録商標が一定期間使用されていないことを理由に、その商標登録を取り消す審判です。
この審判により商標登録を取り消すためには、
(a)商標権者又は使用権者が、審判請求前3年間、一度も登録商標を指定商品等に使用しておらず、かつ、
(b)不使用について正当な理由がないことが、要件となります。
自分がこれから使いたい商標について、すでに他人の商標登録が存在するが、実はその他人は使っていないような場合に、他人の商標登録を取り消す方策として挙げることができます。
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- Q.私は商標「ABC」を商品Xに使用したいと思い、商標調査をしたところ、他人がすでに商標「ABC」に関する権利を保有していることが判明しました。この場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
- A.
この場合、次の方策が考えられます。
1)不使用取消審判の請求
この審判請求により、商標登録「ABC」を取り消すためには、
(a)商標権者又は使用権者が、審判請求前3年間、一度も登録商標「ABC」を商品Xに使用しておらず、かつ、
(b)不使用について正当な理由がないことが、要件となります。
なお、取消審判において、請求人は、上記(a)、(b)を立証する必要はありません。登録商標「ABC」の商標権者(被請求人)側に、上記(a)又は(b)について立証する責任が転嫁されているからです。
2)譲受け交渉
この方策は、商標「ABC」の登録から未だ3年が経過していない等の事情がある場合に有効です。譲受け交渉が不調に終わった場合に、不使用取消審判の請求をするつもりの場合には、当該他人(商標「ABC」の商標権者)への譲受けの申し入れは内容証明郵便等により行うのがよいでしょう。
3)使用権の設定交渉
使用権には、その商標を独占的に使用できる専用使用権と、独占的ではないが使用を許される通常使用権とがあります。
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- Q.無効審判について教えて下さい。
- A.
商標登録の無効審判とは、利害関係人の請求により、無効理由を有する商標登録を無効にして消滅させる審判です。
無効理由を有する商標には、もともと登録されるべきでなかったのに誤って登録された商標や、登録後に商標登録に不適となった商標などがあります。
前者(誤って登録された商標)の例としては、本Q&Aの「登録を受けることができない商標」と同じになりますが、
・その商品・サービスについて一般的に用いられている名称のみからなる商標(例えば、商品「ワードプロセッサ」について「ワープロ」、サービス「ホテル等の宿泊施設の提供」について「観光ホテル」等の商標)
・商品の産地、品質、商品の形状等を表す商標(例えば、「東京」、「グッド」、「四角形」やサービス「宅配便」について「はやい」、等の商標)
・ありふれた氏又は名称のみからなる商標(例えば、「TANAKA」、「高橋株式会社」等の商標)
・簡単でありふれた図形、文字等のみからなる商標(例えば、「○」、「△」等の図形、ローマ字や数字等の1字又は2字からなる商標)
・日本又は外国の国旗、菊花紋章、赤十字のマーク、国際連合その他の国際機関のマーク、都道府県・市町村のマーク等と同一又は類似の商標
・他人の登録商標と同一又は類似の商標であって同一又は類似の商品について使用するもの
・他人の有名な商標と同一又は類似の商標等他人の商品や役務と出所を混同せられるおそれのある商標
などが挙げられます。
後者(登録後に商標登録に不適となった商標)の例としては、
・日本又は外国の国旗、菊花紋章、赤十字のマーク、国際連合その他の国際機関のマーク、都道府県・市町村のマーク等と同一又は類似の商標
・商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれのある商標
などが挙げられます。
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- Q.数年前、私は商標Aについて商標権を取得しました。ところが、最近になって私の登録商標Aに類似する商標Bが第三者によって登録商標Aの指定商品と同一の商品について使われていることを知りました。そこで、調査したところ、商標Bも登録商標Aの指定商品と同一の指定商品について登録されていました。もちろん、私の登録商標Aの出願日は、登録商標Bより前です。登録商標Bに対する手段はあるのでしょうか。
- A.
1)無効審判を請求する。
無効審判とは、利害関係人の請求により、無効理由を有する商標登録を無効にして、商標権をはじめからなかったものとして消滅させる審判です。登録商標Bは、他人の先願である登録商標Aと類似しており、登録商標Aの指定商品と同一の商品を指定商品としていますので、無効理由を有しています。したがって、あなたは、特許庁に無効審判を請求することができます。但し、登録商標Bの登録日から5年以内に無効審判を請求することが必要です。そして、審理の結果、無効にすべき旨の審決がなされ、その審決が確定すると、登録商標Bの商標権は、はじめからなかったものとして消滅します。
2)商標権侵害訴訟を提起する。
上記無効審判によって、登録商標Bの商標権が消滅したにも拘わらず、商標Bの使用をその第三者が止めない場合には、裁判所に商標権侵害訴訟を提起することができます。
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