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たとえば、このようなQ&A があります!



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特許出願手続(出願後)について
Q.出願の分割について教えて下さい。
A.

(1)出願の分割について
出願の分割とは、二以上の発明を含む特許出願の一部を新たな出願とすることを言います。分割された新たな出願は、所定の要件を満たすことで、原出願(分割の元になる出願)の出願時に出願したものとみなされます。

(2)出願の分割の必要性について
「物」と「その製造方法」等、発明の単一性を満たす一定の関係にある複数の発明は一出願することができます(特許法第37条)。しかし、一旦出願した後になって、やはり別出願にした方が良いと考える場合や、単一性を有さない複数の発明を誤って一出願の特許請求の範囲に記載した場合等、特許出願の一部を分割して新たな出願とすることで不都合を解消できます。拒絶理由の応答として、拒絶理由が解消できる補正(例えば、拒絶理由が指摘されていない従属請求項に請求項1を限定する等)により元出願により確実に権利化を図っておきつつ、権利範囲の広い出願当初の請求項1を分割出願で別途争うということもできます。また、特許請求の範囲を拡大できないような補正の制限がある場合等には、分割出願を行うことでより広い範囲の権利を取得する可能性を残すことができます。

(3)出願の分割の時期的条件
[1]明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる時又は期間、[2]特許査定謄本送達後30日以内(一部例外有り)、[3]最初の拒絶査定謄本送達後3ヶ月以内に限られます。なお、補正ができる時又は期間についての詳細は、「手続の補正について」の項をご覧下さい。

(4)出願の分割のその他の条件
a. 分割出願の「特許請求の範囲」に記載された発明は、原出願における出願当初の明細書又は図面に記載されていたものでなくてはなりません。したがって、原出願の明細書又は図面に記載されていない発明を分割出願とすることはできません。
b. 原出願の「特許請求の範囲」に記載された発明と分割出願の「特許請求の範囲」に記載された発明とが重複しないようにしなければなりません。そのため、分割出願を行った場合、通常は原出願の明細書又は図面を補正します。この補正は分割出願と同時に行う必要があります。
c. 分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面は原出願について補正できる範囲のものでな くてはなりません。したがって、分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面が、原出願の出願当初の明細書、特許出願の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含んでないことが必要となります。

(5)分割出願の条件に違反した場合の取扱い
分割出願の条件に違反した場合、その分割出願は原出願時に出願したものとはみなされず、現実に分割出願を行った時に出願されたものとして新規性や進歩性の判断が行われます。その場合、分割出願が原出願の公開より後にされた出願であると、原出願により分割出願が拒絶されることになるので権利化できません。

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Q.特許出願、実用新案登録出願、および意匠登録出願を相互に変更できると聞きました。これについて説明して下さい。
A.

(1)出願の変更について
出願日を維持しつつ出願の形式を変更することを言います。具体的には、次の出願相互における形式の変更が可能です。
特許出願⇔実用新案登録出願
特許出願⇔意匠登録出願
実用新案登録出願⇔意匠登録出願
なお、出願の変更ではありませんが、登録済みの実用新案から特許出願することが可能です。

(2)出願の変更の必要性について
特許出願をしてみたものの、その発明が機能的に新規なものでないとわかったが、外観形態としては新規なため、意匠登録出願に変更する場合や、実用新案法では保護対象となっていない「方法」について実用新案登録出願してしまったため、特許出願に変更する場合等が挙げられます。

(3)出願の変更の時期的条件
次のように、変更の種類によって異なります。
a.実用新案登録出願→特許出願
実用新案登録出願の日から3年を経過するまで可能です。
b.意匠登録出願→特許出願
その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3ヶ月を経過するまで又はその意匠登録出願の日から3年を経過するまで可能です。
c.特許出願→意匠登録出願
その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3ヶ月を経過するまで可能です。
d.実用新案登録出願→意匠登録出願
実用新案が設定登録されるまで可能です。
e.特許出願→実用新案登録出願
その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3ヶ月を経過するまで又はその特許出願の日から9年6ヶ月を経過するまで可能です。
f.意匠登録出願→実用新案登録出願
その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3ヶ月を経過するまで又はその意匠登録出願の日から9年6ヶ月を経過するまで可能です。

(4)出願の変更のその他の条件
変更出願の内容とできるのは、原出願(変更前の出願)の出願当初に記載されていたものに限られます。出願変更は出願形式の変更であり、出願日の遡及と言う効果を伴うためです。

(5)条件を満たさない出願の変更をした場合の取扱い
出願変更の条件に違反した場合、その出願は原出願時に出願したものとはみなされず、現実に出願変更を行った時に出願されたものとして登録要件が判断されます。

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出願公開制度について
Q.出願公開制度について教えて下さい。
A.

現行の特許法では、特許出願の日から一年六月を経過したときは、すべての出願について公開する、いわゆる出願公開制度を採用しています。公開は特許庁の発行する特許公開公報に出願書類全文を公開することにより行われます。これは、新しい技術を公開した者にその公開の代償として独占権を与えようとする特許制度の目的を達成するための重要な制度です。

この技術の公開は、特許された技術のみを公開する特許公報によってでも、当然達成され得ますが、特許公報による公開は、審査の結果が出た後であることが前提であり、現在の特許法のように、審査請求制度を採用し、審査を受けたい場合でも3年以内に審査請求をすればいいという制度の下では、特許公報による公開だけでは出願技術の公開がいつのことになるかわからないほど遅延し、特許法の目的である産業の発達が達成されないおそれがあります。

この点から、出願公開制度で、出願技術を自動的に早く公開して産業の発達を促進させようとする点にこの制度のもっとも大きい意義があります。

ただし、この制度では、権利化されるかどうかとは全く関係無く出願内容が自動的に公開される点に注意する必要があります。つまり、出願公開されたものは玉石混交の状態であり、必ずしもすべてが特許されるものではないと言うことです。したがって、公開公報に自分の実施している技術と抵触する出願があった場合、慌てることなく十分に調査して、その出願が本当に権利化されうるものかどうかを見極めることをお勧めします。

また、出願公開の効果として、補償金請求権の発生があります。すなわち、出願人は、出願公開された発明と同じ発明を実施する者に対して、ロイヤリティ相当の補償金を請求することが出来ます。ただし、どんな場合にも補償金を請求できるわけではなく、出願人が実施者に警告を発することが条件であり、且つ補償金の請求は、出願が特許された後にしか行えません。このように補償金請求権は、特許後の侵害に対応するものではなく、出願を早期に公開することによる出願人の不利益を補償することに主眼を置いたものです。

なお、出願公開は出願から1年6ヵ月経過してから行われますが、近年の技術開発の高速化に、これではついて行けないと言う指摘もあり、平成12年1月1日より、申請のあったものについては、1年6ヵ月を経過しないものについても出願公開する早期公開制度が導入されました。

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Q.自社で実施している技術に近い内容の発明について他社が出願していることを出願公開公報で見つけた場合、どのような対策をすべきですか?
A.

出願公開公報に掲載されている発明は必ずしも権利化されているとは限りませんので、直ちに特許権を侵害しているというわけではありません。ただし、既に権利化されている場合は、特許権侵害の恐れもありますので、注意が必要です。そこで、まずは、実際に権利化されているかどうかについて、登録された特許権が掲載されている特許掲載公報の発行の有無等により、調べるとよいでしょう。

未だ権利化されていなければ、将来的に権利化されることも想定して自社の実施内容を見直すか、権利化された場合に備えて、特許を取消ないし無効化するための準備をしておくのが得策です。以下、段階に応じて取り得る措置を説明します。

(1)刊行物提出書
出願が特許庁に係属中であれば、刊行物提出書により当該出願に係る発明に関連性のある刊行物を特許庁に提出し、審査官に積極的に情報を提供することで特許の阻止を図ることが可能です。

(2)異議申立
既に権利化されており特許掲載公報発行後6ヶ月以内の異議申立期間であれば、特許庁に対して特許に対する異議を申し立てて、進歩性違反等の取消理由を具体的に指摘することで、特許の一部又は全部について取り消しを求めることが可能です。

(3)特許無効審判
既に権利化されている場合は、異議申立期間が過ぎていても、特許の一部又は全部の無効を求める特許無効審判を請求することができます。無効審判では、権利者と請求人との当事者同士で特許の有効・無効を主張し合うことになります。

上記の(1)刊行物提出書、(2)異議申立、(3)特許無効審判請求は、いずれも専門的な知識が求められる手続ですので、できるだけ早期に知的財産の専門家である弁理士にご相談されることをお勧めします。
なお、特許掲載公報に記載された特許発明の技術と自社技術とが似ている場合でも、自社の実施技術が当該特許発明の技術的範囲外であれば、特許権の効力は及びません。特許発明の技術的範囲の検討や自社技術が特許発明の技術的範囲に属しているか否かの判断には専門的知識が必要ですので、知的財産の専門家である弁理士に鑑定を依頼するのが得策です。

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特許権の効力・存続期間について
Q.特許権の存続期間について教えて下さい。
A.

特許権の存続期間は、つぎのとおりです。

存続期間の始期
存続期間は、特許権の設定登録の日から開始します。この設定登録がなされるためには、特許査定がなされ、その謄本送達後一定期間内に特許料の納付等をする必要があります。

存続期間の終期
存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了します。なお、この存続期間は、その末日が休日にあたるときであっても、その日に終了します。

期間の延長
医薬品等の分野では、安全性の確保等のために、法律の規定により一定の処分を受けなければ、特許発明の実施ができない場合があります。そこで、このような理由で、特許発明を実施することができなかった場合には、延長登録出願により5年を限度として存続期間を延長することができます。

なお、存続期間中は特許権は法律上有効に存在し、存続期間が満了しますと、特許権はその満了後に消滅します。そして、特許権が消滅しますと、何人も当該特許発明を自由に実施することができるようになります。また、この特許権に係る実施権、質権等も消滅します。

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Q.自社で特許権を取得している製品Aを販売していたところ、他社から当該他社の特許権を侵害しているとの警告を受けました。このようなことがあるのでしょうか?
A.

「特許権とはどのような権利ですか。」のQに対する回答にも記載しているように、特許権とは特許を受けた発明を特許権者が一定期間独占的に実施することができる権利 (独占排他権といわれます)ですので、特許権を取得している製品Aの販売は誰にはばかることなくできるはずだというのが、素直な考え方でしょう。しかし、たとえ特許権者であっても自分の特許発明を自由に実施できない場合があります。例えば、その発明が先に出願された他人の特許発明(以下、先願特許といいます)を利用するものである場合です。

具体的には、先願特許として「天板と脚4本を有する机」という発明があるとします。製品Aが「本棚と天板と脚4本を有する机」である場合、あるいは「天板と高さ調節可能な脚4本を有する机」である場合、製品Aは先願特許の利用発明となります。このような場合、たとえそのような机についての特許権を取得していても製品Aを販売することは、先願特許権の侵害となってしまいます。

特許権は独占排他権ですので、1つの発明について、1つの特許権のみが付与されます。同一の発明について2以上の出願があった場合には審査において出願日を基準に判断され、最先に出願されたものにのみ特許権が付与されます。しかし、先願と利用関係にあっても新規性、進歩性等の基準を満たしていれば特許権が付与されるため、こういった事態が生じる可能性があるのです。

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Q.クレーム(特許請求の範囲)という言葉を聞きましたが、発明とクレームはどういう関係にあるのですか。
A.

クレーム(特許請求の範囲)とは、特許出願人が、特許を受けようとする発明を特定するために必要な事項を記載したものであり、特許された後に権利範囲を定める基準となるものです。

特許法は、発明を開示した代償として特許権という独占権を与え、それによって産業の発達に寄与することを目的とするものであります。このため、願書に添付する明細書には発明の詳細な説明の欄を設けて発明を十分開示し、同時に開示したものの中から特許を受けようとする発明を特許請求の範囲に記載し特定する必要があります。特許請求の範囲は特許出願人が開示した発明の中で権利化を望む発明を特定したものです。したがって、発明の詳細な説明中に開示されていても特許請求の範囲に記載されていない発明は、権利を主張することはできません。また、発明の詳細な説明に開示されていない発明には、開示の代償としての特許は付与されませんから、そのような開示されていない発明は特許請求の範囲に記載しても特許を受けることはできません。

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Q.特許権とはどのような権利ですか。
A.

(1)特許権とは、特許を受けた発明を権利者が一定期間独占的に実施することができる権利であり、財産権の一種です。このような特許権を得るためには、発明の内容を記載した書類を願書とともに特許庁に提出し、審査官の審査を受けて特許査定を受ける必要があります。

(2)特許権は、動産や不動産といった有体物を対象とする所有権とは「独占排他性を有する」という点において似ていますが、「発明」という無体物を対象としているため、目に見えた占有という行為の対象とすることはできません。また恒久的な権利ではなく(すでに一般的になった技術にいつまでも特許権を付与しておくと、技術進歩の障害となるからです)、権利の存続期間は出願の日から原則として20年と制限されています。

(3)特許権を有する特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有します。ここで、「業として」とは、事業としてという意味で、「権利を専有する」とは、他人を排して特許権者のみが独占的に実施する権利を有するという意味です。

このような特許権の効力は、積極的効力と消極的効力とに分けることができます。
〔積極的効力〕
特許権者は自ら特許発明を独占的に業として実施することができ、また、第三者に実施権や質権等を設定することができます。
〔消極的効力〕
特許権者は、自らの特許発明を正当な権原なき第三者が業として実施する場合に、この実施を排除することができます。このような実施が行われていると、特許権侵害を構成するものとし、民事上の措置(差止請求、損害賠償請求等)、刑事上の措置(刑事罰)が認められています。また、特許法では、特許発明の内容全体の実施に至らない場合でも、特許権侵害を誘発する可能性が高い態様の行為については特許権侵害(これを「間接侵害」と言います。)にあたるものとみなして、そのような行為を禁止する規定も設けられています。

(4)一方、このような特許権の効力が制限される場合があります。他人の権利と利用・抵触の関係にある場合や、専用実施権を設定した場合には、特許権者自らの実施が制限されます。また、他人の実施が試験・研究のための実施である場合や、他人が通常実施権、法定実施権、裁定実施権を有してる場合等は、特許権の効力は及ばず他人の実施を容認せざるを得ない場合があります。

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Q.専用実施権と通常実施権との違いを教えてください。
A.

(1)いずれの実施権も特許発明の実施をすることができる権利であるという点で共通していますが、専用実施権者は特許発明の実施をする権利を専有するのに対して通常実施権者はこのような専有はできません。
したがって、専用実施権が設定された場合には、特許権者といえども、その専有する範囲については、特許発明を実施することができませんし、当然のことながらこの範囲と重なるような専用実施権や通常実施権を設定することはできません。
一方、通常実施権の場合は、同一の範囲において複数の主体に対して実施権を設定することができます。

(2)また、専用実施権は特許権者の許諾によるものだけですが、通常実施権には、それ以外にも法定実施権(先使用による通常実施権等)と裁定実施権(不実施の場合の裁定実施権等)とがあります。

(3)専用実施権者は、特許権者と同様に、その権利を侵害する者に対して自己の名において差止請求や損害賠償請求をすることができます。

(4)通常実施権は、単に特許権者に対し実施を容認することを請求する権利にすぎませんので、通常実施権者は、特許権侵害をしている者に対して差止請求等をすることはできません。

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特許権侵害について
Q.どのような場合に特許権の侵害となりますか?
A.

特許権の侵害は、「直接侵害」と「間接侵害」とに分けられます。間接侵害についてのQ&Aは別途に設けているため、以下では「直接侵害」について説明をします。

特許権者以外の第三者がライセンスを受けることなく業として特許発明を実施している場合に、特許権の侵害(直接侵害)となります。個人的又は家庭内での特許発明の実施は、業としての実施とは言えず、特許権の侵害とはなりません。

第三者が実施している物又は方法が特許発明に該当するか否か(特許発明の保護範囲に含まれるか否か)は、特許公報における【特許請求の範囲】の記載に基づいて判断されます。【特許請求の範囲】には、1つ又は複数の請求項が記載されています。【請求項1】に記載された特許発明について説明すると、第三者が実施している物(以下、「対象物」という)が、【請求項1】において文言で表された構成要件を全て充足する場合は、特許権の侵害となります。構成要件の一部でも充足しない場合は、特許権の侵害とは原則なりません。

例えば、請求項1に記載された特許発明がAとBとCの3つの構成要件を備えている場合において、対象物がAとBとCを備えていれば特許権の侵害となり、AとBしか備えていなければ特許権の侵害とはなりません。なお、対象物がAとBとCの3つの構成要件を備えている限りは、対象物がさらにDを備えていても特許権の侵害となります。

また、構成要件の一部を充足しない場合でも例外的に特許権の侵害となる場合があります。つまり、上記の例で言うと、対象物がCではなくC´を備えているといったように、対象物の構成と特許発明の構成とが少し異なる場合でも特許権の侵害となる場合があります。詳しくは、均等論についてのQ&Aをご参照ください。

特許権を侵害しているか否かの判断は、高度な専門知識を必要としますので、弁理士にご相談ください。

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Q.間接侵害の規定について教えて下さい。
A.

直接的には特許権の侵害とならない行為であっても、侵害に直結する予備的な行為などを侵害行為とみなし、これを排除しようというのが間接侵害の規定です。

特許発明の実施とは、特許発明の構成全体の実施をいいますから、その構成の一部のみの実施は、特許権の侵害(直接侵害)とはなりません。しかし、侵害とならない行為であっても侵害に直結する予備的な行為などを放置すると、特許権の実効が損なわれるおそれがあります。そこで、このような予備的な行為などを侵害行為とみなす(間接侵害)こととしています。

たとえば、特許発明が「ピストンに特徴のあるエンジン」である場合、そのエンジンにのみ使用する「ピストン」(このような場合、ピストンは「専用品」と呼ばれます。)を製造・販売するような行為は「エンジン」の特許権の間接侵害とされるでしょう。間接侵害に対しては、直接侵害の場合と同様に、民事上の措置(差止請求権、損害賠償請求権等)、刑事上の措置(刑事罰)が適用されます。

なお、特許発明の構成の一部であっても、それが汎用品(その特許発明の実施以外にも用途のある部品)である場合には、間接侵害の規定は適用されません。たとえば、エンジンに用いられる一般的なバルブなどを製造・販売するような行為は「エンジン」の特許権の間接侵害とはならないでしょう。

また、特許発明の「エンジン」を製造する行為は直接侵害ですが、製造しなくても、「エンジン」を販売や輸出のために所持する行為は、間接侵害になります。

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Q.購入した特許製品を使用したり、転売することは特許権の侵害となりますか?
A.

特許法では「特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有する」と規定されています(特許法第68条)。したがって、特許権者以外の者が、正当な権原なく、事業として特許発明に係る製品を使用したり販売したりすることは、原則として特許権の侵害となります。

しかしながら、特許製品が正当に販売された場合には、その特許製品については特許権が「消尽」するものと考えられています。特許製品が、特許権者により適法に市場に置かれた時点で、特許権はその目的を達成して、その効力は消耗し尽くされたものと考えられているからです。したがって、特許権者または正当な販売権を有する者が日本国内において特許製品を販売した場合には、その特許製品を購入した者は、それを自ら使用したり、転売しても、特許権の侵害にはなりません。例えば、特許に係る生産装置を特許権者から正当に購入した企業が、その生産装置を事業のために使用する行為は、特許権の侵害にはなりません。また、特許に係る電化製品を特許権者から正当に購入した販売店が、その電化製品を消費者に販売する行為も、特許権の侵害にはなりません。

ただし、上記は一般論であり、取引の事情や特許製品の使用状況によっては、特許権の侵害が認められる場合もあります。例えば、下記のような場合には、特許権の侵害が認められる可能性があります。
・日本国内における使用又は販売を禁止する旨を合意した上で特許製品を購入したにも関わらず、その使用または販売を行った場合
・通常想定される使用や修理の域を超え、その特許製品を「再生産」したと判断される場合

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特許権侵害に関する民事上の救済措置と刑事罰について
Q.特許権が侵害されたとき、特許権者はどのような救済を受けることができますか。
A.

特許権者(専用実施権者を含む。以下同じ。)は、司法による民事上の救済措置として、過去の侵害による損害賠償あるいは損失補填を侵害者に対して請求することができるとともに、現在及び将来における侵害の差し止めを求めることができます。また、侵害品の廃棄と侵害品の製造装置の廃却を求めることができます。さらに、侵害によって失った信用を回復する措置として、侵害者に対して全国紙への謝罪広告の掲載を求めることができます。

そして、特許権者が直接救済を受けるわけではありませんが、侵害者は特許権侵害罪により刑事罰を受けることがあります。

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Q.特許権を侵害した場合、どのような刑事罰が下されるのですか。
A.

特許権を侵害した者は、直接侵害の場合は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処され、あるいはこれらの両方が科されます。間接侵害の場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処され、あるいはこれらの両方が科されます。

さらに、特許権侵害行為は法人企業の業務の一環として行われることが多いので、「行為者個人を罰するほか、その法人に対しても罰金刑を科する」旨の両罰規定があります。法人に対しては、侵害行為者個人とは別に、3億円以下の罰金刑が科されます。侵害によりもたらされる利益は個人よりも法人に対して大きくなることから、法人に対する罰金刑を個人に対するものよりも重く規定しています(「法人重課」といいます)。

なお、特許権侵害罪は、平成10年の特許法改正により、非親告罪となりましたので、告訴がなくても公訴が提起され得ます。

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Q.特許権侵害に関して損害賠償あるいは損失補填の額はどのように算定されますか。
A.

特許権者は、民法709条に基づき特許権者の逸失利益を含む損害額を賠償請求できますし、あるいは民法703条又は704条に基づき侵害者の不当利得を損失補填額として返還請求できます。特許権侵害事件では侵害者の侵害行為に基づく特許権者の損害額を立証することが困難な場合が多いことから、特許法102条に特則を設けています。

特許権者は、次の1)~3)のいずれかの方式で算定した損害賠償額で請求することもできます。
1)[侵害者による侵害品の譲渡数量]×[特許権者が得られたはずの単位数量当たりの利益]
※ただし、特許権者の実施能力やその他の事情により、上記式で算定した額より少なくなる場合があります(特許法102条1項)。
2)侵害者の利益額
3)実施料相当額

また、侵害者の不当利得返還請求額は、「実施料相当額」で計算した額が認められることが、判例により確立しています。

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Q.当社Aと他の会社Bとが共同で特許権を取得しました。その後、その会社Bが当社Aに何の相談も無く特許発明を実施していることが判明しました。このような行為は法的に問題がないのでしょうか、また、対処法について教えてください。
A.

特許権の各共有者は、それぞれ、単独で特許発明を実施することが法律上認められています。従って、会社Bの行為は、法律上は問題のない行為ですので、会社Bの行為を差し止めたり、会社Bに対して損害賠償金を請求したりすることはできません。

今後は、特許出願をする前に、御社Aと会社Bとの間で、それぞれの実施による利益の分配について契約をしておくという対処法が考えられます。御社Aと会社Bとが共同で行なった発明については、御社Aと会社Bとが一緒に出願しなければ特許を受けることができませんので、特許出願前であれば会社Bも多少の条件を受け入れてくれるものと思われます。

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特許権の利用・抵触について
Q.特許権を取得したのに特許権者がその特許発明を実施できない場合とは、どのような場合か教えて下さい。
A.

特許権は独占排他権ですから、本来、特許権者は特許発明を自由に実施できるはずです。しかしながら、他人との利害関係を調整するためといった見地から、次のような場合には一定の制約を受けます。

(1)利用・抵触発明に該当する場合
特許発明が、先に出願された他人の特許発明・登録実用新案を利用するものである場合には、実施できません。(具体例については、「特許権を取得している製品Aを販売していたところ、他社から自己の特許権を侵害しているとの警告を受けました。このようなことがあるのでしょうか。」のQ&Aをご参照下さい。)
また、特許発明が、先に出願された意匠権・商標権に抵触するときも、実施できません。
例えば、フライパンの柄の形状について意匠出願され、美しいという側面から意匠権が付与されたとします。一方、その意匠の出願後に、当該フライパンの柄の形状について特許出願され、「持ちやすい・熱が伝わり難い」という機能的・技術的側面から特許権が付与されたとします。このような場合、後の出願に係る特許権者は、その特許発明の実施を制限されることとなります。
なお、法上明文はありませんが、特許権と著作権とが抵触する場合もあり得ます。例えば、プログラム関係の発明は、態様によりプログラムの著作権と抵触し得ます。

(2)専用実施権者がいる場合、共有特許権者・質権者等と特約がある場合
このような場合にも、その設定・契約の範囲内で、実施が制限されます。

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異議申立・無効審判について
Q.他社が有する特許権を消滅させる方法はありますか。
A.

特許異議申立制度や特許無効審判制度を用いることができます。

特許異議申立と特許無効審判は、ともに、特許が無効理由を有するときに、その特許を無効にすることを求めることができる制度です。(両者の違いについては、「異議申立と無効審判はどのように違いますか。」のQ&Aをご参照下さい。)無効理由とは、例えば、特許された発明が、特許出願前にすでに公表された発明であるとか、公表された発明から容易に想到することができる発明であるとか、先に出願された他人の発明と同じである等の理由です。

異議申立や無効審判の請求が認められると、特許権は原則として初めから存在しなかったものとみなされます。

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Q.異議申立と無効審判はどのように違いますか。
A.

大きく分けて、以下のような違いがあります。
・請求できる時期
特許異議申立は、特許掲載公報発行の日から6月以内に限られるのに対し、特許無効審判は、特許後であればいつでもよく、特許権存続中はもちろんのこと、特許権消滅後も請求することができます。
・請求できる人
異議申立は、誰でも行うことができるのに対し、無効審判の請求は、利害関係人に限られます。利害関係人とは、例えば、実際に特許権侵害で訴えられている者、類似の特許を有する者、特許発明と同種の製品を製造する者です。
・審理の行われ方
異議申立は、基本的には特許庁と特許権者との間で審理が進められるので、異議申立を行った人が審理に参加する場面はほとんどありません。また、審理は書面で行われます。これに対して無効審判は、通常の民事訴訟のように、請求人と特許権者の両者が審理に参加する当事者対立構造をとります。また、書面での手続に加えて、原則として口頭で審理が行われます。
なお、権利の帰属に関する理由(冒認出願や共同出願違反)については、当事者間の争いを解決するという観点から、当事者対立構造をとる無効審判を請求する理由とはなりますが、異議を申し立てる理由にはなりません。

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訂正について
Q.特許後であっても明細書、特許請求の範囲や図面を訂正することができるのでしょうか。
A.

特許後は、一定の事項に限り、明細書、特許請求の範囲(クレーム)や図面の訂正を請求することができます。

具体的には、特許請求の範囲の減縮や、誤記・誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明等に限って、明細書、特許請求の範囲や図面(明細書等)の訂正の請求をすることができます。訂正は、原則として設定登録時の明細書等に記載された事項の範囲内においてしなければなりません。誤記・誤訳の訂正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内ですることができます。訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張したり変更したりするものであってはなりません。また、訂正後の発明が出願の際に独立して特許を受けることができること、すなわち独立特許要件を満たすことが求められます。

このように、訂正の要件を規定しているのは、特許権が発生した後に無条件に明細書等の訂正を認めると、第三者に不測の損害を与えるおそれがあるためです。例えば訂正の請求が認められると、訂正後の明細書等で特許出願したものとみなされます。一方で、訂正を一切認めないと、明細書等のわずかな誤りによって大切な特許が無効になって、特許権者に酷であったり、特許権の内容がはっきりせずに、無用の紛争が生じたりすることがあるので、一定の事項に限り訂正を認めています。

訂正は、訂正審判を請求することにより行います。訂正審判の請求は、特許権者のみが行うことができ、実施権者や質権者がいるときはその者の承諾を要します。また、特許権の消滅後でも請求できますが、特許無効審判によって特許が無効にされた後はできません。特許異議申立によって特許が取り消された後も同様にできません。その特許についての特許無効審判または特許異議申立が特許庁に係属している間は、それぞれの審理手続の中で訂正の請求をすることになります。

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